/F_o_a_F/ (たぶん)友達のともだちから聞いたはずの不穏な話
サイキック・バトル
_/80年代前半/北海道札幌市/男性/16歳/生徒/
十代の頃のGさんはそれなりに “やんちゃ” をしていた。
現代ではすでに死語となりつつある「ヤンキー」でさえなく、「不良」とか「ツッパリ」という言葉がよく使われていた時代のことだ。
その日もGさんと仲間たちは明け方まで外で騒いでいた。
遊び疲れたGさんたちは仲間の家に戻った。金持ちのボンボンで、「勉強部屋」としてけっこうな広さの離れをあてがわれていたその仲間の家が、Gさんたちの溜まり場だった。
疲れていたので何をするでもなく、皆てきとうに、駄弁ったり煙草を吸ったり缶チューハイの残りを啜ったりして、時間を無為に溶かしていく。Gさんは特に仲の良かった友人と一緒にシンナーを吸っていた。
窓から徐々に差し込んでくる初夏の朝日がまぶしい。部屋の中が黄金色に染められていき、白光に照らされたレースのカーテンが落とす淡い影の綾を見ているうちに、思考の輪郭が曖昧になってきた。口元も緩んでくる。
恍惚となって目を閉じ、しばらくして瞼を上げると、
ぴぃーーーーーーー
という甲高い音とともに両目から「ビーム光線」が発射された。当時流行っていたメローイエローという炭酸飲料を思わせる鮮やかな黄色の光線だった。
うわあーおもしれえ、とますます口元を緩ませ、Gさんはこの「目からビーム」で遊びはじめた。
こめかみに意識を集中させるとビームの出力が上がるらしく、1オクターブ高い音が出て光線の幅が太くなる。色もスプライトの瓶を思わせる透き通ったエメラルドグリーンに変化した。きっと破壊力が増しているに違いないが、長時間続けると消耗してしまう。もしかしたらと片目をつぶってみると、発射されるビームは1本になる代わりに、こめかみに意識を集中させたときと同様の強力な光線になった。こっちのほうが簡単だし、広範囲には攻撃できないけど逆に狙いをつけやすいかもな……などと戦略を練っていたGさんは、ビームを放出したまま何気なく友人のほうを向いた。
「おっと」
と言って友人はGさんのビームから身をかわした。
「テメ、なんで見えんだよ!」
とGさんが思わず叫ぶと、友人は無言でにやりと笑う。
なに余裕ぶっこいてんだよ、とカッときたGさんは、こめかみの血管が切れるほど力を集中させて最大出力でビームを発射した。が、それを友人はひょいと首をすくめてよける。
かわしにくいように横一文字になぎ払ったり、フェイントをかけたり、激しくまばたきをして弾丸状のビームを発射したり、眼球をぐるぐる回して螺旋状のビームを放ったりといろいろ試してみたが、友人はにやにや笑いながら、ことごとくかわしていく。
ほとんど首だけしか動かしていないが、Gさんは息切れしてしまった。
「お前、達人だな」
と荒い息でつぶやくと、友人は少し恥ずかしそうに「うへへへ」と声を出して笑った。
それからちょっとあとに、そいつダンプと衝突して死んだんだ。だからよく憶えてる。とGさんは懐かしそうに言った。




