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【完結】『無能力転生』冤罪投獄された近衛兵、動かず王国を崩す ――奇行主人公の伏線回収譚  作者: らいすクリーム
第6章【偽真暗鬼・最終決戦編】毎日更新中

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第68話【終わりの始まり】――崩壊する王宮、追撃の“破滅序曲”

 グゥオオ!!



 バフォメットが再び咆哮した。


「アーヴィング!この場を離れよう!!」


 セブンが叫び、王へ駆け寄ろうとした――その瞬間。


 視界の外から“影”が王に重なった。




 ――王の顔が変わる。




 いつもの王でもない。

 先ほどの無表情な王でもない。


 浮かんだのは、不敵な笑み。



「……やるじゃないか、セブン」



 セブンは即座に距離を取り、剣に手をかけた。



「誰だ!!」



「抗い、利用し、捻じ曲げ、捻じ伏せる……俺にはできなかった芸当だ」



 その声は――聞き覚えがある。



「思い出してくれたかね? セブン。“かつて選ばれた主人公だった者”だよ……」



「影!!」



 影は静かに笑う。



「影か、その名も聞き慣れたが……私は――ラザルス」



「ラザルス?……何をするつもりだ」


「どうもこうもしない。ただ、すべて終わらせてやる。ずっとそう考えていた……」


「!?」


「そしてやっとこの時が来た……来い、バフォメット」


 古びたローブを引きずり、山羊頭の魔術師がスーッと影のもとへ近づく。


「セブン!こっちはいいぞ!お前も早く来い!!」


 入口からアーヴィングの声が響く。

 王妃を背負い、杖を振っている。



「陛下を解放しろ!なぜこんなことをする」



「解放しなくていい……こんなことをしてもいい……私はラザルスだからだ……」



 意味がわからない。だが――


 バフォメットが近づいてくる。

 もう時間はない。


 セブンはアーヴィングのもとへ走り出した。


「くそっ……なんなんだ、あれは!」


「セブン、早くしろ!!」


 アーヴィングはすでに通路の奥へ走り出していた。

 老体にむち打ち、王妃を背負って。


 後ろでは、バフォメットが影に近づき、何やら指示を受けてる。




 直後――




 バフォメットが杖を両手で持ち、地面に突き立て、詠唱を始める。


 謁見の間を出て逃げながら、セブンは後ろを振り返った。


 その詠唱は――


 “空間そのものを破壊する魔術”の前兆



「セブン!代わってくれ、殿下を……!」



 アーヴィングが息を切らしながら叫ぶ。

 セブンはすぐに王妃を背負い、アーヴィングと並んで走り出した。


 三人は王宮中央区の外へ向かい、ただひたすら逃げる。


「なんか……魔法詠唱してたぞ!」


「バフォメットが詠唱を開始したら……逃げろ」


「どこまで逃げたらいいんだ!」


「できるだけ遠くへじゃ、詠唱の長さに比例した“どでかい魔法”が来るぞ!!」


「じゃあ、まだ魔法が来ないってことは?」


「そうじゃ、どでかいのが来る!」


「えええ!?逃げよう!」


「そうじゃ!」




 三人が長い通路を駆け抜け、角を曲がったその瞬間――




「――禁忌儀式ブラック・サバス――」




 バフォメットの二重の声が謁見の間に響き渡った。


 次の瞬間。


 空気が歪む。


 衝撃波が生まれる。


 球状の魔力が膨張する。



 ゴオオオオオオオオオオッッ!!



 爆発ではない。


 破壊そのものが“広がっていく”。


 壁が砕け、柱が折れ、床がめくれ上がり、天井が崩れ落ちる。


 魔力の球体は、まるで“世界を削り取るように”王宮を飲み込んでいった。



「うおおおおおおおお!」


「走るのじゃ!」



 王妃を背負ったセブンは、アーヴィングの背中を追いながら必死に走る。


 背後では、王宮の象徴である謁見の間が――轟音とともに、形を失っていく。



「セブン、あれは空間破壊魔術じゃ、触れたら終わりじゃ!!」


「わかってる!でも速すぎる!!」



 魔力の球体は、生き物のように追いすがる。



「アーヴィング!出口はどっちだ!!」


「まっすぐじゃ、まっすぐ行けば中央区の外へ出られる!!」



 三人は中央区を抜け、中庭の回廊に飛び出した。




 直後――背後で轟音が止む。




 禁忌儀式ブラック・サバスの魔力球が収束したのだ。


「……助かった……!」


 セブンはすぐに王妃を木陰へ運び、そっと地面に寝かせる。


「殿下……どうか……!」


 そのとき、回廊の向こうから兵士たちが駆けつけてきた。


 先頭にいたのは――リオ。


「セブン殿!!何が起こっているんですか!!」


「リオ!殿下をなるべく遠くへ!!」


「えっ!? で、殿下を!?セブン殿、説明を……!」


「説明している暇はない!殿下を背負って逃げろ、遠くへ!!」


「わ、わかりました!!」


 リオは王妃を背負い、仲間の兵士たちとともに中庭の外へ走り出す。




 その時――




「まずい、追ってきたぞ……!」


「えっ……!」


 振り返ると、瓦礫の奥から“それ”が現れた。


 足音もなく。



 スッ……



 まるで空気を滑るように、

 バフォメットがこちらへ向かってくる。


「あいつ……またあれをやるのか!?」


「わからん……じゃが、あんなでかいのはもうしばらく撃てないはずじゃ」


「じゃあ次は何を……!」


「知らん!悪魔の行動など読めん」


 バフォメットはゆっくりと、確実に距離を詰めてくる。

 その異様な静けさが、逆に恐怖を煽る。


「アーヴィング、走れるか」


「走れるわい!死ぬよりマシじゃ!」


「よし、リオたちに追いつこう!」


 その時――背後で、バフォメットが杖をゆっくりと持ち上げた。


「あれは……詠唱じゃ!!」


「またか!」


「いや、違う……さっきのとは違う、すぐ来るぞ!“中規模の魔法”じゃ!!」


「くそっ!」


 バフォメットの口が開く。

 響く二重の声。




「――破滅序曲(プレリュード)――」




 バフォメットの杖先に、黒い光がゆっくりと凝縮していく。



 ――セブンが叫ぶ。



「そうだ!聖水!!」



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