第25話【全力逃走の凱旋】無実放免、そして即座にプロット破棄。全主要キャラを置き去りにして俺は「職場」へ走る
【前回までのあらすじ】
冤罪で投獄されたセブンは、無罪復職ルートの核心をガルド隊長から聞き出した。
解放の瞬間に囮となる役目を告げられ、味方たちが牢に集結する。
しかしセブンは物語の誘導を疑い、仲間たちの行動そのものに揺さぶりをかけ始める。
「よし、俺は何をすればいいのですか。ここから出た後の話を教えてください。」
ガルド隊長は、確信をもって頷いた。
王妃殿下も、ライエルも、エリシアも、
それぞれが緊張と覚悟を帯びた表情であなたを見つめている。
「セブン。ここから出たその瞬間が、作戦の開始地点だ。お前がやるべきことはただ歩くこと。 それだけだ。」
まさかのノープランじゃないか。
と突っ込みたくなる気持ちを抑え続きを聞く。
「牢の扉が開いた瞬間、ヴァルステイン卿の側近たちは必ず動く。お前が無実として解放されると知れば、
あいつらは“証拠を持つお前”を消しに来る。その動きを俺たちが逆手に取る。」
囮が全然安全じゃない…話と違う。
消しに来るって言ってしまってるじゃないか。
「セブン。あなたが歩き出すと同時に、私は国王陛下に“解放の正式命令”を届けます。その瞬間、ヴァルステイン卿は焦り、必ず尻尾を出すでしょう。」
じゃあなぜ王の近くや王宮ではなくここにいるんだ。
ここから王宮まで、それを届けるつもりなんだろうが…大丈夫か。
「お前の周囲は俺と隊長が固める。影からの攻撃も、刺客も、何が来ても絶対に通さない。
お前はただ、“解放された近衛兵として歩く”だけでいい。」
そりゃ解放された近衛兵として歩くだろうけども。
エリシアが最後のピースを語る。
「そしてその裏で、私がヴァルステイン卿の動きを“記録”します。」
”その裏”なら天井裏からこっそり来いよ。全員集まってるよここ。
俺の言葉は虚しく脳内に響くだけ。このツッコミは誰にも届かない。
「セブン。これは“最善手”じゃない。だが、いまこの盤面で取れる“唯一の手”だ。」
ガルド隊長は隊長なりに考えたプランなんだろう。
不安でしかないのだが。
「よし、わかった。ヴァルステイン卿の手先、刺客には十分注意しないといけない。
そこで提案なんだが、奴らの狙いは俺だ。
つまり俺こそが最も重要で絶対に死んではいけない人物なわけだ。」
俺はライエルを指差す。
「と言う事で、俺とライエルの服を入れ替えよう。
見た目も背格好もほぼ同じで違うのは俺より少しイケメンという事だけ。」
それぞれの反応など気にせず俺は続ける。
「これで敵の目を欺ける。囮として襲われるのがライエルなら、万が一、襲われて死んだとしても、
“俺が生きている”限り、この国はまだ詰まない。それが作戦っていうものではないでしょうか?」
ライエルは「は?」と声に出し、
エリシアは「えっ!?」と目を丸くし、
王妃殿下は口元に手を当てて固まった。
そして。
ガルド隊長が止める。
「セブン。その案は…その、却下だ。」
「おい待てセブン!なんで俺が死ぬ前提なんだよ!しかも“見た目ほぼ同じ”って言うな!俺の方がだいぶイケメンだ!」
これだからイケメンは困る。
エリシアが何故かライエルを見て頬を赤くする。
「セブン様、そんな…!ライエルを囮にするなんて、絶対に許されません!」
それは作戦上の判断じゃなく、完全に個人の都合ではないのか…。
「それに、敵は“あなたの気配”を追っています。服を入れ替えた程度では欺けません。」
王妃殿下も続く。
「セブン。あなたの覚悟は尊いものです。ですが他者を犠牲にする覚悟は、あなたの本質ではありません。あなたは、そんな選択をする人ではない。」
その言葉は、“人としての誇り”を信じる者の声だった。
ガルド隊長がまとめにかかる。
「お前は“お前自身”として歩け。それでいい。それがいい。
お前が堂々と歩くことで、ヴァルステイン卿の計画は崩れる。
服を入れ替える必要はない。誰かを犠牲にする必要もない。俺たちが守る。それで十分だ。」
隊長もライエルもその腕に自身があるのはわかる。
俺より腕が立つのも、知っている。
「隊長とライエルが守って、誰も犠牲にならないなら…入れ替わっても問題ないんじゃ?
あ、そうか、気配で悟られるというわけか…それなら仕方ない。残念ながらこの案はだめか。」
しかし、危険があるということをわかっていて命をあずけるのは…。
大丈夫大丈夫と言っておいて本当に大丈夫な作戦をこの物語が許すだろうか?
「それでは一旦整理しましょう。
私は殿下が国王陛下へ提出する“解放の正式命令”で無実が担保されており、
隊長が持つ権限と鍵により正式にこの牢から出る事ができるということですよね?」
ガルド隊長は、俺の確認を聞いた瞬間大きく頷いた。
「わかりました。では私は、冤罪…無実の罪で投獄されていたと証明されるわけですね。
では、正式に鍵を開けてもらいこの牢の外にでます。」
「…セブン。よくここまで耐えた。今この瞬間をもってお前は無実として解放される。 これは王家の正式な意思だ。」
金属の鍵が錠前に差し込まれ、静かに回されるはずだったが…。
鍵が壊れていて、そもそも差し込めなかった。
何かに気づいたようにライエルとエリシアが顔を見合わせる。
「隊長!その鍵…壊れてて普通に扉が開いちゃう状態なんですよ。」
エリシアが鉄扉をそっと開ける。
「ほら…。」
ギーッと鉄扉の開く乾いた音が牢獄に響いた。
鍵を仰々しく構えたガルド隊長の顔が真っ赤になる。
そそくさと鍵をしまった。
「…この塔、老朽化がひどくてな。」
何者かに壊されたと知らない隊長が少し可哀想だった。
これは報告してないライエル…お前が悪いぞ。
その隣、王妃殿下が美しい所作で宣言する。
「セブン近衛兵、あなたは王妃の名において、無実と認められました。この扉が開くことは、あなたの名誉の回復を意味します。出なさい。」
揺るぎない王家の権威。
鉄扉がゆっくりと押し開かれ、
冷たい牢の空気が外の空気と混ざり合う。
ガルド隊長が一歩下がり、セブンに道を開ける。
「王妃殿下、ガルド隊長ありがとうございます。ライエルもエリシアも協力ありがとう。」
俺はついにこの牢の外へ歩み出た。
短いようだったが濃密な時間だった…この人たちのせいで。
よし、もう無実が証明されてここを出るんだ。
何も知らないフリをして職務に戻ろう。
「では隊長!この塔から出て私セブン近衛兵の職務である王妃殿下の部屋の警護に戻ります。」
俺は王妃に深く一礼し、ガルド隊長に敬礼。
そして…。
駆け足で階段を目指した!
――俺はもう、
この物語の段取りに従う気はなかった。
「おいいいいいいい!!」
ガルド隊長が真顔で後ろを追いかけてくる。
後ろをライエルとエリシアが。
そして、その後ろを
出遅れた王妃が鬼の形相でスカートを捲り上げて追いかけてくる!!
『ォヴヴヴヴヴォオオオオオ…』
第1章 忍耐強く読んでいただきありがとうございます。セブンの選択いかがだったでしょうか?この先もっと荒れるのでもしよければブクマしてセブンを応援していただけると”物語”がグヌヌとなると思いますのでよろしくおねがいします_(:3」∠)_




