第54話【隊長の選択】「物語の駒か、俺たちの隊長か」――動かぬ男の一喝が、最強の騎士を“外側”へ解き放つ
【前回までのあらすじ】
王妃からの「来るな」という手紙を盾に、セブンはあえて胡坐をかき“動かない”選択を貫いている。
殿下誘拐の報せは、追わせて罠にかけるための誘導だった可能性が高いとガルド隊長は見抜いた。
物語の補正を外した代償に、レオニード本人と操られた近衛兵たちが、ついにセブンの前へ現れる。
レオニードは、セブンを見つけると――薄く微笑んだ。
「……近衛兵セブン。“来るな”と言われて、本当に来なかったのか」
「君は……実に面白い」
”物語”は、動かない主人公のもとへ自ら敵を連れてきた。
黒幕の大ボス、王宮魔術師長レオニード。
(順番を飛ばすとは……焦ってるな、“物語”)
しかし焦っているのはこちらも同じだった。
数的不利、この室内空間でこれは致命的だ。
「隊長!答えてください!」
セブンの叫びが、魔力で満ちた前室を雷のように打ち抜いた。
「隊長は“物語の駒”ですか!それとも――俺たちの隊長ですか!!」
その瞬間、ガルド隊長の目がわずかに見開いた。
「ガルド・ヴァン・レオン!俺は誰よりも熱い男だと知っている!」
「だから答えてください!!俺たちの隊長は――」
「物語に従うのか!?それとも俺たちの近衛兵隊長か!!」
レオニードの操る兵たちが迫る。
セブンは胡坐のまま、まるで“動かない山”のように隊長へ揺るぎない眼差しを向ける。
その姿は、物語の補正を完全に無視した“異物”。
だからこそ――ガルド隊長は反応した。
隊長が一歩、俺に近づく。
その足音は重く、迷いがない。
そして――セブンの問いに、真正面から答えた。
「……そうだな、セブン」
(聞きなれた「だがな、セブン」じゃない!?)
「私は“物語の駒”ではない。」
俺の心臓が跳ねる。
隊長はさらに言葉を続ける。
「私は――近衛兵団の隊長だ。」
「そして……お前たちの隊長だ。」
リオは息を呑み、レオニードの操る兵たちでさえ、一瞬動きを止めたように見えた。
ガルド隊長は、力強く言い放つ。
「俺は俺の考えでしか動かん!!」
その時――
キイーーーーーーーィィン
耳鳴りが空間を切り裂く。
ガルドの体から光があふれだす。
視界が、白に消される。
その刹那――
シュパァァーーーーーン!!
光がはじけ、眩暈だけを残して消滅した。
「な、んだ……」
動じていないのは、ただ一人。ガルド・ヴァン・レオン。
「物語がどう動こうと関係ない」
「私は俺自身の考えに従う」
「セブン。お前が動かないと言うなら――私が動く」
背から、圧が噴き出す。
ガルドを包んでいた見えない靄が、霧散した。
まるで『覚醒』、”物語”から解放されたかのような晴れやかな後ろ姿。
俺もリオも、驚きで体が硬直している……動けない。
「レオニード……!」
「セブンに手を出すなら――まずはこの私を倒してからにしろ!」
レオニードは光のことなど意に介さず、魔力の影の中で微笑む。
「……なるほど。やはり君たちは面白い――物語の外側に立つ者たち……」
ガルド隊長は剣を抜き、俺の前に立つ。
「セブン。お前は動くな。ここは――隊長としての私が守る。」
ならばここでの正解はこれだろう。
俺は胡坐のまま、しかし誰よりも堂々と、誰よりも強い意志で宣言する。
「リオ、絶対に手を出すな。ここは隊長の……いや一人の漢の戦場だ」
その声が、ガルドの背に火を灯す。彼の“戦士としての魂”を呼び覚ます。
「ガルド・ヴァン・レオンのプライドにかけて……手を出すことは許さん!」
隊長は熱くなりやすい、熱い男。
そして、リオは空気にのまれやすい体質だ。
「は、はい……(ゴクリ)」
前室の空気が、戦場に変わる。
ガルドの背が、炎をまとう獅子に見える。
ゆっくりと剣を構え、俺とリオを背に庇いながら、レオニードの方へ歩み出る。
迷いがない。
「ここは――私の戦場だ」
レオニードが薄く笑う。
「……なるほど。“動かない主人公”を守るために、自ら前に出るか」
「面白い。本当に面白いよ、君たちは」
「レオニード!このガルド・ヴァン・レオンが相手だ!」
空気が張り詰める。
レオニードの魔力が渦を巻き、操られた近衛兵たちが一斉に動き出す。
だが――俺は動かない。
「セブン。見ていろ。これが、お前たちの隊長だ。」
ガルド隊長が歩き出し、操られた近衛兵たちを剣の塚で吹き飛ばし、鞘に収めたままの剣を大振りしゴミのように吹き飛ばしていく。
全て、みねうち 。
だがその動きは獣。重戦士のそれではない。
剣術というよりも喧嘩のような体裁き。
これが”一騎当千”ガルド・ヴァン・レオン。
リオは震えながらも、俺の言葉を守って一歩も動かない。
(手は出さない……だが……俺なりの戦い方はある!)
ガルド隊長がレオニードへ切り込む瞬間を――俺は鋭く見極める。
止まらない。狩り尽くす。
そして残るはレオニードのみ。一対一。
ガルド隊長が鞘から剣を抜く……。
音が……消える。
間合いは――一足一刀。
見合う、刹那。
その瞬間――
俺は叫んだ。
「レオニードォ!!――後ろだァ!!!!」
『グォアヴァアアアアアアアア』
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