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【完結】『無能力転生』冤罪投獄された近衛兵、動かず王国を崩す ――奇行主人公の伏線回収譚  作者: らいすクリーム
第5章【虚妄真実・禁忌解体編】

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第60話【権限掌握】最短距離で「ラスボス」へ。王の許可(チート)を手に入れたモブの、容赦なき囮運用術

【前回までのあらすじ】

ただのモブ近衛兵のはずのセブン。王宮を揺るがす一連の事件の中心で「この世界は“物語”に沿って動いているのではないか」という違和感に気づき始める。

しかし、魔獣襲撃・王妃失踪・宰相ローデリヒの関与疑惑――事件は点と点のまま繋がらず、黒幕の姿も見えないまま混迷を深めていた。

ならば点を潰すだけだと、セブンは“冤罪でも拘束可能な不敬罪”を利用し、宰相ローデリヒ・ヴァレンシュタインを囮作戦で逮捕する決断を下す――。

 ガルド隊長は注意深く、静かに言った。


「宰相は王直属だ。内務調査補佐程度では触れられん。……王の裁可が要る」


 セブンは肩をすくめ、同意する。


「まぁ、さすがにそうなりますよね」


 ガルド隊長は椅子に座るレオニードを見やる。


「ライエルを呼んでレオニードを拘束しておこう。王宮内を移動して、今捕まっていることを宰相に感づかれるわけにはいかない。」


「了解です……レオニード、俺は【軽口妄言のガルド】と出る……わかるよな」


 レオニードは魂が抜けたように頷いた。


「……はい……」


 ガルドはセブンに向き直る。


「セブン。一緒にこい」


 ガルドは控の間から出ると外にいる近衛兵を呼び、警備を付けた。

 ライエルがこの場を引き継ぐ。


「よし、では行くぞ」


「はい」




 ◇◇◇




 王宮中枢・内廷区画


 侍従長室(じじゅうちょうしつ)――


 王宮の奥、一般の近衛兵では滅多に足を踏み入れない静謐(せいひつ)な区画。


 ガルドは扉をノックし、声を張る。


「近衛兵隊長ガルド・ヴァン・レオン。侍従長に取り次いでもらいたい」


 扉が静かに開き、丸眼鏡をかけた上品な老人――侍従長が姿を現した。


「おお、これはこれは、ガルド隊長。本日は何用ですかな」


「アルベルト王陛下に謁見を願います」


 ガルドは周囲に聞こえない程度の小声で告げる。


「……(宰相に関わる件にて)」


 何かを察した、侍従長の顔色が一瞬で変わる。


「……しばしここでお待ちを。すぐにお取次ぎいたします」


 老人は足早に奥へ消えた。


 ――しばらくして。


「許可が出ました。 では、『第一執務室』にご案内いたします」 


 侍従長の案内で、二人は王の私的執務室へ向かう。


 第一執務室――


 王が最も気に入って使う部屋。


 重厚な扉が静かに開かれる。


「陛下、お連れしました。こちらのお二方でございます。

 では私は外におりますので、何かございましたらお呼びくださいませ」


 侍従長が下がり、扉がゆっくり閉まる。



 部屋の奥、書類の山に囲まれた王が顔を上げた。


「近衛兵隊長ガルド、参上いたしました。アルベルト王陛下」


「陛下、お時間を賜り感謝いたします。 内務調査補佐、セブンにございます」


 王は穏やかな笑みを浮かべた。


「ほう、王妃から聞いておる。君がセブンだな」


 セブンは背筋を伸ばす。


「前室の近衛兵と聞いたが、肩書が増えたな」


「はっ、恐縮至極にございます。 現在王宮内の調査を行っております」


「投獄されたと聞いたときは、耳を疑ったが――冤罪であったと」


「はっ、誠心誠意、この任に当たっております」


 王は軽く手を振った。


「よいよい。気を楽にしたまえ。

 私も今日は目を通す資料が多くて疲れておる。 楽にして話そうではないか」


 セブンは一礼した後、部屋の中を見回す。


 窓から差し込む程よい陽光。仕事がはかどりそうな大きな机。

 十分に広い部屋だが、王の前には書類の山が築かれている。


  机の右側には王妃の刺繍入りのハンカチと豪華な装飾のティーカップ。

 左側には豪華な背表紙の書物の山。

 資料と書類を見比べることが多いのだろうか。


 そして王の座っている椅子の横にも黒革の使い古された本が置いてある。

 本と書類に囲まれ、勤勉な王らしい佇まいだ。


 ガルドは王の前に進み出る。


「陛下。 宰相ローデリヒ・ヴァレンシュタインに関わる重大な疑義がございます」


 王の手が、書類の上でぴたりと止まった。

 上目遣いでこちらを見やる。


「……ほう。ローデリヒに、か?」


 その声は穏やかだが、事の重大さに比例した静けさがあった。

 セブンはその重さを感じ、背筋が冷える。


「はっ。しかしながら、まだ事実関係の調査段階につき、この場に参りました。

 宰相ローデリヒを調査・拘束する権限を、我ら二名に一時的にお与えいただけませんでしょうか」


 王はペンを置き、わずかに目を細めた。


「ふむ……あのローデリヒが……にわかには信じがたいな……」


 王はしばし沈思し、やがて決心したように膝を軽く叩く。


「……よかろう。事は、そう容易い話ではあるまい。

 その権限、二人に許可する。書簡は後ほど侍従長より受け取るがよい」


 王は真っ直ぐ二人を見据えた。


「私は執務で部屋を出ていなかったが、報告は聞いておる。

 魔獣ガルドの襲撃があったとか」


「はっ。首謀者はヴァルステイン卿であると突き止めておりますが、まだ捉えられておりません」


 ヴァルステイン卿は追われているのか逃げているのか……もう一頭の魔獣ガルムもいる。

 いずれにせよ早急に捕らえる必要がある。


「その後、エリザベートの所在が不明というではないか……誘拐ではない可能性もあると聞いておるが」


 これも同時進行だ……王妃殿下はいったいどこへ消えたのか。


「その件に関しても総力を挙げて調査中であります。必ずや王妃殿下を無事お連れ致します」


「急に王宮内が騒がしくなった……一連の騒動……関連が……あるのだな?」


 ガルド隊長が王を一度見て、頭を下げる。

 まだわからない、だがその可能性が高いという意思表示。


 王は力ない溜息を一つ。

 執務の疲れなのか、王妃の身を案じているのか。


「もし事実なら……余の責任だ。余の(きさき)一人守れぬとは」


「いえ!この件は……」


 王が手を挙げてガルドの言葉を遮る。





「確かめてくれ――頼む」





 その一言には、計り知れぬ重みがあった。

 ガルドとセブンは姿勢を正し、胸に拳を当てて敬礼した。


「はっ――御意にございます」

「はっ――御意にございます」



 ◇◇◇



 二人が控の間に戻ると、ライエルが拘束されたレオニードの前で腕を組み、何やら説教めいたことを話していた。


「お、戻ってきた」


 ライエルが顔を上げる。


「どうでした、隊長? 陛下は……」


 ガルドは短く頷き、その表情には“覚悟を決めた男”の影があった。


「許可が下りた。宰相ローデリヒ・ヴァレンシュタインの調査拘束――正式に我らへ一任された」


 ライエルの目が大きく見開かれる。


「……マジかよ。宰相を、俺たちが……?」


 セブンは軽く肩をすくめる。


「まぁ、やるしかないですよね。事件の点と点を繋ぐには、あの人を押さえるのが一番早い」


 レオニードは椅子の上で震えながら呟く。


「……わ、私は……どうなるんでしょうか……」


 セブンは即答した。


「囮」


「ひっ……!」


 ライエルが吹き出す。


「おいセブン、容赦なさすぎだろ……!」


 ガルドは咳払いし、場を締める。


「よし、全員聞け。これより――宰相拘束作戦を開始する」


 控の間の空気が一気に張り詰めた。


「ライエル、お前はレオニードの監視と護衛だ。こいつが逃げても死んでも困る」


「了解!」


「セブン、お前は俺と動く。ローデリヒの動きを封じるには、お前の“勘”が必要だ」


 セブンは苦笑しながらも頷いた。


「了解です……まぁ、俺の勘というか、”物語”の都合っていうか……」


「またそれか。存在するかどうかも分からないものだが……警戒は怠るな」


 ガルドが呆れたように言う。

 だが、その“物語の都合”こそが、この世界の真実に最も近いのかもしれない。





「さてセブン、囮のレオニード――どう使う?」



 ガルド隊長は、獲物を前にした猛獣のような目でセブンを覗き込んだ。


『…………………………』

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