第27話【冤罪の真相】「王妃殿下暗殺未遂事件」――身代わりのモブから、唯一の“生存証拠”へ
【前回までのあらすじ】
無実放免されたセブンは、物語の誘導を嫌って仲間たちを振り切り全力で塔を脱出しようとした。
ガルド隊長・ライエル・エリシア・王妃殿下までもが大混乱で追いかけ、ついにセブンは“王妃の護衛復帰”すら拒否される。
追い詰められたセブンは、王道ルートを粉砕するため「今から黒幕を倒しに行きましょう」と宣言し、第二章が幕を開ける。
「今からヴァルステイン卿を倒しに行きましょう!」
セブンの言葉を、誰一人として理解できずに立ち尽くす4人。
「俺が命を狙われているのは確かでしょうし、受け身でいては不利になります。ここは先手を打って出ましょう。」
俺はそう言うとまた階段を登り始めた。
同意を得る必要はない。どうせ止められるのだ。
それならば勝手に進む他無い。
――この世界は、行動をした者が動かせる。
「おいおいおい待てセブンまて!」
ガルド隊長が追いかけつつ止めようとする。
「どういうことだ、作戦はどうする?手の者が襲ってきたところを捕らえるのだぞ。」
「ここに王国近衛兵が3人います。それに殿下とエリシア
――戦える者が五人。王宮内で動くには、これ以上ない構成でしょう。行きましょう。今すぐに。」
「セブン…わかってるじゃねぇか、俺も剣士としての腕が鳴るぜ。」
ライエル得意げに人差し指を横にして鼻の下をこすった。
「何を言ってるのライエル、作戦はどうするのよ。
相手が打ってきたところを捕らえるから意味があるんじゃないの。」
以外にもライエルが乗り気だ…大丈夫か。
一方でエリシアは冷静に引き留めようとしている。
「セブン。あなたの発想はとても…独創的です。
ですが、ヴァルステイン卿を捕らえるにはもう少し“政治的な手順”が必要なのです。
力押しの討伐隊ではなく、証拠と手続きで追い詰める必要があります。」
王妃殿下は冷静だ…たしかにそうだ。
黒幕がヴァルステインという証言は王妃から得られたとしても、証拠がない。
「お前の気持ちはわかる、だが今はまだ“証拠"が揃いきっていない。
正面から行けば、逆にこちらが罪に問われる。
だからこそ――お前が生きていることが最大の武器なんだ。」
そうか、たしかにそうだ。
確たる証拠がない…ん…証拠?
ヴァルステイン卿は何をしようとして何が証拠になるのか。
俺は”王妃殿下への無礼”という罪で捕らえられただけだ。
何も知らないのに”お前が生きていることが最大の武器”とは。
「えーと…ここまで来てあれなんですけども…。」
また何を言い出すんだお前はという4人の面持ち。
「なぜ俺が生きていることがヴァルステイン卿にとって不利なんでしょう。俺が何らかの証拠を握っていると?」
そんな心当たりは…本当に、何一つない。
「俺は殿下へ無礼を働いたという冤罪で投獄されただけなんですが…。」
ガルド隊長が無言で王妃殿下に目配せする。
目があった殿下が小さく頷いた。
なんだ。
殿下は手慣れた所作でセンスをパッと開き口元を隠す。
それを見たエリシアが殿下の元へ耳を寄せた。
何を話している。俺に聞こえてはまずいことなのか。
そしてエリシアから何かを聞いたライエルが俺に近づく。
「セブン、まずここを出よう。」
さっきまでの4人とはまったく違う空気。
今度は俺がその空気に飲まれ、階段を登っていた。
皆無言のまま長い階段を登りきり、塔の最上階へ辿り着いた。
最上階は連絡通路で城に接続されている。
この階に守衛が常駐し牢獄塔を管理していて、この連絡通路以外に出入り口は無い。
看守の詰め所もここにあり、1時間毎に下層へ巡回に行くのだ。
ガルド隊長が守衛と話し、ライエルが俺を釈放する手続きをしている。
エリシアは殿下の化粧を直していた。
やっとここから出られる。
長いようで短かった気がする。
投獄され1週間ほどだったろうか。
最近は訪問者が目まぐるしかったが…。
しかし今は4人の不穏な空気が気になる。
あれから誰も言葉を交わさずに最上階まで来た。
この先どうなる。
「セブン、手続きは済んだ。皆でここを出ればお前は晴れて自由の身だ。」
だがしかし、そうはいかないのだろう。
ライエルが先導して歩きだし、皆がそれに続く。
「セブン、話がある付いて来てくれ。」
俺は何も言わずに歩きだす。
ここは付いて行くしか無いだろう。とりあえずは牢獄塔を出られた。
通路から見える庭の緑を見ながら大きく息を吸った。
何があろうと近衛兵に復帰する。
その決意は揺るぎないが、この先いったい何が待っているのか。
ライエルが向かっているのは王妃殿下の部屋の方向だった。
だが牢獄で話していたときは近衛兵以外の兵士が部屋を封鎖していたと聞いたが。
「ライエル、まさか王妃殿下の部屋へ向かっているのか?」
ライエルはこちらをチラッと見たが、そのまま歩き続ける。
代わりに王妃殿下が答えた。
「今向かっているのは私の私室、”控の間”。あなたがいつも警備していた私の部屋の前室、その隣りにある部屋です。」
「セブンお前はまだ狙われている立場だ、一度邪魔が入らない場所で皆で話したい。」
「控の間…あの部屋はもう使われていないと聞いていました。施錠されており警備の必要もないと。」
「はい、その通りです。しかしこのようなときのための部屋でもあるのですよ。これでも王妃、自由にできる部屋はいくつかあります。」
ライエルが前室が見える通路の手前で皆を止める。
曲がり角から奥を覗くと例の兵士が見えた。
「あれが…たしかに俺たち近衛兵とは装備が違いますね…。」
「この俺の命令も通用しない。王命であると言って退かんのだ。おそらく彼らはヴァルステイン卿の息がかかった者たちだろう。」
「エリシア、頼む。」
ライエルがそう言うとエリシアが前に出てそのまま兵士の元へ。
エリシアが2人の兵士に話しかけながら王妃の部屋へ入る。
その隙に王妃が鍵を開け、俺達は静かに"控の間"に入った。
中に入ると、正面に窓が一つ。あとは部屋の広さに合わない小さなテーブルが一つだけ。
そのテーブルの上には没収されていた俺の衣服と装備があった。
「セブン、お前の物だ、着替えろ。」
ガルド隊長がそう言うと、ライエルは入口のドアを警戒した。俺は囚人服を脱ぎ、自分の衣服に着替え始める。
「王妃殿下、着替えますのでその…すこし…。」
なにも気にせずこちらを見ていた王妃がハッと気付き後ろを向く。
隊長は俺の着替えを手伝うように装備を手に取る。
「着替えながら聞いてくれ。」
隊長が周囲を気にするように話し始める。
いつになく緊張している声だ。
「セブン。お前が生きていることで証拠になる事件とは…。」
「“王妃殿下暗殺未遂事件”だ。」
『…………………ヴアアアア』




