第17話【物語への反逆】開いた扉と天井の道。正規ルートを完全拒否し、一歩も動かず「勝利」を掴む決意
1人牢獄で考える
一人になったところで、冷静に一度考えてみる。
俺は冤罪で捕まった。
そして今、この牢獄にいる。
鍵は壊され、扉は開く状態だ。
天井には、ライエルが見つけた脱出ルートもある。
外へ出るだけなら、たぶん簡単だ。
だが、俺の目標はそこじゃない。
無罪を証明してここから解放され、近衛兵に復職し、今まで通りの生活に戻る。
それだけだ。
脱獄なんてしてしまえば、それこそ本当に罪人になる。
努力して積み上げてきたものが、全部無駄になる。
だから俺は、ここから出ない。
俺に会いに来た四人
ライエル、エリシア、王妃殿下、ガルド隊長。
この四人は、俺の無実を晴らすと約束して、それぞれの立場で動いてくれている。
黒幕はヴァルステイン卿らしい。
だが、「影」と呼ばれる存在の正体だけは、まだ分からない。
…それよりも、もっと気になることがある。
この物語そのものだ。
ここまでの流れを見る限り、どうやら俺の行動は、ある方向へ誘導されている。
たぶん――
『牢獄から脱出して王宮の腐敗を明らかにし、黒幕であるヴァルステイン卿とその関係者を捕らえる、あるいは成敗する』
それが、この物語の正規ルートなんだろう。
このルートから外れようとすると、登場人物たちは決まって、もっともらしい理由を並べて俺を止めにくる。
だから俺は、
「鍵が開いていても扉から出ない」
「天井から仲間が来ても一緒に逃げない」
そんな模範的な囚人を演じている。
小さな揺さぶりでは、世界は動かない。
ライエルとエリシアに「お前ら付き合ってる?」と聞いても、何も変わらなかった。
だが、王妃殿下に「NPCみたい」と言った時、殿下はその言葉を理解しているように見えた。
この世界は、何かにコントロールされているのかもしれない。
ガルド隊長に向かって「生きる!」と言った時には、物語が前に進む手応えすらあった。
…やっぱり、ある。
各登場人物は、俺に特定の行動を取らせようとしてくる。
それが、正規ルートの方向なんだろう。
だが俺は、それに乗らない。
無罪と復職。
それ以外の結末はいらない。
正規ルートに戻す力があるとしても、それに従う義理はない。
ヒロイックファンタジーは、チート能力持ちの主人公に任せておけばいい。
俺はただ転生しただけの、普通の人間だ。
何の能力もない。努力でここまでやってきただけの、ただの人だ。
それを無駄にして、罪人として物語を終わらせる気はない。
方針は変えない。
このままの俺で、訪ねてくる連中を論理でねじ伏せて、この物語を、俺の望むゴールへ引きずっていく。
…多少の修正は、大きな流れで戻されるみたいだけどな。
それでもこの物語は、俺の人生だ。
誰かに決められる筋書きなんて、受け入れてやる義理はない。
静かに、しかし確実に。
この物語を、力ずくで、ねじ伏せてやる。
あとがき
主人公 七海 歩真面目な好青年、努力の人です
あなたとおなじです!ここまで読んでいただきありがとうございます!




