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【完結】『無能力転生』冤罪投獄された近衛兵、動かず王国を崩す ――奇行主人公の伏線回収譚  作者: らいすクリーム
第2章【王宮陰謀・最短攻略編】

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第33話【名探偵の風評被害】「撲殺拷問の名探偵」誕生。恐怖と理不尽で兵士を司法官へ走らせる最短攻略

【前回までのあらすじ】

密室に連れ込まれた二人の兵士を前に、セブンは“狂気の尋問者”を演じて心理的に追い詰める。

一方ガルド隊長は沈黙と威圧だけで兵士たちの逃げ道を塞ぎ、いつしか“証拠隠滅のガルド”という虚構が現実味を帯び始める。

狂気を装うセブンと、静かに詰める隊長――二人の圧に挟まれた兵士たちは、ついに嘘も逃走も許されない“詰み”の状況へ追い込まれていく。

 “脅されていない”という言葉を彼ら自身に言わせることで、逃げ道を塞ぐ。


 二人の兵士は、次の言葉を待ちながら、震えている。


「じゃあこれは、尋問や拷問だとおもうか?同じ場所を警備した同業さん。」


 二人の兵士は、その声を聞いた瞬間――

 跳ねるように震えた。

 ロルフは声にならない声を絞り出す。


「…尋問でも、拷問でも…ないです同業のせ、世間話です…。」


 ダリオも続く。


「は、はい…お話…です…同業の仲間として…。」


 二人とも、“セブンを刺激しない答え”を必死に探している。


「俺は面倒事が嫌いなんだよ。あの現場に復帰したいだけ…わかるよな?」


 控えの間の空気が、“狂気の演技”で完全に支配された。

 二人の兵士は縮こまり動けない。

 そこにガルド隊長が助け舟を出す。


「セブンはただ“現場に戻りたい”と言っているだけだ。それを邪魔する理由があるなら――今ここで話せ。」


 二人の兵士は、セブンと隊長の視線に挟まれ、

 完全に追い込まれた状態で震えている。


「俺が現場に戻るには、この『撲殺拷問のガルド』様が言う通り、

 王妃暗殺の証人である俺と、王妃殿下の命が危険にさらされるのが問題らしいんだわぁ。」


 そしてもちろん、そんな二つ名はない。


 二人の兵士は、『撲殺拷問のガルド』 という謎の二つ名を聞いた瞬間――

 ガタッ!!と一歩下がる。


 存在しないはずの恐怖を彼らは勝手に補完し、勝手に震え上がっている。


 そして――ガルド隊長本人はというと。

 腕を組んだまま、ゆっくりと目を閉じた。


 深く、深く、ため息をつく。


「…セブン。おまえは…。」


 “心底困っている”のが分かる声だった。


 しかし、二人の兵士は隊長のため息すら“処刑前の静けさ”と受け取ってしまった様子。


「た、隊長…!ど、どうか…どうか命だけは…!」


「わ、我々は…命令されただけで…!し、知らなかったんです…!王妃殿下が狙われているなんて…!」


 ここで十分だ。


 ダリオの口から“命令”という言葉が出た。

 それはガルド隊長が言っていた“王命による警備”とは明らかに違う。


 ここでもう少し楽しむ選択もあるが、俺の目的は違う。

 命の危険を回避し、事件を解決し、仕事に復帰することが全てだ。


「ということで…。」


 俺は意味深に言葉を止める…。

 そして室内の緊張感が最大に高まったところで。


「ロルフ、ダリオ。」


 二人の兵士の顔色が蒼白になる。

 俺はガルド隊長の背中を押し、声をあげる。


「三日以内に『名探偵ガルド』様と王妃暗殺事件を解決してこい!」


 ――ガルド隊長のこめかみがピクッと動いた。


「…セブン。その…いや、なぜ俺が事件解決の中心に。」


 怒ってはいない。

 だが“本気で困っている”声だった。

 俺は”物語”の修正力が一番弱いのは、ガルド隊長ではないかと思い始めている。


「わ、わかりました!!三日以内に…三日以内に必ず…!」


「や、やります!やりますから…どうか…どうか抹殺だけは…!」


 二人はセブンとガルド隊長に深々と頭を下げた。

 ガルド隊長は深くため息をつき、仕方ないという顔で続ける。


「ロルフ、ダリオ。今からお前たちは司法官のもとへ行き、知っていることをすべて話せ。

 三日以内ではない、今すぐにだ。」


「は、はいぃぃぃぃ!!」


 二人は焦りながら鍵を開け、競い合うように扉を開き、控えの間を飛び出していった。


 扉が閉まる。


 静寂。


 そして――ガルド隊長は小さく、しかし確かに笑った。


「お前のやり方は…本当に予想がつかん。」


 “狂気の演技”と“揺さぶり”は、

 見事に二人の兵士を司法官の元へ走らせた。


「隊長と一緒にと言ったのにあいつら…隊長を忘れていってしまいましたね。」


 勢いで”ガルド隊長に事件解決を委ねる”という作戦が…”物語”に修正されたか。


「…ああ。」


 とだけ答え、ガルド隊長ほんの少し目を伏せた。


「お前の演技と、いい加減な二つ名が効いたのかもな。」


 淡々とした声だが、どこか呆れと苦笑が混ざっている。


「それに…俺が行く必要はない。

 あいつらは今、“俺に背を向けたら消される”と本気で思っているようだ。

 つまり――全力で司法官のところへ走っているだろう。」


「だから俺はここに残る。そして、お前と話すことがある。…セブン。お前は、なぜそこまでして“現場に戻ろう”とする?」


 隊長は真剣な目でセブンを見つめている。


「…聞きたいですか?」


 俺は隊長に表情を見られないよう背を向けた。


「…ああ。聞きたい。お前が何を抱えているのか、どこまで本気なのか…。」


「セブン。話したくないなら、それでもいい。だが――話したいなら、俺は聞く。」


 俺が何人かを相手しているときはこうだ…。


『同じ意味の言葉が、口を変え、人を変え、繰り返される。

 まるで見えない何かが、「正しい流れ」に戻そうとしているかのように。』


 そして一対一になると始まる”物語”の誘導。


『俺に選択を委ねる。』空気。


 まるで、俺が“物語の主人公”であるかのように。

『…………………グヌ』

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