1-勇者召喚
7人のろくでなし勇者を読んでいただきありがとうございます。
初心者なので誤字脱字、書式間違いなどのご指摘、感想を頂けると嬉しいです。
更新は少なくとも3話までは一日一回ペースでいきたいと思います。
王国大聖堂の穢れなき白の広間。
魔法陣の上に5人の男と2人の女、計7人が倒れていた。
一人が目覚め、起き上がろうとする。
するとそれが呼び水になったかのように、次々に7人は覚醒する。
ここはどこ?
どうして自分はここに?
7人の誰しもがそう思い、ついで複数の人を発見する。
広間から上へ伸びる大階段。
一目見て王と分かる人物と、聖職者、高官、騎士と思われる人がこちらへ向かってくる。
「ようこそ、勇者達」
王は自分達7人に声をかける。
「ここはどこなんです?貴方達は?それにどうして俺達が――」
王に答えたのはこれから光の勇者と呼ばれる者だ。
他の6人も聞きたいことは一緒だった。
「ふぉっふぉっふぉ、慌てずとも一から説明しよう。勇者達、お前達はこことは別の世界から呼び寄せられたのじゃ。魔族を討つために」
7人は現代の世界からそれぞれ呼び出された勇者達らしい。
光の勇者、星の勇者、聖の勇者、剣の勇者、魔の勇者、大地の勇者、天の勇者。
この世界はまるでゲームのようにステータスやスキルが存在するファンタジー世界。
そして東の大陸には人類を脅かす魔族がいる。
魔族を倒し、世界に平和をもたらすのが勇者の使命。
「俺達が元の世界に帰るためにはどうしたらいいんですか?」
問うのは大地の勇者。
「ふぉっふぉっふぉ、人に仇名す魔族を全て討伐すればよい」
「全ての魔族?魔族を統率している――魔王などはいないのですか?」
「ふぉっふぉっふぉ、今は、おらんな。昔はいたようじゃが。既に倒れておる」
大地の勇者は王の返答にあまり納得していないようだ。
しかし王はすぐに話題を変えてしまう。
「ふぉっふぉっふぉ、わしの話が真実だと知ってもらうためにも、まずは自分のステータスを確認してもらおうかの」
王はステータス画面の呼び出し方と項目の説明を始める。
ステータスを呼び出すためには『ステータス』と頭で強く念じればいいらしい。
言われるまでに光の勇者はステータスを確認し、他の勇者達も後を続く。
名称:光の勇者
レベル:1
称号:勇者
スキル:
勇者加護、勇者超能力、勇者冒険術、勇者交流術、勇者復活
術技:
「おぉ」
光の勇者はまず、王の言っていることは真だと実感する。
そしてレベル1ながら、自分が勇者としての能力を持っていることに、その強力さに感嘆する。
他の勇者達も似たような状況の中、一人違う反応を示している人物がいる。
剣の勇者だ。彼もまた自身のステータスをみたのだが・・・・・・
名称:剣の勇者
レベル1
称号:勇者
スキル:
最低剣術レベルUP(特大)、能力UP・体力・持久力・力・技・敏(大)、取得経験値UP(中)、剣技習得条件緩和(特大)
剣性能UP(中)
術技:
スラッシュ・ランク1
(な、なんだこれは。インチキにもほどがある)
絶句しながら剣の勇者はスキルの詳細解説を見る。
見たのは解釈が難しかった最低剣術レベルUP(特大)と剣性能UP(中)。
最低剣術レベルUP(特大)
最低剣術レベルUPは、剣術レベルの最低値を上昇させる。
すなわちレベルや技能が低くても一定の剣の腕前を発揮できる。
何らかの方法で剣技術が減少してもこの一定の腕前は発揮される。
一方で、一定以上の剣技術を身につけると効果は発揮されなくなる。
(特大)の場合、最低剣術レベルは1000となる。
剣性能UP(中)
剣性能UPは自身が使用する剣の攻撃性能と耐久度を向上させる。
(中)の場合、粗悪な青銅の剣でも良質な鉄の剣と同等の能力を得る
またもや絶句、つまり剣術レベルは既にレベル1000相当であり、普通の剣でも持てば業物と化すのだ。
剣術レベルというのがいまいちパッとはわからなかったが、レベル1000が弱いはずもないだろう。
「あの、皆さんのレベルを聞いてもよろしいでしょうか?」
他の勇者ではなく、勇者達を呼び出したであろう王と聖職者、高官と騎士に尋ねる。
剣の勇者の言葉に呼び出した者達は快諾し、答えてくれた。
王はレベル120、聖職者はレベル190、高官はレベル130、騎士はレベル720。
また騎士に「剣術レベルがわかりますか?」と追加でたずねる、彼は自身の剣術レベルを知っているらしく、590と教える。
剣の勇者はさらに騎士に追加で質問する。
「すいません、貴方の地位、というか役職を教えて頂けると助かります」
これにもあっさり答える騎士、彼は王室近衛騎士団長だという。
つまり剣の勇者の剣術レベルは、王室近衛騎士団長の2倍ほどの剣術レベルということだ。
「ふぉっふぉっふぉ、剣の勇者殿は騎士に興味がおありなようで」
王様の声は剣の勇者の耳には入ってなかった。
それから剣の勇者は周囲をみて、その様子に何かをさとったようだ。
「・・・・・・」
「勇者殿?」
剣の勇者が黙り込んだのをみて、騎士が呼びかける。
それに応ずるかのように、剣の勇者は頭を上げて宣言する。
「悪いが俺はここを出させてもらう」
「「「は?」」」
これには呼び出した者達だけではなく他の勇者も驚いた。
その驚きに答えを返さず、剣の勇者は無言で大聖堂を出て行く。
「お、おい、なんで?」
「ヌルゲーすぎる。楽しくない。」
剣の勇者は簡潔に答えた。
後ろから他の勇者たちの声が聞こえる。
「待ってくれ!・・・なんて協調性のない奴なんだ」
「本当にここをゲームだと思ってるの?」
「なんなんだあいつは」
「ゲームと現実の区別があやふやになっているのか」
剣の勇者は全て意に関せず進む。
こうして勇者7人は異世界に召喚され、一人が別離した。