Helck
例えば私が間もなく死ぬとしよう。
死の淵で何を考えるのかは、定かでない。
しかしながら仮にヴァミリオちゃんから「バカァァッ!」と罵られれば幸せにその生涯を終えることができるだろう。
これが元はWeb漫画というのだから侮れない。
Web漫画といえば「居酒屋魔法少女よだれとなみだ」こそ至高であり、最高であることは周知の事実だろう。だろうというか事実なのだ。最高で至高なのだ。あまりにも好きすぎて同じ意味の言葉を使ってしまったわけで、どれだけ私が「居酒屋魔法少女よだれとなみだ」を読んで楽しんだか、察していただきたい。
ただ、この「Helck」だって、最高なのだ。
あらすじに入ろう。
魔王が討たれてしまった地域で、次代の魔王を選出するべく開かれた大会。なんとその大会には勇者であるヘルクが出場していた。勇者ヘルクの目的とは。人間の世界はいったいどうなってしまったのか。
序盤だけ見ればただの面白い、ただのというのは語弊があって。本当に面白いギャグ漫画ながら、物語が進むにつれて明かされていく世界観に我々読者はただただ圧倒させられる。さながら、唐突に嵐に見舞われた小鹿のように。プルプルと肩を震わせて、その先を読み進めていくしかないのである。
何故なら序盤のギャグが面白ければ面白いほど、シリアスに至る際の落差があるからだ。しかもこれだけの落差に関わらずギャグからシリアスの推移がとても自然であり、シリアスに染まるかと思いきや急にギャグをぶっこんできたりと大忙しである。
ヘルクの男っぷりは言うまでもなく。ヴァミリオちゃんの可愛さも言うまでもなく。ごめん、言わせてくれ。言わせてください。もう本当に可愛い。なんだあの生き物。例えるなら、小動物罵倒系ヒロインというやつか。枠に嵌めるとチープに感じてしまうわけだけど、人形のようなそれではなく、ちゃんとした意志が感じられる。勇者ヘルクにある言葉を投げかけるシーンなんてボロ泣きしたから。ほんと、もう。なんだあれ。頭を空っぽにした挙句どこかのフレンズになりきって「かーわいー!」と言いたくなる。
一緒にご飯を食べにいきたい漫画キャラランキングなるものがあるとすれば、散々悩んだ挙句、私はヴァミリオちゃんを選ぶだろう。ちょっとお高いフレンチなんぞを食べにいき、ヴァミリオちゃんの「んまい……」という言葉を聞きたい。その思い出だけで、これからも社会の荒波に立ち向かっていけることだろう。