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【完結】『無能力転生』冤罪投獄された近衛兵、動かず王国を崩す ――奇行主人公の伏線回収譚  作者: らいすクリーム
第4章【輪廻違和・因果逆転編】

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第59話【線なき陰謀】物語は繋がらない。点を潰すため宰相を不敬罪で逮捕、囮始動

【前回までのあらすじ】

冤罪投獄から始まった一連の陰謀を整理し終えた近衛兵セブンは、拘束されたレオニードを前に、事件の全体像を俯瞰している。

ヴァルステイン卿の策謀、王妃の軟禁、禁書庫騒動、ガルムの急襲、そして今回の襲撃――すべてが“繋がっているようで繋がっていない”不自然な流れだった。

偶然ではなく“配置された出来事”だと見抜いたセブンは、ついに核心へ踏み込む――「物語って、なんです?」

 

「物語って、なんです?」




 その声だけが、妙に静かだった。


「俺が勝手にそう呼んでるだけですけど。 本当に、あるんですか?」


 隊長は慌てて手を振る。


「おい!やめろ!身もふたもないことを言うな!」


 セブンは続ける。


「いや、実際にこの世界が何かの物語に沿って、勇者が魔王を倒すストーリーみたいなものが用意されてたとしましょうよ」


 隊長は腕を組む。


「……まぁそういう冒険譚はあるがな」


「勧善懲悪で黒幕を倒す――そういう分かりやすい話なら理解できますけど」


 セブンは自分を指差す。


「俺みたいなモブ近衛兵つかまえて振り回すとか、ちょっと目的が分からなくないですか?」


 隊長は顎をさすりながら言う。


「そういわれると……実際お前、任務は真面目だが……まぁ、地味だな」


 セブンは無言で隊長を見る。



「隊長……物語に頼んで本格的に主人公にしましょうか……?」



 隊長は慌てて両手を振る。


「あ、お、すまん!すまん! 他意はない! あはははは……!」


 レオニードは怯えながら黙って聞いている。

 セブンはレオニードに視線を向けた。


「レオニード。さっきから黙ってるけど、補足とかあったら言ってほしいんだよなぁ」


「あ……はい……なにかあれば……はい」


「好きな食べ物は?」


「り、リンゴ……もう……許してください……」


「俺も好きだぞリンゴは」


 隊長が空気を読まずに言う。

 セブンはため息をつく。


「話を戻しましょう」


 隊長とレオニードが姿勢を正す。


「ここまでの話を整理するとですね。やっぱり事件が綺麗には繋がってないんですよ」


「ローデリヒ宰相の話だって、突撃してきて無駄に負けた、この人の口から聞いたわけで」


 レオニードが小さく震える。


「徐々に陰謀が暴かれるみたいな、うまいつながり方じゃなくて、やっぱり置き方が点と点になっちゃってて、線で奇麗に繋がってない」


 隊長が真剣な顔で問う。


「セブン、何が言いたい」


 セブンは静かに言った。


「隊長……この一連の事件……」


 二人が息を呑む。

 セブンは胸に手を当て、堂々と言い放った。






「――さっぱり、わかりません」






 隊長は盛大にこけた。

 レオニードは泣きそうな顔でうつむいた。


 セブンは真顔のまま続ける。


「いや、本当にわからないんですよ」


「繋がってるようで繋がってない――でも“誰かが繋げようとしてる”気配だけはある」


 隊長は頭を抱えた。


「……お前……本当に主人公じゃないのか……?」


 セブンは肩をすくめる。


「だから言ってるじゃないですか。俺はただの近衛兵ですよ」



 しかし――その“ただの近衛兵”だけが、この世界の“物語の綻び”に気づき始めていた。



 セブンは軽く指を鳴らし、さらっと言った。


「隊長、こうなったらローデリヒ宰相……捕まえちゃいましょ?」


 ガルド隊長は目を丸くする。


「お、おいセブン……お前、宰相を捕まえるって簡単に……。確かお前、ヴァルステイン卿の時も倒しに行こうとか言ってたな」


 セブンは胸を張る。




「実は、俺――知ってるんです……」




「罪状を“不敬罪”にすれば、”冤罪”でもとりあえず牢獄にぶち込めるって」




 隊長は盛大にむせて思わず唾を飛ばす。


「お!、おまっ……! 報復か!!」


「いやいや、そんなそんな大げさな」


 レオニードが震えながら口を挟む。


「そ、そんな……滅茶苦茶な……」


「ヴァルステイン卿に、”そんな無茶苦茶”されたんですが――なにか?」


 レオニードが下を向く。

 セブンはレオニードに向き直る。


「レオニード。お前、ローデリヒに命令されたんだよな?」


「……は、はい……」


「じゃあローデリヒは“王妃殿下に不敬を働いた疑い”で拘束できますよね?」


 レオニードは一瞬固まり、“あ、確かに……”という顔になる。

 隊長は頭を抱えた。


「セブン……お前、法の穴を突くのが上手すぎる……」


 セブンは真顔で言う。


「だって、事件が点と点で繋がってないんですよ。だったら点を一つずつ潰していくしかないじゃないですか」


 隊長は腕を組み、深くうなずく。


「……まぁ、確かにローデリヒを捕まえれば何か分かるかもしれん……」


「しかもローデリヒは“宰相”。 宰相が動けば、流れは一気に変わる」


 隊長は苦笑しながらも、どこか嬉しそうだ。


「お前……本当に主人公じゃないのか……?」


「違います」


 隊長はまた力こぶを作る。


「しかし……宰相を捕まえるのは……悪くないな……!」


 レオニードは青ざめたまま震えている。


「……あの……本当に……捕まえるんですか……?」


 セブンはにっこり笑い、剣を抜き高く掲げ、宣言する。


「ローデリヒ・ヴァレンシュタイン――不敬罪で逮捕ォ!」


 隊長は剣の柄に手を置き、にやりと笑った。


「よし……行くか、セブン」


 セブンは軽く手を叩き、まるで昼食のメニューでも決めるような気軽さで言った。


「で、レオニード」


 レオニードが己の処分を待つ……。






「お前、(おとり)な」






 レオニードの顔から血の気が引いた。


「えっ……あっ……あの……(おとり)……とは……?」


 ガルド隊長は「また始まった」という顔をしながらも、どこか楽しそうに腕を組む。


「セブン……それいいかもしれんな」


 セブンは真顔で説明する。


「だってローデリヒを捕まえるには“証拠”が必要じゃないですか。でも絶対に尻尾を出さない。なら――尻尾を出すしかない状況を作る」


 レオニードは椅子の上で震えながら叫ぶ。


「な、なぜ私が……!? 私はもう……十分……辱められたのでは……!」


 セブンは淡々と言う。


「お前が動けば、宰相は動く」



「……は、はい……」



「つまり宰相は“お前を使って何かをさせた”ってことだ。なら、お前が動けば宰相はまた反応する。 そこを隊長が捕まえる」


 隊長は頷く。


「なるほどな。レオニードが動けば、宰相は必ず何か仕掛けてくる……それを逆手に取るわけか」


 レオニードは涙目で訴える。


「ま、待ってくれ……! 私は……もう……精神的に……限界で……!」


 セブンは優しい声で言う。


「大丈夫。 お前はただ歩くだけでいい」


「歩くだけ……?」


「そう。歩くだけで宰相が勝手に動く。お前はローデリヒを動かす“起爆装置”なんだよ」


 レオニードは震えながら呟く。




「……そんな……私は……起爆? 爆ぜるんですか? 私、爆発するんですか?」




 隊長は肩を叩く。


「安心しろ。お前が餌になる間に、俺が本丸を落とす」


 セブンはにっこり笑う。


「というわけで――レオニード、囮作戦開始」


 レオニードは椅子の上で崩れ落ちた。



「……私の人生は、いつからこんなことに……」



 その問いに、誰も答えなかった。


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