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始まりのきっかけは「誰も知らない言葉」

発達障害...2000年代に出てきた精神障害。でもそれ以前に名前のない障害のせいで苦しんできた一人の少女の人生がここにあり、訳の分からない葛藤に向き合った家族の物語です

『ワタシは本当にこの世界に必要にされている存在なの?』


誰とそばにいても、誰と遊んでいても、たとえそれがかけがえのない無償の愛情を注いでくれる親兄弟にさえ疑問を持つ位、猜疑心と自己防衛にたけていた子供だった。

なのに孤独が死ぬほど嫌いで、泣きたくなるほど寂しくて、でも誰にも心を許せなかった...。


その子は真っ直ぐ人の瞳を見た。まるで相手の隠している最後の底の暗闇まで見据えるかの様に。

きっと本人には自覚がないのだろう。ただ母親の言葉を信じて疑わないから。


「人と話すときは必ず相手の眼を見て話すの。そうすればきっとあなたの事分かってくれるから」


それはその子にとって不幸の始まりだとは知らない、何げない言葉にしたとしてもそれは後の祭り...。その子はただ母の言葉に従った。その子の瞳に映る全ての真実をさらけ出してしまうとは知らない、母の言葉の通りに...。


「どうしてワタシの事をさけるの?」

それはたった4歳の子供の言葉。でも40を超える幼稚園のせんせいにとって驚愕の真実であって、バレないと思っていた2か月であった。『気づくはずがない』----そう高をくくっていた。みんな平等に、でもその子だけは避けつつ来たはずだ。毎日の挨拶も接し方も全て...そう「普通」にしてきた。気づかれるはずがない。

「どうしてそう思ったのかな?せんせいはみんなの事大好きだから、同じように遊んで、同じように怒ってたよ」...そうそのはずだった、その子の言葉を聞くまではーーー。


「せんせい、ワタシノ瞳、全然見なかった。どうして?ワタシ、ずーーとせんせいの瞳みてたのに」


ハッとした。初めてその子にあった時に思った事。「この子の瞳と絶対あわせてはいけない」...

何故そんなことを思ったのかは分からない。あえていうのなら「直感」長い教諭生活の中で置いて来たモノ。捨てざるをえなかったモノ全てを見抜かれてしまう恐怖感。捨てて来てしまった自分への後悔と苛立ち...それが全て堰を切って溢れてしまうような気がしたから、今までと同じように切り捨てるようにしてその子に微笑んだ。『これからよろしくね』...と嘘をついて。


その子は一つ上の兄と毎日一緒に通園してきた。幼稚園のバスを降りるのも兄と一緒。兄は5歳。ちょっと大人びて、でもちゃんと子供らしくしていた。子供じゃいなくてはいけないように、妹がただのわがままな変わった子供に見えるようにそうしていた。

とてもいい子でちゃんとした兄だった。不自然なくらい...。それを気づいたのもその子の言葉のせい。兄は必死で妹をかばっていた。全ては周りに妹を「普通」と思わせるため...。

その努力は2か月で終わったけれど...。兄はその子を守るためか必死でイイ子を演じていた。やがて妹の奇行より、兄の優秀さが目立つようになる位に。そうして1年後、その兄妹は親の転勤によって幼稚園を去った。教諭達に沢山の後悔と疑念と安堵感を残して...。


その子は言った。

『ワタシはただ思った事をそのまま伝えているだけなのに、聞いた相手は必ずワタシに嘘をつくの。ワタシが知りたいことはホントウのコトなのに...。」

うっすら涙を浮かべて、でも涙をこぼさないようにちょっとだけ上を向いて我慢している妹に兄は言う。「しょうがないよ。おとなはウソをつくのが仕事だから」と。

兄は分かっている。妹が「フツウ」じゃないことを。その事で母親が近所のオバチャン達にひどい事を言われている事も、父親の仕事で行きたくない場所にも行かなくてはならなくてトモダチを失くして、また知らないところでイチから始めなければいけないことも全部。そして母親の愛情が、病弱で「フツウ」じゃない妹に行ってしまい『お兄ちゃんだからよろしくね』と残酷な言葉で自分にはほんのわずかなかけらだけしか与えられない事も全て飲み込んで...。たった5歳の自分がしっかりしなくてはならないくらい妹の存在が危ういって事も全て知って、それでも妹の顔を見る。1つしか違わない。母親の愛情も(病弱な上にフツウじゃない)父親の愛情も独り占め(女の子だから)何にも気づいてなくて本能のまま言葉に出して周りに災厄を振りまく可哀そうな妹。

だから兄は決めた。妹を泣かすのは自分だけだと。泣くのを必死に我慢している妹の頭をぽかりと叩いて

痛さで泣かせてあげる事。心の痛みで泣く姿は見たくない。そのために怒られることなんてーーちょっとヤダけどーーま、いっか。1%の愛情で我慢してあげる。兄は最後のバスを降りる時にそう誓った。 

最近になって取りざたされているこの問題。ひとくくりにしてはあまりに症例が多すぎる。こんなヒトも!?と思えるくらい身近にいるからこそ、避けないで、逃げないで接して欲しいです。そして悩んでいるヒト!!悩みを解消して受け入れましょう(=゜ω゜)ノ

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