表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ近衛兵の俺が冤罪で投獄されたが、物語のど真ん中に据えられている?  作者: らいすクリーム
第1章【冤罪牢獄編 】牢獄塔から出る術はあるのか

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/38

第13話【英雄役は俺以外にどうぞ】

男くさい男、ガルド隊長がまた牢獄の空気を変える

「王妃殿下はこうおっしゃいました。

”セブン、黒幕は王の側近長、ヴァルステイン卿よ。 王妃である私を監視し、あなたを投獄させ、

王の命令を偽造しているのは…あの男。”と…!!」


「…セブン。今…なんと言った?」


声が、わずかに震えていた。それは怒りでも動揺でもなく

触れてはいけない真実に触れてしまった人間の、乾いた響きだった。


隊長は鉄扉に手をつき、深く息を吐く。


「王妃殿下が…その名を…?」


隊長の反応は“怒り”ではなく恐怖。


「ヴァルステイン卿は王の側近長…王命の代行権を持つ男…王宮の半分を掌握している権力者…。

その男を“黒幕”と断言したのか、殿下が。」


これは、王妃が軽々しく口にしていい名前ではない。ましてや牢獄で、近衛兵に向かってなど。


「セブン…それは王宮の根幹を揺るがす“禁句”だ。その名を口にしただけで、消される者もいる。」


「ましてや王妃殿下がそれを言ったとなれば…。お前、殿下に何をした?…いや、違うな。

お前が殿下を動かしたんじゃない。殿下が“お前にだけ”真実を告げたんだ。」


隊長は、真剣だ。


「セブン。これはもう“ただの冤罪事件”ではない。王宮の中枢が腐っている証拠だ。

お前は今日から“囚人”ではない。私の“協力者”だ。」


やっと俺の冤罪が晴れそうだ。

前向きに解決してくれそうな協力者が隊長とは心強い。

ここは一気に畳みかけるしかない。


「このように私はただ巻き込まれただけでして、王妃も私の無実を知っていますし。

協力するというよりも、囚われの身の私以外の者でどうかこの事件というか、

この陰謀を何とか解決していただけませんでしょうか?」


隊長の口からため息とともにヒュゥと魂が抜けるような音がした。

”この男は本気で言っているのか…”という疲労の吐息。


「お前は“巻き込まれただけ”と言うがな…。」


「巻き込まれただけの近衛兵に、王妃殿下が黒幕の名を告げると思うか?」


ひと呼吸。


「巻き込まれただけの男のために、あのお方が命を賭して牢に来ると思うか?」


もう一拍。


「そして…そんな男に、私がここまで本気になると思うか?」


ガルドは指を下ろし、あなたの目をじっと見つめる。


「お前は“巻き込まれただけ”では済まない位置にいる。

お前が“関わりたくない”と言うのは分かる。普通の兵なら当然だ。」


「だがな…この牢にいる時点で、もう普通ではいられん。それが現実だ。」


隊長は優しさも見せる。


「だが、お前に無理をさせるつもりはない。

お前が望むなら、私が動く。王妃殿下も動くだろう。」


「ただし、お前が何もしないままでは、守りきれん。それが一番の問題だ。そしてお前は“鍵”なんだ。

望もうが望むまいが、王妃殿下がそう判断した時点で、もう逃げ場はない。」


静かに続ける。


「だから…“協力しろ”とは言わん。ただ、生きる意思だけは見せてくれ。 それがあれば、あとは俺たちが動く。」


…ああ、やっぱりだ。


俺を「普通の兵士」として見ていない。


この人も、王妃と同じ側…。

俺を、物語の上に引き戻そうとしている。


だが俺は…屈しない。


今まで何度となく、無駄に長い説明を聞かされて、

"で、お前はどうする?"って顔をされてきた。


ここは一度、乗ってみるのはどうだろうか?


「ガルド隊長、ここで私が”生きるために、この陰謀を暴くために!脱獄します!!”

とか言うと物語が前進したりしますか?」


ガルドは“物語構造を理解してしまった兵士”を前にしたベテランのような表情だ。


「お前、最近どうも“物語の外側”を意識しすぎていないか?

だが…正直に言おう。その台詞を言った瞬間、物語が前進する可能性は高い。」


ああ、言ってしまった。


この人も、王妃と同じ側だ。


「だがな。」


隊長は鉄扉をコンコンと軽く叩く。


「“脱獄します”と言った瞬間、物語が前進するのは確かだが…お前の身が前進に耐えられるかは別問題だ。」


耐えられるか?俺の身が?


これはつまり“進行フラグは立つ”が、危険なことが起きるもしくは死ぬ可能性もあるということか?


…危険、か。


さっきから隊長の言葉の端々に、

"進めば何か起きる"と言っている響きが混じっている。


…きっと、そっちのほうが「盛り上がる」んだろうな。


だが、これは譲れない。

俺は無実を証明し正式な手続きをもってここを出る。

そして復職するのだ。


「お前は“巻き込まれたくない”と言いながら、こういう台詞を言うあたり…結局、巻き込まれる運命なんだろう。」


「だが、もし本当にその前に進む台詞を言うなら…俺は全力でサポートする。王妃殿下も、きっと動く。」


「物語を前に進めたいなら言えばいい、でなければ言わなければいい。

どちらを選んでも、俺はお前を見捨てん。」


…やっぱりだ。


長い台詞の最後には”こっちのほうへ進みなさいよ”と

誘導しつつ俺に選択を迫ってくる。


「わかりました…では私の提案を…」


俺のスタンスは変わらない。


「私より上の立場におられるガルド隊長が陰謀の黒幕を知ったわけですし、王妃殿下と協力してこの件をうまく解決するというのが最善なのではないでしょうか?」


「私はこの通り身動きが取れないわけですし。」


そして鬱憤晴らしに皮肉をひとさじ。


「どうせ牢の中です。三食と、昼寝と、二度寝くらいは保証されてますから。」

…英雄役は、他の人にどうぞ。」


あとがき

ヴァルステイン卿…あなたの想像通りの人物ですよ…きっと

その想像力…分けてください、読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ