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『無能力転生』冤罪投獄された近衛兵、一歩も動かず物語を壊す【2/28 完結しました】  作者: らいすクリーム
第2章【王宮陰謀・最短攻略編】

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第26話【先制の宣戦布告】「今から黒幕を倒しに行きましょう」――誘導を嫌う男の、あまりに極端な最短ルート

【前回までのあらすじ】

セブンは無実放免された瞬間、仲間たちの段取りを完全に無視して全力で塔を脱出しようと走り出した。

ガルド隊長・ライエル・エリシア、そして王妃殿下までもが大混乱で追いかける羽目になる。

物語の誘導を拒否したセブンの暴走が、王宮全体を巻き込む新たな騒動の幕を開けようとしていた。

 ――俺はもう、この物語の段取りに従う気はなかった。

 出たばかりの牢を背に、全力で階段へと走り出す。


「おいいいいいいい!!」


 というガルド隊長の声が後ろから聞こえてくるが振り返らない。


 俺は近衛兵セブン。

 ついさっきまで、無実の囚人だった男だ。


 自由。


 布だけの囚人服は軽い。

 素足も程よく地面を掴み、気持ちよく扉が並ぶ牢獄を駆け抜ける。


 王国近衛兵隊長ガルドの重鎧は戦闘にこそ向いているが、

 全力で走る男を捕まえるのには当然適していなかった。


 激しく腕を振りながらガシャガシャと鎧の音を響かせて追いかけてくるガルド隊長。

 顔が紅潮し、額に汗が吹き出している。


「ま…まてセブン…待て待て…。」


 その隊長を追い抜くように軽鎧の青年と侍女が駆けてくる。

 同期のライエル近衛兵と王妃付きの侍女エリシアだ。

 若さあふれる俊敏さであっという間に隊長を追い抜いて、こちらへ向かってくる。


「まてぇ!セブンこらぁ!!」


「話が違うわ!まって!」


 そしてこの中で最も上品な女性。

 出遅れた王妃が、鬼の形相でスカートを捲り上げて追いかけてくる。


 周りの目など気にせず、ドカドカと大股で迫りくる姿。

 昔テレビで見たことがあるオオトカゲのようだ。


 俺は追ってくる者たちを気にもせず、ひたすら階段に向かって走る。


 通路の角を曲がり階段に一歩足をかけようとしたところで、隊長が叫んだ。


「おおおおい待て、勝手に出るな!…ハァハァ。」


 紅潮してた顔はもう紫色に変化しつつある。

 そしてライエルも追いつかないと見るや大声でセブンを引き止める。


「今になって急に出すなその行動力!まてごらぁ!」


 エリシアは半泣きで息切れしている。


「セブン様ぁぁぁ!!まだ危険なんですから戻ってくださいませぇぇ!」


 そう、俺は牢を出ると口封じのため命を狙われるかもしれないのだ。

 冤罪により投獄され、黒幕の計画ではおそらくそのまま処刑される運命だったのだろう。

 それがここに来て正式に牢を出る運びとなり、今は囮として行動している。


 囮となった俺が黒幕”ヴァルステイン卿”の動きを誘発し、隊長とライエルがそれを阻止する作戦だ。


 しかし俺は今、足を止めず、振り返らず階段を駆け上がっている。


 なぜなら…。


 この物語は、俺を“正しいルート”へ導こうとしてくる。

 普通の近衛兵ではいられない、王道の物語へと。


 それに抗うためには、セオリーに背き、ありえない行動を選択していくしか無い。


 俺が普通の近衛兵でいるために、

 普通ではない選択肢で、物語を捻じ曲げていく。


 正式な許可を得て牢獄から出た俺は完全に潔白!無罪!自由!

 護衛を無視して走り出し、振り切ろうとしているが、それも物語の思い通りにさせないためだ。


 もうどうしようもないと踏んだガルド隊長が遠くからセブンに向かって怒鳴った。


「勝手に出たら脱獄になるぞ!!セブン!!」


 涎を垂らし、舌まで伸びたその顔は、真剣なブルドッグそのもの。

 これには流石に足を止めるしか無かった。


「正式に出たはずなのに…ガルド隊長…それは脅迫ですか?」


 ガルド隊長はその一言を聞いた瞬間、完全に固まった。


「いやいやいやいや待て待て待て。ち、違う!!セブン、それは違う!!脅迫なんてしてない!!

 俺はただ“お前が勝手に出たら本当に脱獄扱いになる”と言っただけだ!!」


 声が裏返りそうになっている。


「俺はお前を脅すつもりなど一切ない。ただ“正式な解放”として扱われるためには、

 この牢獄塔を俺たちと一緒に出る必要がある。お前が勝手に出れば、それは“脱獄”として記録されてしまう。それだけだ。」


 追いついたライエルが俺の右腕をガシッと掴み、息を整えながら言う。


「セブン。お前を守るためだ…逃げるな…ハァハァ。」


 流石に息が荒い。エリシアも追いついて俺の左腕を掴んでしゃがみ込む。


 そして王妃殿下が見たこともない恐ろしい顔で向かってくる。


「…セブン近衛兵。」


 ひと目見てわかるブチギレ様だ。

 王妃は捲ったスカートを整えながらゆっくり深呼吸をし…。


 セブンの胸ぐらをつかんだ。


「私の部屋付きの近衛兵ですよね…セブン。王妃から離れるとは何事ですか。」


 言葉自体は丁寧だが、その言い方と胸ぐらをつかんだ拳の圧が凄い。


 物語が俺の暴走に怒ったのだろうか。

 これはまた強制的に王道ルートに戻す力が働くかもしれない。

 だが、あちらがうまく行ってない状況のまま、主導権を握って進めたい。


「わたくしセブン。もとより命懸けで近衛兵という任務に従事しております。

 先行し王妃殿下に迫る危険がないか、調べるつもりでありました。」


 すっとぼけて言う。


「危険が迫るならばそれを排除してみせます。任務に戻してください!

 さぁ王妃殿下の部屋の警護へ私を!ガルド隊長!ご指示を!」


 やっと追いついたガルド隊長。

 その強い声を聞いた瞬間、俺の肩をがっしり掴んで言った。


「お前の忠誠心は、誰よりも強い。それは俺が一番よく知っている。

 だが、今のお前を王妃殿下の部屋に立たせることはできない。」


 反論しようとした瞬間、隊長はさらに強く続ける。


「理由は一つだ。お前は今、王宮で最も狙われている人物だ。王妃殿下の部屋に立てば、

 “王妃とお前を同時に狙う絶好の機会”になる。それは――王妃殿下を危険に晒すことになる。」


 王妃殿下は静かに頷く。


「セブン。あなたの忠誠は本物です。ですが今は、あなたが私のそばに立つことが“私の危険”になるのです。あなたを信じています。だからこそ、今は戻らせません。」


  エリシアが優しく、強く言う。


「セブン様。あなたが王妃殿下を守りたい気持ちは、私たち全員が理解しています。

 ですが今は、あなた自身が守られるべき存在なのです。」


 やはりそう来るか、だがしかし王道ルートであろう見応えのある物語としては…おそらく、

 集団で動いたまま牢を出ようとすると、ヴァルステイン卿の手先が襲ってくる…そんな気がしてはいる。


「あくまでも私を通常の任には戻さないと…わかりました。それならば私にも考えがあります。皆さんお覚悟よろしいでしょうか?」


 それぞれの表情が曇る。


「…嫌な予感しかしない。」

 

「また始まったぞ…。」


「セブン様…?」


 そして王妃殿下は静かに息を整えセブンの言葉を待った。


「今からヴァルステイン卿を倒しに行きましょう!」





『…………ヴ』

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