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【完結】『無能力転生』冤罪投獄された近衛兵、動かず王国を崩す ――奇行主人公の伏線回収譚  作者: らいすクリーム
第6章【偽真暗鬼・最終決戦編】毎日更新中

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第73話【分断された仲間】――悲劇が記された物語

「一つだけ……あります」



 セブンには考えがあった。今まで”物語”に逆らってきた自らの経験。

 それはどれも一見奇行とも思えるセオリー無視。



 ――物語より早く動いて、筋書きをかき回した記憶。



 それが偽真の禁書の弱点かもしれない。

 牢獄でも、王妃救出でも、影との対峙でも。


 セブン・ウォーカーである自分は、筋書きより先に動いた時だけ勝てた。




(……これだ)




 これも奇行だが、今ここでゆっくり作戦を立てていたのでは遅い。


 待ち構えている相手の思うつぼ。


 セブンは仲間の円陣からスッと抜け出し――

 王の間へ向かって全力で走り出した。



「お、おいセブン!!何のつもりだ!!」


 止めようとガルドが手を伸ばしたが、それより早くセブンは駆け出していた。


「待つのじゃ、セブン!何を考えておる!!」


「ど、どういうこと?!」


「作戦を立てようって言ったセブン殿が、えええ!?」



 後ろから仲間たちの声が飛ぶが、セブンは振り返らない。


 そのまま全力で仲間を突き放す。


 王の間へ近づくにつれ、通路の装飾は豪華さを増し、赤い絨毯がまっすぐ玉座へと続いている。


 セブンは走り続けた。そのあとを、遅れて一行が追いかける。


 王の間にたどり着くと、セブンは両手で大きな重い扉を押し開けた。




 ギィィィィ……




 扉を開けたそこには――





 謁見の間よりも背もたれは小さいが、装飾はより豪華な玉座。


 その上に、くつろぐように座るアルベルト王。


 片肘をつき、顎に手を添えている。


 脇机には無造作に置かれたペンと、黒革の禁書……。




 そしてその瞳は――




 アルベルト王のものではなかった。


「おおセブン……いや、ナナミ・アユムよ。よく来てくれた」



 影の王ラザルスは、不気味に笑った。



「ラザルス……」



 そう小さく呟いたセブンは、鞘から剣を抜く。



 シャーッ……



 開け放った大扉の向こうには、後を追ってくる仲間たち。

 だがセブンは振り向かず、ラザルスを見据えた。



 大きく呼吸――



 禁書が開く。


 革の表紙が持ち上がり、勢いのままページが捲れ始めた。



 パラ……パラパラパラ……



 フワッとそれが収まり、”ナナミ・アユム”の名前があるページで止まった。


『…………ヴォォォ』


 低く、湿った唸り声が部屋の空気を震わせる。


 不気味に赤く光った禁書。


 心臓の鼓動のように、ドクン……ドクン……と脈打つ。



「ナナミ・アユム、お前の運命は既にここに記しておいた……知りたいか?」



 右手で禁書をなでるラザルス。


 その問いを無視し、セブンは走り出した。



「うおおおおお!!」



 一直線にラザルスへ切り込む。




 だが――次の瞬間。




 セブンの視界が二重になり空間が歪んだ。


 そして気づく。


 自分が――”飛び込む前の姿勢に戻っている”



「……え?」



 剣を振り下ろす直前の、足を踏み込む前の、まさに“突撃する前の姿勢”。



「な、なんだこれは!?」



 後ろから追ってきた仲間たちが、セブンの異常な動きを目撃する。



「セブン!?今、戻った……のか!?」


「いや違う……“巻き戻った”のじゃ……!」



 ラザルスは、玉座の上で満足げに笑った。



「偽真の禁書……実に愉快」



 セブンは自分の震える手を見た。

 今まで目の前で起きてきた現象が、遂に自分の体にも再現されてしまった。



「人の運命を操る……これ以上に愉しい事があるか?」


「……っ!」



「この世のすべての人間を自由に操れる……もっとも偉大な力だとは思わんかね」


「セブンが物語に抗えんということか!」



 目の前の異様な光景に、王の間に入ったガルドたちは足を止めた。


「セブン、禁書が……効いたのか」



 セブンは歯を食いしばる。


「さあ、ナナミ……お前の“死の章”を始めようか」



 禁書がさらに赤く光り、王の間全体が二重にぶれ大きく一度歪んで戻った。



「くそっ!また何か強制が来るのか!?」


 ラザルスは禁書を撫でながら笑う。


「どうかねナナミ、やっと“物語の登場人物”になれた気分は。もう何も考えなくていい……もうお前の運命は決まっているのだからな」



(強制的に巻き戻る……何か手はないのか!)



「お前が無謀に突っ込むから、ゆっくり考える時間がなくなったではないか!馬鹿者めが!!」


「いつも通り行けると思ったんだよ!それもこれも、名前バレのせいだろ!!」


「いや、これで皆同じ条件になった……誰が陛下の御前で功績をあげるかだ」


 この期に及んでライエルはいつも通りの彼だった。

 レオニードも相変わらずの焦り様でうろうろしている。


「そんなこと言ってる場合じゃ、皆さん落ち着いて……」


 瞬間、その言葉とは裏腹にレオニードが素早く動く。

 ライエルの腰から短剣を抜き取り構えた。


「レオニード!?」


 ライエルが驚き腰に手を当てるがそこにはもう短剣はない。

 レオニードはラザルスに背を向け、セブンたちと対峙した。


「ちがう!ちがうんだ!これは……」


「だからあいつらは好かんのじゃ!裏切ったな王宮魔術師め!」


「禁書だ……裏切ってない!」



 言い訳するレオニードを脇目に――



 ライエルは無言で剣を抜く。

 そして、アーヴィングに向けて躊躇なく振り下ろした。


「なんじゃ!!」


 アーヴィングはとっさに杖で受け流し、剣先は床を切りつけた。


 キイイイン!!


 跳ね返った剣先が再び浮き上がり、ライエルは剣を構えたまま止まった。


「まさか……各々殺しあえとでも書かれているのか!!」


「そんな!」


「ライエル!しっかりせい!!」


「俺はまともだ!アーヴィングがうっとおしかった!それだけだ!」


「お前、操られてるのか本心なのかどっちじゃ!!」


 アーヴィングは身を回転させ、杖をライエルの腹に叩き込む。



 ゴフッ!!



 痛みにライエルがうずくまる。



「やっぱり、禁書に“仲間割れ”が書かれてる!」


「ラザルスめ!我々を互いに殺し合わせるつもりか!!」



 ラザルスは玉座で笑う。


「気に入ってくれたかね?物語とは本来、悲劇の方が美しいものだ。さあ、ナナミ、君たちはどんな名作を演じてくれるかな?」


「なっ!」


「気をつけろ!禁書の強制力が全員に及んでおる!!」



 アーヴィングがそう叫んだ瞬間――ライエルの剣がアーヴィングに振り下ろされた。





 ズゥオッ!!





 アーヴィングの杖が、腕ごと床に落ちた。


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