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【完結】『無能力転生』冤罪投獄された近衛兵、動かず王国を崩す ――奇行主人公の伏線回収譚  作者: らいすクリーム
第4章【輪廻違和・因果逆転編】

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第53話【巻き戻しの違和感】繰り返される隊長の言葉と、迫る足音を腕組み胡坐で山のごとし

【前回までのあらすじ】

セブンは、王妃からの「来ないで」という手紙を根拠に、“動かない”選択を貫いている。倒れた近衛兵の証言と二重に重なる声から、レオニードは禁書庫ではなく王宮に残っていた可能性が浮上した。さらにガルド隊長の失踪が精神干渉による拉致だったと判明し、セブンは命令順守を盾に、物語の誘導そのものを拒絶する構えを見せる。

「王妃殿下の命を受け――動きません!!」


 “動かざること山のごとし”


 ”腕組み、胡坐。


 リオは完全に固まり、ガルド隊長は目を細め、

 そして“物語”は一瞬、呼吸を止めた。


「王妃の命令を……見誤ることなどありません」


 緩急をつけて今度は静かに言って重みを醸し出す。


 その手紙が本物の意思であれ、操られて書いたものであれ、今この場にそれを判断できる者はいない。

 ならば!答えはこうだ!

 俺は堂々と座り込み、王妃殿下の手紙を掲げる。


「セ、セブン殿!?い、いや……その……え……?」


 リオは完全に混乱している。だが、俺の決意は揺るがない。

 ガルド隊長は、セブンの姿勢”をしばらく見つめた。


 その表情は――怒りや呆れも通り超えた「やっとか」 というような、深い納得の色だった。

 そして、静かに言う。


「……セブン。お前は今、“最も危険で、最も正しい選択”をした」


「えっ!?ど、どこが正しいんですか隊長……!?」


 ガルド隊長はリオに視線を向ける。


「リオ。王妃殿下は“来るな”と言った」


「それは、“セブンを巻き込みたくない”という意思か、“セブンを誘導する罠”か、

 あるいは“セブンだけが来てはならない理由”がある。」


「どれであっても――セブンが動けば、殿下の意志に反する」


「……!」


 そして隊長は、胡坐をかいたセブンの前に立ち、静かに言葉を続ける。


「セブン。お前は“物語に逆らう”という選択をした。普通の者なら、殿下がさらわれたと聞けば追う」


「だが――お前は“命令”を優先した」


「これは、物語の補正を外す唯一の行動だ」


 セブンの選択は、物語の“予定調和”を壊した。

 レオニードが仕掛けた誘導も、殿下の手紙も、すべて“追わせるための罠”だった可能性が高い。

 だが追わなかった。


「……お前が動かないなら、“物語は次の手を打つ”。それでいい。お前はお前の任務を果たせ」


 リオはセブンの隣に立ち、見守る。


「セ、セブン殿……私も……ここで……」


 ガルド隊長は深く息を吐き、二人を見下ろして言う。


「……よし。ならば“動かない者たち”に、世界がどう動くか」


 前室が静寂に落ちる……何も聞こえない。


(隊長のセリフが怖い……いったい何が起こるというのだ?)


(俺は物語を怒らせ、その“駒”であるガルド隊長を怒らせてしまったのか?)


 ガルド隊長は、俺の心を読んだかのように、ゆっくりと口を開いた。


「……セブン」


 静かでやわらかな声。


「勘違いするな。私は怒っていない」


 あなたの心臓が一瞬止まる。怒っていない?


 ではこの圧は何だ?


 隊長は続ける。




「怒っているのは“物語”だ」




 リオが理解できず聞き返す。


「も、物語?」


 ガルド隊長は頷く。


「お前が“動かない”という選択をしたことで、物語は予定を狂わされた」


「本来なら、殿下がさらわれたと聞けば追う。追えば罠にかかる。 罠にかかれば物語は進む」


「だが――お前は追わなかった」



(ガルド隊長が同じようなセリフを繰り返している……まさか……)



 隊長はあなたを見下ろす。その目は“評価”だった。


「セブン。お前は物語の“外側”に足をかけた。だから”物語”は怒っている。だが私は――お前を止めるつもりはない」


 胸に、妙な安堵と、妙な不安が同時に広がる。


「むしろ……お前の選択は正しい」


「殿下が“来るな”と言った以上、お前が動けば殿下の意志に反する」


「そして――レオニードの罠にもかかる」


 隊長はセブンの胡坐の姿勢を見て、わずかに口元を緩めた。


「……動かざること山のごとし、か」


「ならば見せてやろう。“動かない主人公”に対して、世界がどう動くかを」


 その瞬間――王宮全体が、低く震えた。


 まるで、“物語が次の一手を打った”かのように。


 ドォォォォォン……!!


 地鳴りのような低い振動が、王宮の石壁を伝って前室まで響いた。

 リオは驚きで腰を抜かしそうになっている。

 ガルド隊長は剣の柄に手を添えたまま、あなたを見下ろして言う。


「……来たな」


 “覚悟していた者の声”だ。


 全身の毛が逆立つ感覚。


(な、何が来たんだ!俺は何を呼び寄せたんだ?)


 ガルド隊長は、セブンの混乱を見透かしたように言葉を続ける。


「セブン。お前が“動かない”という選択をしたことで――」


 隊長は、そこで言葉を止めた。

 まるで続きを忘れたかのように、数秒黙り込む。


 そして、同じ声音、同じ間で、もう一度言った。


「セブン。お前が“動かない”という選択をしたことで――」


 今度は、続きを言えた。


「……物語は予定を狂わされた」


 セブンの心臓が跳ねる。



(……今、同じことを言った?いや、言い直した?)


(これはまるで――誰かに“巻き戻された”みたいな……)


(これは……セリフの繰り返し!”物語”の誘導に抗えない隊長だ!)



「……来るぞ。物語が“別の手”を打った」


 リオは震えながら剣を抜く。


「セ、セブン殿……!な、何か来ます……!」


 足音は一つではない。

 二つ、三つ……いや、もっと多い。


 そして――その足音の主たちは、あなたが“絶対にここで会いたくなかった相手”だ。


「……来る」


 廊下の影から姿を現したのは――


 禁書庫へ向かったはずのヴァルステイン派の近衛兵たち。

 その目は虚ろで、動きはぎこちなく、まるで“操られている”ようだった。


「レオニードの精神干渉だ」


 そして、その兵たちの後ろから――


 黒いローブの男がゆっくりと歩み出る。顔は見えない。


 だが、その魔力の気配は――




「……レオニード本人だ」




「ええええぇぇぇぇ!」


 ”物語”が本当に敵を送り込んできた。俺が動かないから、敵が直に来た。

 なんだこの世界、なんだこの物語、なんで俺が中心にされてるんだ!


 レオニードは、あなたを見つけると――微笑んだ。




「……近衛兵セブン……『来ないで』と書かれていただろう……?」

『ガガガ…ヴヴヴ…ググググググ』


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