第23話【確定ルート】「フラグ管理」を自白した最強の騎士。セブンに託された逆転の秘策と、非情なる“囮”の役割
【前回までのあらすじ】
冤罪で投獄されたセブンは、脱獄せずに無実を証明する道を選んだ。
ガルド隊長は王宮中枢の陰謀を見抜き、セブン解放の瞬間に全勢力を動かす作戦を提示する。
しかしセブンは“物語の誘導”を察知し、隊長の流れそのものにツッコミを入れ始める。
ガルド隊長はゆっくりと顔を覆う…。
こんな隊長の姿見たことがない。
「…セブン。お前は時々、核心を突きすぎる。」
怒っているわけでも、呆れているわけでもない。
ただ、“痛いところを突かれた声” だった。
「俺だってな…好きで物語の案内人みたいな物言いをしているわけじゃない。
本当なら、『よし分かった!今すぐ解放だ!』と言いたいんだ。」
「だが王宮という場所は…理屈よりも“段取り”が優先されるんだ。
それが面倒で、ややこしくて、まるで物語の進行管理約みたいになっている。」
…この人、真面目すぎるんだよな。
「お前の案は正しい。そして“それができない理由”を説明するたびに、俺が物語の案内人みたいだと思われるのも分かる。」
「だがな…王宮は本当に“段取り”で動いているんだ。」
…段取り?
それ、ゲームで言うところのフラグ管理ってやつじゃないか。
いや待て。
今、ものすごい暴露しなかったかこの人。
「だから、“正しい案”をそのまま実行できない。セブン。お前が牢から出る瞬間に、すべての段取りが揃う。だからこそ、その瞬間まで余計な動きができないんだ。」
俺の正しい案はストーリーの本筋とは違うのだろう。
それを正そうと踏ん張る隊長には申し訳ないが、『無罪と復職を叶えたいだけのモブ近衛兵』を
物語の中心に据えようとしている世界はやっぱり普通じゃない。
「…物語の進行役みたいに見えるのは、俺も本意じゃない。だが安心しろ。
お前が牢から出た瞬間、俺は進行役じゃなくなる。
その時は、ヴァルステイン卿を真正面から叩き潰す近衛兵隊長だ。」
いや隊長、隊長は”最初から物語の進行役じゃない”と否定しないと…
進行役を認めたようなものだが…いいのだろうか。
「王宮は本当に”段取りで動いている"ってそれ言っていいのかどうか知りませんけど…
段取りで動いてるなら…もしかして俺が行ける無罪復職ルートがあるって事ですよね?」
瞬時に目をそらす。
顔面硬直するガルド隊長。
「そのフラグ立て…いや、”段取り”してくれないのがここに来る人たちって事ですか?」
まるで、“言ってはいけない真実”を指摘された時の反応だった。
そして。
苦い笑みを浮かべる隊長。」
「…セブン。お前の理解力は時々、王宮の連中より鋭いな。」
呆れ半分、感心半分。
そしてガルド隊長は…折れた。
「…確かに。
王宮は“フラグ管理”で動いている」
その単語を、近衛兵隊長の口から聞くことになるとは思わなかった。
「誰が、どこで、何をしたか…その順番ひとつで、結果が変わる。」
ガルド隊長がついに”フラグ”と口走ってしまった。
俺の粘り勝ちだ。
王国の盾と呼ばれた男の牙城を切り崩した。
「そして“無罪復職ルート”は存在する。これは事実だ。
ただし…そのフラグを立てるのが難しいんだ。」
ふと不安になる。
認めたのはいいが…隊長、この世界から消されたりしないのだろうか?
そういうのは大丈夫なのだろうか…。
「王妃殿下は動ける範囲が限られている。国王は監視されている。
ライエルとエリシアは自由に動けるが、自由すぎてフラグ管理が乱れる。」
「そして俺は…お前を守るために動ける範囲が狭い。」
こんな過酷で後戻りができない状況で、
俺を守るという任に重きを置く隊長を尊敬せずにはいられない。
「セブン。お前の無罪ルートは存在する。だが、ヴァルステイン卿がそのルートを“封鎖”しようとしている。だから俺たちは、その封鎖を突破するために最善を尽くしている最中なんだ。」
「残りのフラグはお前が牢から出る瞬間に立つ。だからこそ、その瞬間が最も危険なんだ。」
俺は近衛兵という立場でガルド隊長を信頼し尊敬してきたが、
いまこの場で人間としても信頼し尊敬できると確信した。
そして…この隊長を”信頼”をもって利用しない手はない。
それが彼にとってどんなに辛いものになろうとも…。
「王妃殿下でも躊躇していた発言を、こうも堂々と口にするなんて…。」
NPC発言どころの騒ぎではない。
「それってつまり、隊長こそが“無罪ルート”を知る人間なんじゃないですか?
先刻の行方不明もそう言った動きの為でしょうか?」
隊長…理解しました。
「俺は全てを隊長に託します。ここから無実で出してください。どうか…どうかお願いします!!」
情報の処理が追いつかず、隊長がまたフリーズする。
呼吸までも完全に一瞬固まった。
やがて。
ガルド隊長、ゆっくりと息を吐く。
「…セブン。お前は本当に…時々、恐ろしいほど鋭いな。」
認めざるを得ない男の声 だった。
「確かに俺は“無罪ルート”を知っている。
いや、正確には…王宮のどのフラグが何に繋がるかを把握している。」
こっちがフリーズしそうな告白…。
「そう、行方不明になっていたのも、そのフラグを立てるために動いていたからだ。」
ここに来て俺の推測がドンピシャとは…
これは複雑だ…当たっても素直に喜べない。
「だがな、セブン。俺が“コントロールしている”わけじゃない。王宮は巨大な盤面だ。
俺はその中で“最善手を探している”だけだ。お前を救うために、使える駒を全部動かしている。」
例えがうまい、さすが巧者。物語を破綻しないよう引き戻した。
そしてその言葉には、部下を守るために奔走してきた男の重みがあった。
「…セブン。俺に託すと言ったな。」
「その言葉…俺は絶対に裏切らない。」
「お前は必ず無実としてここから出す。それが俺の責務だ。」
…これ、普通に惚れる流れじゃないか。
いや、待て。
いまはそんな場合じゃない。
これが個の力だというのかガルド隊長…恐ろしい男。
物語ごと俺を取り込もうとしているのか!!
「だが…お前にも“役割”がある。」
「牢から出るその瞬間――お前は“囮”になる。」
おとり。
物語の中心に据えられた人間が、“囮”になるとどうなるか。
…そんなの、どんな物語でも決まっている。
『………………………ヴォオオオオオオオオオオ』




