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川村真人が学校の駐輪場裏に着いた時、そこには三人の男子生徒が集まって何か騒いでいた。
真人は彼らのことをよく知っていた。同じクラスの田代、清里、林だった。
彼らは真人に特別な用事があるわけではなく、ただの暇つぶしにいつも彼をここ、駐輪場裏へ呼び出していた。
駐輪場裏は駐輪場からは少し距離があって、殆ど人が通らない隠されたスポットだった。
「川村、おまえは本当にまぬけだよなぁ。これ、忘れもんだぜ」
田代は鞄から黒い男子用の体操服を取り出すと、高く放り投げた。
地面に音もなく着地した体操服には、「川村」と書かれてたゼッケンが縫い付けられている。
真人は慌てて体操服の方に駆け寄った。
「そういや、昨日の朝の会の出席取る時、こいつ、先生に名前飛ばされてたろ?」
田代は慌てて水着を鞄にしまう真人の様子を満足そうに観ながら、鼻で笑った。
「マジで? 先生にも忘れられてんじゃん? キヨちゃん悲しぃー!」
清里は悲しげな表情を作ると、真人の眼前まで顔を近づけた。学年で一番背の高い清里は、真人と並ぶと頭一つ高くてとても同学年には見えなかった。
真人は恐怖で思わず後ずさる。その様子を見て、三人は楽しそうに笑った。
「キャハハハハ!! キヨちゃんまじ距離間近いって! バイキン感染しちゃうよー! ゲホッゲホッって! ってか、『先生にも』って何? キャハハハハ!!」
林はわざとらしく大きな声を出して笑った。その度に、目深に被った野球帽が大きく揺れた。




