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【完結】『無能力転生』冤罪投獄された近衛兵、動かず王国を崩す ――奇行主人公の伏線回収譚  作者: らいすクリーム
第6章【偽真暗鬼・最終決戦編】毎日更新中

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第74話【この物語の結末】――偽真の禁書

 ――ライエルの剣が、アーヴィングに振り下ろされる。


 ズゥオッ!!





 アーヴィングの杖が腕ごと床に落ちた。






 床にある自分の腕を見て、何が起きたのか理解できないアーヴィング。


 反対側の手で肩を触ろうとしたその時……




「やめろぉ!ライエル!!」




 ガルドの叫びもむなしく。



 振り下ろした剣が――



 次は首筋に向けて――





(……!!)





 その剣より早く、セブンは振り向きざまにラザルスへ飛び込んだ。


 ただ素早くラザルスへと。




(奴に近づくだけでいい!!)




 ――視界が二重になり空間が歪む。




(間に合ってくれ!!)




 ――”飛び込む前の姿勢”に戻っている




(アーヴィングは!?)




 ――まだ、斬られていない




 だがセブンが振りかえった時、剣は振り下ろされていた。




 ドスッ!!




 アーヴィングが吹き飛ぶ――その下で、ガルドがライエルの剣を受けた。



「隊長!!」


「ふぅ……」



 ラザルスが大口を開けて手をたたく。


「いいぞ! いいぞ!!

 さすがは”近衛兵セブン“抗うではないか、禁書を利用するとは!!すばらしい!!」


「あいたたた……腕はあるか?わしの腕は……」


 床に倒れたまま、杖を持つ手を動かすアーヴィング。


「巻き戻しを狙うとは……さすがだ、セブン」


「隊長も……さすがです」


 阿吽の呼吸を称えあう二人。


「しかし……勝ちが見えません、これでは」


 セブンの言葉に絶望する一同……



 そのとき、ラザルスがペンを持った。



 ――禁書に書き加え始める。



「”何もしない”でレオニードに勝ったそうじゃないか、セブン……」



 レオニードが短剣を握りなおす。


「……だ、誰も殺したくない!」



「物語はそういう”特別な主人公”を望んでいるのかもな……」



 そう言って、ラザルスの書きこむ手が止まり――ペンを置いた。


『…………ヴォォォォォォォォ』


 低く、湿った唸り声が部屋の空気を震わせた。


 禁書が再び赤く光り、鼓動のように、ドクン……ドクン……と脈打つ。



「さぁ、最後の一行だ……物語のフィナーレを見せてくれ」



 ラザルスがゆっくりと立ち上がり拍手する。



 パチパチパチ……



「……始めろ」



 そういって、拍手の音が消えた瞬間――セブンの手の力が抜け、剣が床に落ちた。


 ラザルスの前にいたセブンが振り返り、ガルドと対峙する。



「何もしないセブン……ここで見れるとは光栄だ」


 立ったまま腕を組み、特等席から見守るラザルス。




 ――ガルドは剣を構え、セブンの目を見た。




 ――セブンもガルドの目を見て頷く。




「あとは……お願いします」


 誰にも聞こえない声で、セブンがつぶやいた。




 レオニードがライエルに短剣を投げ、アーヴィングが床から立ち上がる。


 ライエルは短剣を弾き、アーヴィングに向かって走り出した。



一方、



 ――時が止まったかのようなセブンとガルド。




 ガルドが前に歩き出す。



 そして剣を腰に構え、大きく踏み込む。



 その剣はセブンの脇を突き刺し。



 もう一歩の踏み込みと共に



 深く



 深く



 セブンを貫き



 吹き飛ばし






 ――ラザルスをも貫いた






「ぐはっ……!?」



 ラザルスの笑顔が……驚きに変わる。


「な、にが起きた……禁書は……俺の禁書が……」


 禁書に手を伸ばしながら倒れこむラザルス。



 ガルドは剣を抜き、



「アルベルト王陛下、大逆罪をお許しください」



 そう一言告げると、剣を置き、膝をつき、頭を垂れた。




「な……なぜ……」




 ラザルスがアルベルト王の体から煙のように失われてゆく。


 それは亡霊のように空に漂い……





 ――消滅した





 目を覚ますアルベルト王が右手を上げる。


「許そう……ガルド……王国を……感謝する……」


「そしてセブン……王妃を……頼む……」




 この部屋の全員の動きが止まった。




 静かに目を閉じたアルベルト王。


 片膝をついたガルド隊長。


 仰向けに倒れたセブン。


 アーヴィングに剣を構えたライエル。


 短剣を拾ったレオニード。


 魔法を詠唱し終わったアーヴィング。




 偽真の禁書がひとりでに動き始める。



 パラ……パラパラパラ……



 そして黒革の背表紙がパタリと閉じた。



 ぼんやりとした、赤い光が失われ……消えると同時に全員が脱力した。




「終わった……」




 部屋にただ一瞬の静寂が戻った、そのとき――




 詠唱が終わっていたアーヴィングの杖に炎が灯る



 ボウッ



 その炎は、”攻撃の意志を失った主人の心”を汲むように、空中をゆっくりと漂い……







 ――レオニードの尻に火をつけた。


「アヂィィィィ!!」



次回、最終回。

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