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【完結】『無能力転生』冤罪投獄された近衛兵、動かず王国を崩す ――奇行主人公の伏線回収譚  作者: らいすクリーム
第6章【偽真暗鬼・最終決戦編】毎日更新中

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第69話【その花の名は】――そしてその死因は誰も知らない

「そうだ!聖水!!」




「こんな時に、何を言っておるんじゃ」


 セブンはポーチから、王妃に使った残り半分の小瓶を取り出し、コルクを抜いた。

 そして、親指で瓶の口を押え、大きく振りかぶる――


「うぉらああ!!」



 ヒュウーーーーーン



 その小瓶はゆっくり回転し聖水を巻き散らしながら――綺麗な弧を描いて飛んでいく。



「おお、悪魔に聖水か!!」



 コツン……



 小瓶はバフォメットの横の瓦礫に当たり……



 コン、コン、コロコロ……



 力なく転がり落ち、聖水をこぼして止まった。



「当てんかぁ、この馬鹿者めがぁ!!」


「投擲の練習なんかしないの、 近衛兵は!!」


「こういう場面では普通、当てるもんじゃ!!」


「普通は当たらない!現実を見ろ!!」


「まったく!もう無いのか?」


「アーヴィングこそ持ってないのか!」


「あんな物、お守りにしてるのは近衛兵だけじゃ!」


 ちょっと失礼な物言いにイラっとするセブンだが、近衛兵という言葉に反応する。


「そうだ、リオが持っている!!」


 セブンが振り返ると、リオと兵士たちは既に豆粒のように遠くへ走り去っていた。


「…………」


「任務に忠実じゃのう」


「くっ、アーヴィング……もうあれを出すしかないようだ、やってくれ!!」


「なんじゃ?」


「なんか、必殺の技かなんか無いのか!悪魔を即死させる魔法とか!」


「そんな都合のいい魔法、無いわい!!」


「即死じゃなくてもいいから一撃で殺して!」


「それを即死というんじゃ!!」




 その時――




 十分に威力を高めたバフォメットの杖から、黒い閃光が放たれた。



「危ない!!」



 気づいたアーヴィングがセブンを突き飛ばし、自分も地面へ飛ぶ。


 直後、二人がいた場所に――


 柱ほどの太さの黒光が、地面を穿つように貫いた。




 ゴオオオオッ!!




 地面が抉れ、芝が焼け、石畳が砕け散る。


 ギリギリで避けた二人は、それぞれ中庭の芝へ転がり込んだ。


「あぶねぇ!」


「死ぬかと思ったわい!」


 バフォメットは無言のまま、杖をゆっくりと持ち上げ、次の魔法の詠唱を始める。


「また狙ってる!」


「わかっとるわい、逃げるぞセブン!」


 黒い光がバフォメットの杖先に集まり、空気が震え始める。



 第二撃が来る。



 セブンが地面をつかんで立ち上がろうとした瞬間、手に触れたのは柔らかい葉と、鮮やかな赤。




 赤い――


 チューリップ。


(……チューリップ……球根……玉ねぎ……)




 脳裏に、昔飼っていた犬の記憶が雷のように迸る。


 一瞬の思考。


 ――玉ねぎ


 ――チョコレート


 ――犬に与えてはいけないもの



(山羊も……もしかして……)


 セブンはその手でチューリップの根元をひと掘りし、球根をつかみ取った。



「セブン!早く逃げろ!!」



 だがセブンは逆に――


 チューリップを手に、バフォメットへ全力疾走した。


「うぉおおおおおお!!」


 赤い花を手に悪魔に全力疾走する近衛兵。


「死ぬ気か!?セブン、やめろおおお!!」


 アーヴィングはどうしようもない状況を打開せねばと、杖を構えた。



「ええい!!――砕岩連弾(スリングショット)――」



 片膝をつき、杖をバフォメットへ振ると、地面から浮き上がった小石が3つ、勢いよく飛び出していく。



 ヒュン! 


 ヒュン!ヒュン!



 小石は走るセブンを追い越し、バフォメットの顔と角に命中する。



 ボスッ!


 コンッ!ボスッ!



 ダメージはない。


 だが――狙い通り詠唱は阻害された。



「グォオオオオオオ!!」



 怒りに狂う悪魔。


 と同時に――



「喰らえええ!!」



 叫びながら飛び込んだセブンが、バフォメットの長いマズルの小さな口へ――


 拳を叩き込んだ。



 ゴフォッ!!



 そのまま拳を喉奥へねじ込む。

 たまらずバフォメットが腹から吼える。


「オゥオオオオオ!!」


 セブンは左手でバフォメットの後頭部をつかみ、右手に握った球根をむりやり飲み込ませる。


「オゥッ……オオオオゥ……」


 苦しむバフォメットは杖を投げ捨て、後ずさりする。


「よし!効け……効けぇぇぇ!!」


 喉を押さえ、体を震わせ、黒い唾液を垂らしながら後退するバフォメット。


 無謀な一撃を放ったセブンに、アーヴィングが駆け寄ってくる。


「お前何をしておるんじゃ!死ぬ気か!!」


 焦るアーヴィングとは対照的に落ち着いて話し始めるセブン。


「知っているか……玉ねぎは家畜にとって毒になるということを」


「なん、じゃと?」


「オ……オオオ……オオオオオオ!!」


 苦痛にバフォメットがもがき苦しむ。


「やった……のか?」


「そのセリフはよせ、アーヴィング。悪魔に復活されては困る。」


「ん?」


 バフォメットは苦しみに耐えきれず、片膝をつく。

 それを見ながら、セブンは再び解説を始めた。


「家畜に玉ねぎは毒。俺はその知識を利用し、山羊に球根を与えた……チューリップの球根をな。これも、(おそらく)毒だ」


「なんと、あの一瞬で毒を手に入れるとは」


 バフォメットは首をかきむしり、喉を押さえ、顔色が変色していく。


「ヴオォォォ……」


「苦しめバフォメット……お前が犯した罪と共に……」


 セブンは腰に手を当て、その悪魔の最後を見守る。


「セブン、これは……」


「俺の勝ちだ」


「苦しんでおるな……」


 バフォメットは首を抑えたまま両膝をつき、遂に前向きに地面に倒れた。


「花に命を奪われるとは……悪魔にお似合いの最後だ」




「倒れてしまったな……」


「そうだ……あの毒を食らっては、ひとたまりもないだろう」




「首も顔面も青紫に変色しておるな」


「そうだ……毒だからな」




「球根の毒は、消化せずともまわるのかのう?」


「そうだな……毒だからな」




「液体じゃなく固形の球根の毒が、あの一瞬で?」


「ま、まぁ……毒だからな」




「この顔色……窒息ではないのか?」


「まぁ……え……窒息?」




「喉に球根が詰まって、窒息しただけじゃろ?」


「えぇ……」




「それとバフォメットは頭は山羊だが体は人型の悪魔じゃ、家畜ではない」


「あ……」




「それからお前……バフォメットに『喰らえええ!!』とか叫んでおったのう……」


「……はい」




「“俺の一撃を喰らえ”という意味と、“球根を喰らえ”という意味をかけておったのか?」


「え……」




「恥ずかしい奴じゃのう……」




 バフォメットは完全に沈黙していた。

 セブンも沈黙し、その場になんとも言えない空気が漂う……


「ハァ……」


 アーヴィングは大きなため息をついた。


「お前というやつは、聖水といい、球根といい……思い込みで恥ずかしい事するのう……」


 セブンの顔が真っ赤に変色する。


「ど、どっちも結果うまくいったんだからいいだろ!!」




 バフォメットが沈黙し、セブンとアーヴィングが話しているその時――




 ドタドタドタッ……


 複数の足音が近づいてきた。


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