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【完結】『無能力転生』冤罪投獄された近衛兵、動かず王国を崩す ――奇行主人公の伏線回収譚  作者: らいすクリーム
第4章【輪廻違和・因果逆転編】

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第55話【不戦の決定打】「俺は何もしない」――宣言ひとつで戦場と“物語”を止めた瞬間、レオニードは……

【前回までのあらすじ】

セブンたちの前に、黒幕レオニードが自ら現れ、前室は一触即発の戦場と化す。

セブンは隊長に「物語の駒か、それとも俺たちの隊長か」と問い、ガルドはついに“物語”からの自立を宣言した。

覚醒した隊長が前に出る中、セブンは胡坐のまま動かず、ただ“その瞬間”を狙って戦いを見極める。

「レオニードォ!!―― 後ろだァ!!!!」


 レオニードの目が――


 一瞬だけ、 後ろへ向く。


 ほんの一瞬。だが、それで十分。


「……ッ!!」


 隊長はその一瞬を逃さない。


 踏み込み、剣閃。重い衝撃。


 レオニードの防御魔術が砕け、黒いローブが裂ける。


「ヴォオッ……!?」


 操られていた近衛兵たちが、その場に崩れ落ちる。


(レオニードの精神干渉魔法が阻害され呪縛が解けた!?)


 彼は明らかに動揺していた。

 俺の“嘘の一声”が効いたのだ。


「……セブン……君……本当に……口で戦う気か……?」


 俺は胡坐のまま、堂々と胸を張る。


「当然! 俺の武器は“口撃”」


 ガルド隊長は笑った。戦場で笑った。


「フッ……!セブン……! 最高だ……!!」


 レオニードは歯噛みし、魔力を高める。


「……面白い……本当に面白いよ……セブン……! 君の“言葉”が、ここまで戦況を動かすとは……!」


 ローブに傷がついた……次は、必ず攻撃が入る!


「が、ガルド隊長っ……!がんばってください……っ!!」


 リオは必死に応援している。

 声が震えているが、その声は確かに隊長の背中を押している。


 残るはレオニードのみ。一対一。


 ガルド隊長が、剣を構え、じりじりとレオニードの隙をうかがう。


 音が……再び、鎮まる。


 一足一刀。


 お互いに見合い止まったその瞬間。


 レオニードの目が―― 誰もいないはずの後ろに――

 一瞬だけ、 後ろへ向く。


 ほんの一瞬。だが――

 

 俺は、何も言ってない。


 ……なぜだ?


「……ッ!!」


 隊長は一瞬で判断。


 近距離からの飛び込み。剣閃。速い衝撃。


 レオニードの防御魔術が再び砕け、また黒いローブが裂ける。


「ヴォオッ……!?」



(……同じだ)



 だが俺は、 追わない。

 腕を組み、胡坐をかく。


 物語はそれを“異常”と判断した。


 ”異常”な俺を正すため、強制イベントを前室へ送り込んできた。


 同じ展開が繰り返されるのは、”物語”が”異常“を受け入れられないから。

 物語が混乱し、ループし始めた。


 ループを… 絶つ!


 ガルド隊長は俺の言葉で覚醒し、レオニードは俺の嘘で隙を見せ、

 リオは俺の判断に従い、前室は“戦場”になった。


 俺は動かない。だが世界は動く。


 考えろ、このループを抜け出す方法を……



 主人公が応援した上司が、目の前で勝つ。ドラマチックだ。

 主人公が応援した上司が、目の前で負ける。これもドラマチックだ。



 俺はある考えで、また胡坐で座ったまま事の顛末を見守ることにした。


 座ったまま、ぼそっと呟く。


「リオ、酒とつまみでこの戦い観たいよなぁ」


「……!?」


 戦場の緊張に日常が入り込み、妙な空気が流れる。


 だがこれはどちらに転んでもドラマチックな名シーンになる。

 どちらの結果も“物語”として美味し…いや、美しい。


 だから俺は、動かず、ただ見守るという最高の選択をした。

 ガルド隊長が出す”結果を受け入れる”という選択。


 まるで“VIP席の観客”のように。


 リオは隣で震えながらも、冗談なのか本気なのか俺の顔を覗き込む。


「酒とつまみ…ですか?……隊長の戦い、緊張で胃が死にそうです……」


 俺は静かに頷く。


「気持ちは分かる。だが今は我慢だ。これは――手を出す場面ではない」


「……はい……セブン殿の言う通りです……」


 レオニードは、俺とガルド隊長、両者を警戒している。


「……君は本当に……戦わずに戦場を支配するつもりか、セブン」


 俺は腕を組んだまま、堂々と答える。


「俺は動かない。殿下の命令だからな」


「……なるほど」


「レオニード。相手はこっちだ。まずはこの私を倒してからにしろ」


 レオニードの魔力が膨れ上がる。

 隊長の気迫がさらに燃え上がる。


「リオ、俺は最も効果的な“口撃”の瞬間を狙い、二人の動きを見守る。

 その瞬間はきっとくる!必ず!目を離すな!!」


「はい!」


 俺が“その瞬間”を待つ姿勢は、もはや戦場の観客。

 物語の外側から戦況を操る存在そのものだ。


 そして――俺の予感はおそらく正しい。


 きっとくる。必ずくる。物語が“揺らぐ瞬間”が。


 隊長の剣は重く鋭さを増す。

 レオニードから溢れる魔術は冷たく歪んでいる。


 そして――その瞬間が。


 ガルド隊長とレオニードが、互いに一歩踏み込み、間合いが完全に重なる。


 一足一刀。


 互いの呼吸が鎮まり、空気が張り詰める。

 俺は腕を組んだまま、微動だにせず、ただその瞬間を待つ。


 リオが息を呑む。


「来るッ……!」



 ガルド隊長が大きく素早く振りかぶる! ここだ!!



「かかったな“物語”め!! 俺は何もしないッ!!」



 その瞬間、戦場そのものがビクッと反応した。

 まるで“物語”という巨大な存在が、



「……は?」



 と固まったかのように。


 リオは隣で「えっ……」と声にならない声を漏らす。


 だが――その一瞬の静寂こそ、俺が狙っていた“最も効果的な口撃”だった。


 隊長は、俺の叫びを聞いて――笑った。


 戦場で、敵を前にして、命のやり取りの最中。


「お前という男は……! “何もしない”と宣言して、ここまで戦場を揺らすか……!」


 レオニードは――動揺。


「……な、何……“何もしない”……? そんな宣言で……どうして魔力が乱れ……?」


 俺の叫びは、レオニードの精神干渉魔術に“ノイズ”を走らせた。


 なぜなら――精神干渉魔術は、行動予測が前提。


 しかし俺の“何もしない”その瞬間、レオニードの魔術は“対象の行動モデル”を失い、乱れた。


「終わりだ、レオニード!!」


「馬鹿な……! “動かない選択”が……ここまで……!」


 レオニードの魔術が乱れた“その瞬間”を逃さず、隊長は深く踏み込み、剣を振り下ろす。


 地面に響く踏み込み。鋭い剣閃。空気ごと全てが裂ける音。


 ズヴォッッ!!


 レオニードの胸元に、決定的な一撃が走った。


 黒いローブが裂け、精神干渉の魔力が霧散する。


 操られていた近衛兵たちが、次々とその場に崩れ落ちた。


 レオニードは膝をつき、苦しげに息を吐く。


「……くっ……まさか……」


 彼は俺を見上げる。その目には――理解できないものへの恐怖 があった。



「レオニード。お前の計画はここで終わりだ」



『……ゥグ』


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