第53話【巻き戻しの違和感】繰り返される隊長の言葉と、迫る足音を腕組み胡坐で山のごとし
【前回までのあらすじ】
セブンは、王妃からの「来ないで」という手紙を根拠に、“動かない”選択を貫いている。倒れた近衛兵の証言と二重に重なる声から、レオニードは禁書庫ではなく王宮に残っていた可能性が浮上した。さらにガルド隊長の失踪が精神干渉による拉致だったと判明し、セブンは命令順守を盾に、物語の誘導そのものを拒絶する構えを見せる。
「王妃殿下の命を受け――動きません!!」
“動かざること山のごとし”
”腕組み、胡坐。
リオは完全に固まり、ガルド隊長は目を細め、
そして“物語”は一瞬、呼吸を止めた。
「王妃の命令を……見誤ることなどありません」
緩急をつけて今度は静かに言って重みを醸し出す。
その手紙が本物の意思であれ、操られて書いたものであれ、今この場にそれを判断できる者はいない。
ならば!答えはこうだ!
俺は堂々と座り込み、王妃殿下の手紙を掲げる。
「セ、セブン殿!?い、いや……その……え……?」
リオは完全に混乱している。だが、俺の決意は揺るがない。
ガルド隊長は、セブンの姿勢”をしばらく見つめた。
その表情は――怒りや呆れも通り超えた「やっとか」 というような、深い納得の色だった。
そして、静かに言う。
「……セブン。お前は今、“最も危険で、最も正しい選択”をした」
「えっ!?ど、どこが正しいんですか隊長……!?」
ガルド隊長はリオに視線を向ける。
「リオ。王妃殿下は“来るな”と言った」
「それは、“セブンを巻き込みたくない”という意思か、“セブンを誘導する罠”か、
あるいは“セブンだけが来てはならない理由”がある。」
「どれであっても――セブンが動けば、殿下の意志に反する」
「……!」
そして隊長は、胡坐をかいたセブンの前に立ち、静かに言葉を続ける。
「セブン。お前は“物語に逆らう”という選択をした。普通の者なら、殿下がさらわれたと聞けば追う」
「だが――お前は“命令”を優先した」
「これは、物語の補正を外す唯一の行動だ」
セブンの選択は、物語の“予定調和”を壊した。
レオニードが仕掛けた誘導も、殿下の手紙も、すべて“追わせるための罠”だった可能性が高い。
だが追わなかった。
「……お前が動かないなら、“物語は次の手を打つ”。それでいい。お前はお前の任務を果たせ」
リオはセブンの隣に立ち、見守る。
「セ、セブン殿……私も……ここで……」
ガルド隊長は深く息を吐き、二人を見下ろして言う。
「……よし。ならば“動かない者たち”に、世界がどう動くか」
前室が静寂に落ちる……何も聞こえない。
(隊長のセリフが怖い……いったい何が起こるというのだ?)
(俺は物語を怒らせ、その“駒”であるガルド隊長を怒らせてしまったのか?)
ガルド隊長は、俺の心を読んだかのように、ゆっくりと口を開いた。
「……セブン」
静かでやわらかな声。
「勘違いするな。私は怒っていない」
あなたの心臓が一瞬止まる。怒っていない?
ではこの圧は何だ?
隊長は続ける。
「怒っているのは“物語”だ」
リオが理解できず聞き返す。
「も、物語?」
ガルド隊長は頷く。
「お前が“動かない”という選択をしたことで、物語は予定を狂わされた」
「本来なら、殿下がさらわれたと聞けば追う。追えば罠にかかる。 罠にかかれば物語は進む」
「だが――お前は追わなかった」
(ガルド隊長が同じようなセリフを繰り返している……まさか……)
隊長はあなたを見下ろす。その目は“評価”だった。
「セブン。お前は物語の“外側”に足をかけた。だから”物語”は怒っている。だが私は――お前を止めるつもりはない」
胸に、妙な安堵と、妙な不安が同時に広がる。
「むしろ……お前の選択は正しい」
「殿下が“来るな”と言った以上、お前が動けば殿下の意志に反する」
「そして――レオニードの罠にもかかる」
隊長はセブンの胡坐の姿勢を見て、わずかに口元を緩めた。
「……動かざること山のごとし、か」
「ならば見せてやろう。“動かない主人公”に対して、世界がどう動くかを」
その瞬間――王宮全体が、低く震えた。
まるで、“物語が次の一手を打った”かのように。
ドォォォォォン……!!
地鳴りのような低い振動が、王宮の石壁を伝って前室まで響いた。
リオは驚きで腰を抜かしそうになっている。
ガルド隊長は剣の柄に手を添えたまま、あなたを見下ろして言う。
「……来たな」
“覚悟していた者の声”だ。
全身の毛が逆立つ感覚。
(な、何が来たんだ!俺は何を呼び寄せたんだ?)
ガルド隊長は、セブンの混乱を見透かしたように言葉を続ける。
「セブン。お前が“動かない”という選択をしたことで――」
隊長は、そこで言葉を止めた。
まるで続きを忘れたかのように、数秒黙り込む。
そして、同じ声音、同じ間で、もう一度言った。
「セブン。お前が“動かない”という選択をしたことで――」
今度は、続きを言えた。
「……物語は予定を狂わされた」
セブンの心臓が跳ねる。
(……今、同じことを言った?いや、言い直した?)
(これはまるで――誰かに“巻き戻された”みたいな……)
(これは……セリフの繰り返し!”物語”の誘導に抗えない隊長だ!)
「……来るぞ。物語が“別の手”を打った」
リオは震えながら剣を抜く。
「セ、セブン殿……!な、何か来ます……!」
足音は一つではない。
二つ、三つ……いや、もっと多い。
そして――その足音の主たちは、あなたが“絶対にここで会いたくなかった相手”だ。
「……来る」
廊下の影から姿を現したのは――
禁書庫へ向かったはずのヴァルステイン派の近衛兵たち。
その目は虚ろで、動きはぎこちなく、まるで“操られている”ようだった。
「レオニードの精神干渉だ」
そして、その兵たちの後ろから――
黒いローブの男がゆっくりと歩み出る。顔は見えない。
だが、その魔力の気配は――
「……レオニード本人だ」
「ええええぇぇぇぇ!」
”物語”が本当に敵を送り込んできた。俺が動かないから、敵が直に来た。
なんだこの世界、なんだこの物語、なんで俺が中心にされてるんだ!
レオニードは、あなたを見つけると――微笑んだ。
「……近衛兵セブン……『来ないで』と書かれていただろう……?」
『ガガガ…ヴヴヴ…ググググググ』
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