第31話【闇の掃除】「ここから先は汚れ仕事だ」――物語の正義をかなぐり捨て、密室で始まる“禁忌の尋問”
【前回までのあらすじ】
王妃前室の警備に強行復帰しようとするセブンは、司法権限を盾にして王道ルートの説得をすべて跳ね返した。
ガルド隊長たちは“証人保護”を理由に必死で止めるが、セブンは逆にその会話を利用して状況を掌握する。
そして――味方が口を滑らせすぎた結果、セブンは「今の会話、全部聞かれてますよ」と“詰み”を宣告する。
「ガルド隊長…今の会話、全部聞かれていますよ。」
セブンの言葉を聞いた瞬間、二人の肩がビクッと跳ねた。
ガルド隊長は、セブンの言葉を聞いて驚いた。
だが、その感情を必死に隠しつつ、ゆっくりと二人の兵士へ視線を向けた。
そして、必死に声を張る。
「お、俺が…き、気づいていないと思ったか?ハハ…」
隊長の乾いた笑い声が広間に響く。
一瞬の静寂のあと、それを無かったことにするかのように喋りだす隊長。
「近衛兵以外は全員疑わしい。ここに立つ理由も、王命の真偽も不明。近衛兵隊長である俺の命令も聞かない…ありえん。」
重要な情報を漏らした失態を取り繕うように、早口でまくし立てる。
二人の兵士は青ざめ、一歩後ずさる。
ライエルが剣の柄に手をかけた。
「おいおい…黙ってるってことは、ヴァルステイン卿との関係を否定できねぇってことか?」
エリシアは怯えたように二人を見つめ、王妃殿下は静かに目を伏せた。
ガルド隊長が口に握った手を当て、咳払いしてから言う。
「お前たち。今ここでの会話はすべて記録される。王国司法官の調査対象だ。」
二人の兵士は震えながら口を開く。
「ち、違います!我々はただ任務を――な、何も知りま…!」
「黙れ。」
隊長の一言で、二人は完全に口を閉ざした。
威厳を取り戻した隊長が続ける。
「セブン。お前がここに立とうとした理由はこれか――“敵の手先”の前にあえて立ち陽動を…。」
流れが変わった。
ここで一気に押す。
「ガルド隊長…私とて無能ではありませんよ。」
俺はニヤリと上目遣いで隊長に目配せする。
そしてライエルに向き直り。
「ライエル近衛兵!この者どもをひっ捕らえよ!」
驚きで抵抗する事を忘れている二人。
俺とライエルであっさりと拘束した。
「ありがとうライエル。お前はこのままこの前室警備の任についてくれ。」
ライエルの目が点になる。
「おい、これからどうするんだセブン?」
「大丈夫だ、ここは任せてくれ。」
「それからエリシア…この先は…見ないほうがいいだろう。王妃殿下とともに殿下の部屋にもどってくれ。」
「この先は…汚れ仕事だ…。」
俺は二人の顔を間近で覗き込む。
兵の顔色が変わった。
「隊長…行きましょう。」
そう言うと俺は二人を後ろから押し、控の間に向かう。
兵は突然の拘束とこの先の不安で抵抗できなかった。
控の間に二人を入れ部屋の中央に押し進める。
後から入ってきたガルド隊長を部屋の中に案内し、扉を締めた。
そして内側から鍵をかける。
ガチャッ…。
誰も音を発しない。
“物語”が追いついていない。
ガルド隊長を見る。
俺が“汚れ仕事”という言葉を口にし、兵士の顔を覗き込んだ瞬間から、隊長の表情は引きつったままだ。
眼は鋭いが、口が半分開いている。
俺が二人の方へ進もうとした瞬間、ガルド隊長に腕を掴まれた。
強くはない。だが、逃れられない力だった。
「セブン。」
隊長の声は低く、“止めなければならない相手に向ける声”だ。
「その先へ進むな。」
ライエルも、エリシアも、王妃妃殿下もいない。
控え間には、縛られた二人の兵士と俺達だけ。
隊長は俺の目をまっすぐに見据えた。
「セブン。お前がやろうとしていることは、近衛兵の権限を超えている。」




