第49話【プロット殺しの勝利宣言】黒幕特定、居場所判明、そして丸投げへ。俺を「主人公」にしたい物語との知恵比べに勝った瞬間
【前回までのあらすじ】
意識を取り戻したミレイアは、震える声で“王宮の中にいる敵”の存在を告げる。
感動の再会で場が乱れるも、セブンは執念で真実を引き出そうとする。
そしてついに明かされた名――王宮魔術師長、レオニード。
「……王宮魔術師長……レオニード様……です……」
その名が落ちた瞬間、医務室の空気が爆発した。
「はぁぁぁ!?魔術師長だと!?王宮で一番の魔術師あのレオニード?」
「……最悪の名前が出おったのう」
「……セブン。これはもうただの“事件”では済まないぞ」
「……レオニード様が……殿下の秘密を……?」
そしてミレイアは続けた。
「……セブンさま……あの人は……殿下の“秘密”を……暴こうとして……わたしを……」
王宮魔術師長レオニード。
王宮で最も魔術に精通し、王妃殿下とも近しい立場にある人物。
その男が――“敵”だとミレイアは言った。
物語は、俺がどれだけ抗っても、ついに核心へと踏み込んだ。
「とにかく落ち着いてくれ。そして……何度もためらわず、すぐにスッと言ってくれミレイア。」
ここでまず言っておかないと、またもったいぶる可能性がある。
「侍女を魔法で倒し、お前を連れ出したのがレオニードならば
その動機、ヴァルステインとの関係、ガルムはなぜ放たれたか!」
「いろいろややこしいから、ここで一人長台詞ですべてを語るんだ!!」
ライエルは口を開けたまま固まり、
アーヴィングは杖を落としそうになり、
ガルド隊長は天井を見上げ、
エリシアは信じられないほど冷たい目で俺を見た。
だが――ミレイアだけは違った。
俺の強引な物語進行に、なぜか反応した。
まるで、「そう言ってくれるのを待っていた」と言わんばかりに。
ミレイアは震える唇を開き、俺の手を握りしめた。
「……セブンさま……わかりました……すべて……お話しします……」
医務室の空気が一気に集中する。
ミレイアは息を整え、まるで“語り部”のように語り始めた。
「レオニード様は……殿下の“秘密”を暴こうとしていました……」
「殿下の魔力は……王家の血筋とは異なる……“特別な系統”のもの……」
「それを知ったレオニード様は……殿下を“王家の正統性を揺るがす存在”と見なし……証拠を集めようとして……」
「わたしの魔力を……強制的に奪い……殿下の魔力と照合しようと……」
ライエルが驚きの声を上げる。
「……マジかよ、殿下を敵に回す気か?」
ミレイアは続ける。
「ヴァルステインは……レオニード様が操っていました……“殿下の魔力を引き出すため”に……」
「ガルムが放たれたのも……殿下の魔力を刺激し……暴走させるため……」
「すべて……殿下の“秘密”を暴くための……罠でした……」
アーヴィング
「……なんということじゃ……魔術師長がそんなことを企てていたのか」
ミレイアは最後に、俺をまっすぐ見つめて言った。
「……セブンさま……レオニード様は……殿下を失脚させようとしています……」
医務室の空気が張り詰める。
俺の“まとめて全部言わせる”という強引な手法は、見事に物語の核心を引きずり出した。
「黒幕は魔術師長レオニード……そしてその手先、協力者がヴァルステイン卿!」
「これは……国家を揺るがす凶行!!」
俺は直属の上司に伝える。
「カルド隊長!これは武官・文官・魔官、すべてが動かないといけません」
「武である我々近衛兵騎士団は、王宮内を厳戒態勢で守り抜く必要があります。
文の内部監察、魔の魔術顧問はヴァルステイン卿とレオニード魔術師長を追う!」
「事件は全勢力で対処すべきです!ここにいる人間だけで解決できるほど事態は甘くない!」
俺の“説明じみた誘導”は、完全に物語の流れを捻じ曲げる。
本来なら――
ここで俺が単独で動き、危険な真相に迫り、ピンチに陥り、仲間が駆けつけて……
という“主人公ルート”が待っていたはずだ。
だが俺は、それを拒否する。
「……セブン。お前……本気で言っているのか?」
隊長は驚きながらも、俺の言葉を吟味するように腕を組む。
「確かに……魔術師長が黒幕となれば、これは近衛兵だけで対処できる規模ではない。
内部監察、魔術顧問……すべてを巻き込む必要がある」
アーヴィングも頷く。
「……セブンの言う通りじゃのう。魔術師長を敵に回すのは、王宮全体の問題だ。わし一人でどうにかできる相手ではない。」
エリシアも、ミレイアを抱きしめながら言う。
「……殿下のためにも、王宮全体で動くべきです」
ライエルは頭を抱えながら叫ぶ。
「いやいやいや、なんでセブンが“全勢力を動かす提案”してんだよ。普通こういうのって主人公が単独で突っ走るやつだろ!」
「セブンはあくまで自分なりの拒否しておるのじゃ」
「拒否すんなよ!物語が困ってんだよ!」
だが、ミレイアは俺の手を握りながら静かに微笑んだ。
「……セブンさま……わたし……安心しました……」
俺の“物語誘導拒否”は、むしろ周囲の信頼を強めていた。
そして――ガルド隊長が、俺の肩に手を置く。
「お前の判断は正しい。この事件、お前一人に背負わせるつもりはない。王宮全体で動く。
そのための段取りを、今すぐ始める」
物語は、俺を思い通りに誘導できない。
その結果――物語の方が俺に合わせて動き始めた。
(もう一押しだ……)
ミレイアの枕元で、俺が誰にも聞こえないように声を落とす。
静かな鋭さをもって”ここだけの話”を演出する。
「(ミレイア……レオニードはどこにいる)」
ミレイアの瞳が、こちらを見ず、かすかに揺れた。
俺の問いは、彼女の恐怖をそっと掘り起こすようなものだったが――
それでも彼女は、俺の声に反応する。
誰一人、俺が何を囁いたのか気づいていない。
ミレイアは、俺の手を弱く握り返し、答えた。
「(……いま……レオニード様は……王宮の地下……“禁書庫”に……)」
その言葉は、俺にだけ届くようにかすれた声で紡がれた。
「(……殿下の魔力の……“系統”を調べるため……古い魔術書を……持ち出して……)」
「(……“照合の儀式”を……準備しているはず……)」
禁書庫。
王宮の中でも最も危険な魔術書が眠る場所。
そこに魔術師長が潜り、殿下の魔力の秘密を暴こうとしている。
しかも――“照合の儀式”などという物騒な単語まで出てきた。
「(……セブンさま……どうか……殿下を……お守りください……)」
俺の耳元だけに届く、必死の願い。
物語は、俺を中心に据えようとしている……だが俺は、その中心から逃げ続けている。
それでも――ミレイアは俺に託した。
俺がもう一つ小声で問いかける。
“彼女を助けたい一心で核心に迫る男”の静かな決意を帯びて。
「(ヴァルステインもそこにいる可能性はあるか?)」
ミレイアのまつげが、かすかに震えた。
ほとんど息のような声で答えた。
「(……はい……ヴァルステイン卿も……レオニード様と一緒に……地下へ……)」
俺の耳にだけ届くようにかすれた声で紡がれた。
「(……ヴァルステイン卿は……“殿下の魔力を引き出す役目”を……任されていました……)」
「(……ガルムを放ったのも……レオニード様の……命令……)」
(聞き出した……!!)
ヴァルステイン卿も地下の禁書庫に同行している。
これは単なる暴走ではない。王宮内部での“計画的な動き”だ。
ミレイアは、俺の手をぎゅっと握りしめて続けた。
「(……セブンさま……ヴァルステイン卿は……殿下の魔力を“暴走させる方法”を……知っています……)」
「(……だから……レオニード様は……彼を……使って……)」
言葉が途切れ、ミレイアは苦しそうに息を吸う。
俺は自然と手を支えた。
「(……どうか……殿下を……守って……)」
やったぞ!!
物語の誘導を逆手に取って、“主人公ムーブ”を避けながら、
――全部聞き出した!!
ヒロインを助ける主人公を演じつつ、事件の全容、黒幕、居場所まで……全部だ……!
勝った!!
『……オオオオオオオオオオオオ』




