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【完結】『無能力転生』冤罪投獄された近衛兵、動かず王国を崩す ――奇行主人公の伏線回収譚  作者: らいすクリーム
第4章【輪廻違和・因果逆転編】

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第52話【”来ないで”の真意】嘘かも知れない王妃殿下の命令を“最も忠実に守る”という最大の反抗

【前回までのあらすじ】

前室警備に戻ったセブンは、牢獄塔で起きたガルド隊長の不可解な“消失”に違和感を抱きながら、静まり返った王宮の異様な空気を警戒していた。

直後、王妃殿下の居室でレオニードの魔術反応が発生し、禁書庫が開いていないという矛盾の中、王妃殿下が自ら同行した形で姿を消したと判明する。

机に残された『……セブン……来ないで……』の紙片を前に、セブンはこの誘導の真意を読み解こうとする。

「謎が多すぎるだろおおおお!!」


 気づけば、天井に向かって叫んでいた。


 リオはビクッと肩を震わせて言った。


「セ、セブン殿……お気持ちはよく分かります……!」


 俺は深呼吸し、倒れた近衛兵の言葉をもう一度思い返す。


 顔は見えなかった。殿下は抵抗もしなかった。

 まるで“信頼している相手”のように。


 そしてミレイアの証言。

 レオニードは禁書庫へ向かった。ヴァルステインはその協力者。

 そして、手紙。



『……セブン……来ないで……』



 脳裏に、ひとつの可能性が浮かぶ。


 ――もしかして、


 禁書庫へ向かったのではない。

 禁書庫へ向かった“ように見せかけた”だけ?


 リオが不安げに俺を見る。


「セブン殿……どうか、何か分かったことがあれば……」


 俺は倒れた近衛兵の肩を掴み、もう一度問いかける。


「その“ひとり”は、本当にレオニードだったのか?それとも――“別の誰か”だったのか?」


 近衛兵は苦しげに目を閉じ、震える声で答えた。


「……声は……レオニード殿に……似ていました……ですが……“もうひとつの声”が……重なって……」


 俺とリオは同時に息を呑む。


「……まるで……“二人が同時に話している”ような……そんな……声でした……」


 これは――精神干渉による声の重ね合わせ。レオニードの魔術。


 つまり――レオニードは禁書庫に行っていない。


 禁書庫へ向かったのはヴァルステインだけ。レオニードは王妃殿下を狙って王宮に残っていた。

 そして、殿下を連れ去ったのはレオニード本人。誰かに成りすまして……。



 ……考えろ、ここからが俺のターンだ。



「リオ……手紙には何と書いてある?」


 俺はあえてリオにもう一度手紙を確認させる。

 リオは紙片を慎重に持ち、震える筆跡を読み上げた。


「『……セブン……来ないで……』 ……と、書いてありますね。」


 俺は頷き、その意味を噛みしめる。


「そうだ。リオ、お前……王妃殿下の命令を断れるか?」


 リオは即答した。


「無理です。近衛兵として、絶対に」


 俺は満足げに頷く。


「そうだ。その選択は近衛兵として正しい!

ならば俺はここに残り、前室警備の任を続ける!」


 リオが驚いた顔をする。


「セブン殿!?……えええ?!」


 俺は紙片を指で弾き、静かに言い放つ。


「なぜか?追いかけないことこそが“王妃殿下の命令”だからだ。」


「そして――ここにいた近衛兵の証言も、殿下が“無理やりさらわれたわけではない”と示している。」


「ならば、俺が追うのは“命令違反”になる。」


 リオは息を呑む。


「…え、ええ……それは……確かに……」


 納得してない様で、納得している様な力ない返事。


「俺は俺の任務をこなす。王妃殿下が“来るな”と言った以上、俺は行かない!」


 堂々といけと、俺に俺が言う。

 リオは深く頭を下げる。


「承知しました、セブン殿。私も、お供いたします」


 俺とリオが警備に戻ったその時。


 廊下の奥から――ゆっくりとした足音が近づいてくる。

 重く、しかし確かな足取り。俺はその気配を知っている。


 リオが息を呑む。


「……この気配……まさか……!」


 そして、前室の影から姿を現したのは――ガルド隊長



 先手必勝。



 ”物語”が準備する前に仕掛ける。それが俺がここまで来て分かった攻略法だ。


「来たか、ガルド隊長……!」


 俺は一歩踏み出し、隊長が口を開く前に畳みかける。


「隊長、答えてください。俺がまだ牢にいた時、

隊長は一度行方不明になり、そしてボロボロの姿で戻ってきた!」


「証拠を手に入れたとは言っていましたが、襲われるような証拠の集め方ではなかったはず!」


 ここに来ていきなり問い詰められた隊長は、驚きを隠せない。

 何か言おうとした瞬間、俺はさらに被せる。


「隊長!答えてください!俺が牢にいた時の失踪は、何だったんですか!」


 隊長は、俺の勢いに押されて一瞬言葉を失った。

 リオは横で「セ、セブン殿……!」と青ざめている。

 だが、隊長は逃げなかった。


 むしろ――覚悟を決めた者の目で俺を見返した。

 そして、ゆっくりと口を開く。


「……セブン。」


 低く重い声。俺の問いを正面から受け止める。


「……連れ去られたのだ。レオニードに、な」


 俺の背筋に冷たいものが走る。


「あの時私は、王妃殿下の居室近くで“レオニード本人”に襲われた。」


「では隊長が負った傷は……?」


 ガルド隊長は頷く。


「ああ……レオニードの精神干渉魔術に抗った結果だろう。」


「奴は私を“操って”お前の牢へ向かわせようとした。」


「だが、私は抵抗した。その結果、意識を失い……気づけば、あの場所に。

 そしてその時記憶も同時に失われたらしい……術者であるレオニードの仕業だろう」


 レオニードに抗えなかったことを悔いるガルド隊長の表情。


「医務室で黒幕がレオニードと判明し、その名前を何度も意識しているうちに……思い出したのだ」


 ガルド隊長が姿勢を正す。


「セブン。お前が“追わない”という判断をしたのは正しい。おそらくレオニードは、お前を誘導するために殿下を利用した」


「だが――お前はその罠を外したという事になる」


 隊長は、俺をまっすぐ見つめて言う。


「だから、今ここで答える。あの時の失踪は――“レオニードの精神干渉による拉致”だったのだろう」


 隊長は一歩近づき、俺の肩に手を置く。


「セブン。お前はもう“中心に据えられている”。だが……その中心に立つのは、お前の意思でいい」


 俺の“先手必勝”は成功した。


 しかし今更なぜ俺をどうこうしようとするレオニード……

 俺の立場をよく見てみろ……もうまごうことなきただの近衛兵でしかないぞ!


 ガルド隊長は、ゆっくりと息を吸った。

 まるで、俺の問いに答える覚悟を決めた者のように。


「……セブン。」


 低く、静かで、しかし揺るぎない声。


「お前は勘違いしている。」


 俺の眉が動く。考えが…聞こえてるのか?


「“主人公に目覚めるかどうか”など、この世界にとってはどうでもいい。お前が事件を解決するかどうかも、物語が勧善懲悪になるかどうかも、そんなものは“結果の形”にすぎん。」


(おいおい…語り始めたぞ……)


 隊長は一歩近づき、俺の胸元を指で軽く押す。


「この世界が求めているのは――『誰が主人公か』ではない。『誰が動いたか』だ」


 呼吸が止まる。


「昔話のような勧善懲悪?絵本のような善因善果?そんな単純な構造で世界が動くなら、とっくに誰かが救っている」


「だが現実は違う」


 隊長は、俺の肩をがっしり掴む。


「この世界は“動いた者”を中心に回る。勇者でも王子でもない。名もなき兵士でもない。」


「動いた者が中心になる。それだけだ」


 俺の胸に、重く、しかし妙に納得できる言葉が落ちる。


「だからセブン。お前が動けば、お前が中心になる。お前が動かなければ、お前はただの近衛兵だ」


 隊長は俺の目をまっすぐ見て言う。


「“物語が満足するかどうか”など、気にする必要はない。満足させるのは“物語”ではなく、この世界に生きる“人間”だ」


 リオは震えながらも、俺の横で頷いている。


(何が分かったんだこいつ……)


 ガルド隊長の人柄はその正直さと熱さが同時にある。

 だが熱く語りすぎだ”物語”、世界はそう動くものを”主人公”と呼ぶんじゃないのか)


「セブン殿……私は……セブン殿が動くなら、どこまでもお供いたします……!」


(お前もだリオ。お前はほんとにいいモブだが、俺を主人公側に推すんじゃない。俺とお前の立場は変わらん)


 ガルド隊長は最後に、俺の肩にやさしく手を置いて、兄のように微笑んだ。


「セブン。お前が主人公になるかどうかは――“お前が決めろ”。」


(一貫して違うといってます、ガルド隊長……)


 隊長は静かに続ける。


「だが一つだけ言っておく。王妃殿下は、お前を名指しで“来るな”と言った。

 その言葉の裏にある”本当の意味”を、見誤るな」


 俺は少し考えるように顎に手を置く。


 だが実際はもう考えは決まっている。これはポーズだ。



「わかりました。見誤ることなどありません」



 たっぷり時間を取って答える。


 “動かざること山のごとし”


 俺はドカッと胡坐をかき、腕を組んで、吼える。



「王妃殿下の命を受け――動きません!!」


『……グヴヴヴ……』


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