第11話【では、ご退場ください】
物語の始まりとは空気が入れ替わる
「殿下!お気を確かに!!言動がまたNPCのようになっておられます!!」
王妃殿下はビクッと肩を震わせた。
この指摘は、王宮の礼儀作法も、物語の空気も一気に吹き飛ばす。
「あなた…また私をNPC扱いして…?」
“図星を突かれた人の声”だ。
殿下は震える手を手で押さえ、深呼吸する。
「お気を確かに…と言われても…あなたがそう言うたびに、私…自分の言動を振り返ってしまうのよ!
そんな…王妃がNPCみたいだなんて…そんなこと…!」
完全に動揺しているが王妃は社交で鍛えた演技力で立て直す。
姿勢を正し、気品を取り戻そうとする。
「…私は王妃。その様な者ではない。物語をレールに戻そうとしているわけでもない。」
と言いながら、また同じような“運命を選べ”系の雰囲気を出し始める。
…ああ、これ、また同じ流れになるやつだ。
ここは一度理解を示す必要があるだろう。
「でも殿下はどうしても“王妃としての役割”に戻ろうとしてしまうのですよね。」
「え!?…ち、違うわセブン。私、あなたに選択を押しつけたりしたいわけじゃなくて…その…つい…王妃としての“台詞回し”が…でも…あなたの前だと、どうしても格好つけられないのね。」
殿下は頬を赤らめ、視線を逸らす。
…ああ、今のは完全に“人間”だ。
俺は一歩、踏み込むことにした。
「殿下、また幾度もここへいらっしゃる様であればいっそのこと、この牢に一緒に投獄され、ゆっくりお話しませんか?」
王妃殿下も辛いお立場であろう。
「世間から隔離されるというのは、ある意味ホッとするところもあって自分を見つめ直す有意義な時間でもあるんですよ。」
殿下は早い瞬きと二度見。
「今のは聞き違い…?」
と自分に確認するように小さく首を傾げた。
「世間から隔離されて…自分を見つめ直す…有意義な時間…?」
殿下は、王妃としての常識と、言葉の“妙な説得力”の間で揺れていた。
「…そんな誘われ方、初めてよ。」
そういう理解で切り返したか…なかなかに手強い。
「あなた本当に“ただの近衛兵”なの?それとも私を困らせる天才なの?」
そして殿下は、提案を真剣に考え始める。
鉄扉に寄りかかり、まるで自分の心の奥を覗き込むように呟く。
「確かに。私はずっと監視され、誰も信じられず、何も言えず…そんな日々だった。
あなたの言う通り…牢に入る方が、よほど自由で有意義かもしれないわね。」
殿下は、天井を見て続ける。
「でも私がここに入った瞬間、王宮は“王妃失踪”として大騒ぎになる。そして…あなたは“誘拐犯”にされる。」
殿下は小さく微笑む。
「それでも、私と一緒に過ごしたいの?」
言いたいことはわかるが、何か飛躍している感じがする。
どうしても俺に選択肢を迫る展開になっている。
「王妃殿下…殿下がもしなんらかの罪で投獄されたとして、なぜ今現在、投獄されている私が誘拐犯にされるのかが理解できないのですが…。」
純粋な論理の穴を突く。
「…言われてみれば…そうね。」
殿下は眉を寄せ、鉄扉に手を当てたまま考え込む。
「あなたは今、牢にいる。私が後から投獄されたとして…どうしてあなたが“誘拐犯”になるのか…。
…確かに…筋が通らないわね…?」
殿下は、混乱しロジックの崩壊に気づく。
俺の言葉を反芻しながら、まるで自分の“台本”を見直すように呟く。
「私が牢に入る
→あなたが誘拐犯にされる
→王宮大騒ぎ
→あなた逃亡
→物語が動く」
殿下はハッと目を見開く。
「…待って。」
殿下は、そこで言葉を止めた。
「これ…完全に“物語の都合”じゃない…?」
やっと自覚した様だ。
「セブン。あなたの言う通りよ。
私が投獄されたとして、あなたが誘拐犯にされる理由はどこにもない。」
殿下は小さくため息をつく。
「…私、また“物語進行のための理屈”を言ってしまったのね。あなた、本当に物語の穴を見つけるのが上手ね。」
王妃殿下は“物語の都合”を自覚し始めている。
ここは俺が楽にしてあげたほうがいいのかもしれない。
「では、恐れながら…殿下、
物語の進行上そろそろ”時間”かと思いますので…
『誰か来るわ!』など、お好きな台詞でこの場を離れてください。」
王妃殿下はフリーズした。
お構いなしに俺は続ける。
「都合よくわたくしめと近い距離の牢に投獄されることを願っております。」
王宮の陰謀も一見重厚そうで薄い物語も
繰り返されたこの牢の空気の表現もすべて吹き飛ばす。
あとがき
王妃殿下はスリムな体型ですが甘いものが大好きです
読んでいただいてるあなたもスイーツすきですよね!ありがとうございます!




