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【完結】『無能力転生』冤罪投獄された近衛兵、動かず王国を崩す ――奇行主人公の伏線回収譚  作者: らいすクリーム
第2章【王宮陰謀・最短攻略編】

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第32話【偽りの狂気】「証拠隠滅のガルド」の誕生。狂人を演じるセブンと、静かに詰める最強の隊長

【前回までのあらすじ】

前室警備の兵が“敵の手先”である可能性を突きつけたセブンは、会話の全てが聞かれていた事実を利用し、二人を拘束して控の間へ連行した。

王妃殿下・ライエル・エリシアを遠ざけ、密室に残ったのはセブンとガルド隊長、そして縛られた兵士たちだけ。

物語の正義を外れた“汚れ仕事”に踏み込もうとするセブンを、隊長が止めるところから新たな緊張が始まる。

「セブン。お前がやろうとしていることは、近衛兵の権限を超えている。」


 何をしでかすかわからない俺を隊長は牽制する。


「尋問は司法官の仕事だ。拷問は王国法で禁じられている。そして――」


 隊長は縛られた兵士たちを一瞥し、再びあなたへ視線を戻す。


「お前が“汚れ仕事”を背負う必要はない。それをやるのは、俺の役目だ。」


 兵士たちは怯え、セブンと隊長のやり取りを固唾を飲んで見守っている。

 隊長はセブンの肩に手を置いた。


「お前は“証人”だ。そして“近衛兵”だ。だから――自分を汚すな。」


 隊長の声は、責めるものではなく、守ろうとする者の声だった。


「ここから先は、俺がやる。――お前は外に出ろ。」


 控えの間の空気が張りつめる。


「隊長…ガルド隊長が変わりに拷問や尋問をしたとしても、それは近衛兵隊長としての権限を超えています。隊長がいなくなっては誰が近衛兵をまとめるんですか。」


 そう言って俺は続ける。


「つまり、優しく話を聞けばいいだけですよね?」


 チラッと兵たちを見て恐怖を演出する。


「お前が言っていることは正しい。俺が拷問や尋問をすれば、確かに権限を超える。」


「だがな。」


 隊長は縛られた兵士たちに視線を向ける。


「“恐怖で聞き出す”のも、近衛兵の仕事ではない。それは司法官の領分だ。」


 ガルド隊長の言動には”物語”が必死にルートを戻そうとしているのを感じる。

 という事は俺はこのままでいい、突き進むべきということだ。


「そうだ…まずは拘束を解きましょう…。」


 ゆっくりと…過剰に…恐怖を煽る言い方を演出する。


「話しを聞くだけですし、拘束はいりませんよね。」


 俺は二人の拘束を解きながら言う。


「それにここにいるのは”あの”近衛兵隊長ガルド。

『証拠隠滅のガルド』と恐れられた隊長がいれば、この方達は逃げるという愚かな選択をしないでしょう。」


 もちろん、そんな二つ名は存在しない。

 二人に名前を聞く。


「所属と名前は?」


 二人の兵士は“自由になったはずなのに逃げられない”という

 極限の緊張に包まれている。

『証拠隠滅のガルド』その一言が、彼らの背筋を氷のように固めている。


 ガルド隊長は横で腕を組み、何も言わない。

 否定も肯定もせず、ただ“そう思わせておく”という沈黙。


「…聞こえなかったか?…所属と名前は?」


 兵士たちは互いに目を合わせ、どちらが先に名乗るかで一瞬の押し問答が起きる。

 だが、片方が耐えきれず口を開いた。


「…近衛第二分隊…兵士、ロルフ・ハーゲン…です。」


 声は震え、喉が乾いているのが分かる。

 もう一人も続く。


「同じく…第二分隊所属…兵士、ダリオ・フェン。」


 二人とも、“嘘をつけば即座に処分される”と理解している声だった。

 兵士達は次の言葉を待ちながら、硬直している。


 ここは”暴力になんの抵抗もない”、”血に飢え狂ったキャラ”で行く。

 このままの勢いで。


 俺は二人の背後に回り、肩に手を置いた。

 顔を寄せ、低い声で囁く。


「生きてぇ…帰りたいよなぁ?」


 多分必要ないが演出だ。

 控えの間の空気が、一瞬で凍りつく。


 背後から肩を抱き、目を見開き

 ヒュゥと狂気じみた吐息をかける――


 二人の兵士は、息を吸い込んだまま硬直した。

 逃げることも、叫ぶこともできない。


 その“演出”が最高潮に達したところで、ガルド隊長が静かに動いた。

 あなたの背後に立ち、低く言う。


「セブン…や、やりすぎるな。」


 俺は狂ったキャラを辞めない。

 心配になった隊長が二人を落ち着けようとする。


「安心しろ。こいつはお前たちを傷つけるつもりはない。」


 兵士たちは一瞬だけ安堵の息を漏らす。

 だが、隊長は続けた。


「だが――嘘をつけば、そのときは俺が相手をする。」


 その言葉は、狂気の演出よりもずっと静かで、ずっと重かった。

 二人の兵士は“血に飢えた狂人”と『証拠隠滅のガルド』で逃げ場がない。


 俺は平坦な日常にこんな楽しいシーンなどそうそう無いので、この際楽しむことにした。


 逃げる自由はある。

 だが逃げたら終わる。

 その理解が、彼らの足を床に縫い付けている。


「まず確認だぁ…お前たちはぁ…拘束されているかぁ?」


 二人の兵士は、問いかけを聞いた瞬間「罠に気づいた小動物」のように硬直した。

 拘束は解かれている。


 セブンの声は静かだが、その静けさが逆に恐怖を増幅させていた。

 ロルフが、喉を鳴らしながら答える。


「…い、いえ…拘束は…されておりません…。」


 ダリオも続く。


「は、はい…自由です…。」


 二人とも、“自由であることが逆に恐ろしい”という顔をしている。

 ガルド隊長は腕を組んだまま。


「なぁ…脅されているかぁ?」


 二人の兵士は、聞いた瞬間、また硬直する。

 低く静かで、しかし“逃げ道を塞ぐ”ような圧をかける。

 ロルフが、喉を鳴らしながら答える。


「…い、いえ…脅されてなど…おりません…。」


 声は震え、目はあなたと隊長の間を泳いでいる。

 ダリオも続く。


「は、はい…誰にも…脅されていません…。」


 二人とも、“答えを間違えば終わる”と理解している声だった。

 ガルド隊長は腕を組んだままだ。



『……ウウウ……ウウウ』

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