表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ近衛兵の俺が冤罪で投獄されたが、物語のど真ん中に据えられている?  作者: らいすクリーム
第1章【冤罪牢獄編 】〜段取り通りに堕ちていく

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/26

第9話【これまでの違和感】

繰り返される訪問者との会話

その繰り返しがもつ意味とは

「あなたは本当に…“普通の近衛兵”なのね。」


その声は、呆れでも怒りでもなく、どこか温かいものを含んでいた。


「無実で、何も知らず、余計なことも言わず…ただ真面目に務めを果たしていただけ。

それなのに、こんな陰謀に巻き込まれて…本当に、気の毒だと思っているわ。」


気の毒だと思っているなら、俺の願い…聞き入れてはくれないのだろうか?

殿下は鉄扉に手を添え、祈るように話し続ける。


「でもね、セブン。“無実だから助けてほしい”というあなたの願い…

私は叶えたい。叶えたいのに私には、あなたをここから出す権限がないの。」


その言葉は、王妃としてはあまりに異常だった。

殿下の声に震えが混じる。


「私の言葉は外に出ないように“管理”されている。」


「あなたを閉じ込めているのは“罪”じゃないわ。あなたを、外に出したくない“誰か”がいるの。」


殿下は一度、言葉を切る。


「…それ以上は、前と同じ説明になるわね。もう、あなたも気づいているでしょう?」


殿下は鉄扉越しに、手を伸ばすように指を動かす。


「あなたは、誰の味方でもない。だからこそ、誰にとっても“利用できない”。

それが…この陰謀の中で一番厄介なの。」


ちょっと待てよ。


何かがおかしい。


…というより王妃殿下がおかしい?


「あなたを出すには…あなた自身が動くしかない。 それが、どれほど理不尽でも。」


ほら来た、まただ…。


なんだこれは。


「セブン。あなたは無実。それは私が保証する。でも…無実のまま死ぬ気はある?

それとも…無実を証明するために動く気はある?」


俺の中で疑問が確信に変わりつつある。


あれほど丁寧に俺の状況を説明して、”普通”に助けてほしいと懇願したのに

殿下だけではなく、ここに来るほとんどの者が陰謀を口にし、俺が自らその陰謀を暴く必要があるかのような誘導を…。


ここは少し…もう一歩踏み込む必要がある。


ガルド隊長の時よりも。


「王妃殿下…恐れ多くも申し上げさせていただきます。」


覚悟は決めたものの…言ってよいものなのか。


「殿下…ええと…。」


「セブン、どうしたのですか?遠慮なく言ってよいのですよ。」


「では…僭越ながら申し上げさせていただきます。」


覚悟を決めた。


「…失礼ですけど。

これ、ゲームのNPCみたいじゃないですか?」


「俺が“動かない”って言うたびに、同じ説得台詞が返ってくる。」


鉄扉の向こうで、王妃殿下は完全に固まる。


それは石牢の空気を一瞬でひっくり返すほどの破壊力だった。


そして殿下はゆっくりと、まるで”今のは聞き間違いでは?”と自分に確認するように瞬きをする。


だが俺だって俺の人生を守らなければならない。


…もう嫌だ。

何もしてないのに、何も望んでないのに、


勝手に役割を押しつけられて、勝手に選択肢を並べられて。


俺の人生なのに、いつも台本が用意されてるみたいで。


だから…。


せめて一回くらい、その流れを壊してみたくなった。


「…え?えぬ…ぴー、しー?…それは…その…“何かの役割を演じる人”という意味ですか?」


…あ。


なるほど。


この世界に、ゲームって概念はないんだった。


「違います。台本どおりに同じ台詞を繰り返す“人形”みたいな存在のことです。」


「わ、私は…あなたに押し付けるつもりは…。」


殿下は言葉を探しながら、胸に手を当てる。


「ただ…あなたが危険だから…あなたを守りたくて…その…説明が…どうし…ても…。」


殿下は言葉に詰まった。


だが、俺は沈黙で殿下に対抗する。


「…確かに…同じことを、何度も言っている気がするわね…。」


その声は、どこか恥ずかしそうで、しかしあなたの指摘を素直に受け止めている。


「あなたが“動かない”と言うたびに、私は“動いてほしい理由”を言い直して…まるで…本当に、その…えぬぴーしーみたいに…。」


殿下は小さく肩を落とす。


しかし俺はまだ沈黙を破らない。


「…ごめんなさい。あなたを急かすつもりはなかったの。ただ…あなたが死ぬのが嫌で…それで…つい…。」


その声はNPCどころか、ひとりの人間としての弱さが滲んでいた。

殿下は、鉄扉をまっすぐに見つめて言う。


「セブン。あなたが“助けてほしい”と言うなら…私はあなたを助ける方法を探すわ。

だから…繰り返す人形というえぬぴーしー扱いは、少しだけ傷つく…。」


ならばよし、ここからが俺のターンだ。


「王妃殿下、ご無礼をお許しください。

しかしながら、殿下がNPC…演じる人形ではないというならば、何か…何かこう破天荒な行動を見せてくださいませんか?」


「常識やルールから外れた事をしてくださらない事には、”決められた役割を果たすだけのNPC”と私が考えても仕方ないと思うのです。」


王妃殿下は完全に沈黙した。

あなたの要求は、王宮の誰もが絶句するようなものだ。


だが殿下は逃げなかった。

むしろ、あなたの言葉を真正面から受け止めた気配がある。


そして。


「…セブン。あなた…本当に…私に“破天荒な行動”を求めているのね?」


声は震えている。怒りではない。

呆れと困惑とほんの少しの興味が混じる。

殿下は鉄扉に手を添え、小窓の奥のセブンをじっと見る。


「常識やルールから外れたことを…王妃である私に…?」


王妃殿下は覚悟を決めた。


「…いいわ。」


その声は、静かで、しかし確かな決意を帯びていた。

殿下は、周囲を一度だけ確認し鉄扉の小窓に顔を近づける。

そして、王妃として絶対に言ってはならない言葉をあなたにだけ囁いた。


「私は今、王宮の誰も信じていない。 側近も、侍女も、近衛も。


そして王も!


信じられるのは…あなた一人。」


これは、王妃が“破天荒な行動”をしたというだけではない。

王妃が王宮の秩序そのものを否定したのだ。


殿下は続ける。


「これで…えぬぴーしー扱いは、撤回してくれるかしら?」


その声には、王妃としての威厳と、覚悟が混ざっていた。


さらに殿下は踏み込む。


「それに…破天荒な行動が必要なら、もう一つあるわ。」


殿下は、セブンの目をまっすぐに見つめる。


「あなたをここから出すためなら…私は“王命”すら破る覚悟がある。」


殿下の指が震えている。

決意の震えだ。


王妃殿下は、“王妃の枠”を超えた。

そして品格と自信を取り戻しセブン近衛兵の返答を待つ。

あとがき

NPC(non player characterノンプレイヤーキャラクター)

プレイヤーが操作しないキャラクター

読んでいただきありがとうございます!感謝!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ