表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ近衛兵の俺が冤罪で投獄されたが、物語のど真ん中に据えられている?  作者: らいすクリーム
第1章【冤罪牢獄編 】〜段取り通りに堕ちていく

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/26

第10話【殿下!お気を確かに!】

王妃殿下の気品に満たされた牢獄内の空気

ひんやりとしているのに温かみがある

殿下は、背筋を伸ばして立っていた。


『王命すら破る覚悟』


その目には、もう迷いがなかった。


小窓越しに、まっすぐこちらを見据え、俺の言葉を待っている。


しかし俺の考えを覆すほどのものではない。

王妃殿下、お覚悟はよろしいか。


「王妃殿下、お気持ちはわかりますし、努力なさってるのも分かります。

ですが…殿下は“役を演じ直そう”としているだけに見えます。」


殿下の”ウグッ”という喉の音が聞こえる。


「NPCではないということを証明するというならば、殿下ご自身の考えをただ述べるのではなく…


例えば”一緒に投獄されてしまう”とか、後々明らかになるであろう”黒幕をバラしてしまう”とか、そのくらいのものが欲しいところでございます。」


大丈夫だろうか。俺は殿下より自分自身の心配をした。

この要求は王宮どころか、この世界そのものに喧嘩を売るレベルの無茶ぶりだ。


だが殿下は逃げなかった。

むしろ、言葉を真正面から受け止めた気配がある。


そして。


「…セブン。あなた…本当に…私にそれを求めているのね?」


殿下は一瞬、言葉に詰まった。

困惑と、照れが見えた。


「一緒に投獄とか…黒幕を今ここで暴露とか…そんな…王妃がしてはいけないことを…?」


なぜちょっと照れた…。


殿下は腰に手を当て仁王立ちし、小窓からセブンをじっと見つめる。

少しずつ開き直ってきたのだろうか。


「…あなた、私をNPC扱いした上に、今度は“物語の枠を壊せ”と言うのね…?」


その声は、呆れと、ほんの少しの笑い。

殿下は、静かに息を吸う。


「…いいわ。」


その一言で、空気が変わった。


殿下の声から、いつもの硬さが消えていた。

それは王妃の声ではなく、ひとりの人間のそれだった。


殿下は周囲を確認し、鉄扉の小窓に再び顔を寄せる。


そして、王妃として絶対に言ってはならない言葉を、あなたにだけ囁いた。


「セブン…よく聞いて…黒幕は」


殿下は、ほんの一瞬だけ目を伏せた。


「黒幕は…王の側近長、ヴァルステイン卿よ。」


俺の喉が、ひくりと鳴った。

その名前を、殿下の口から聞くとは思っていなかった。


「王妃である私を監視し、あなたを投獄させ、王の命令を偽造しているのは…あの男。」


俺は思わず殿下を見上げる。


殿下はあえて強気な表情を作って続けた。


「これで…NPC扱いは撤回してくれるかしら?」


その声にはほんの少しの意地。

そして殿下は、さらに踏み込む。


「それと…あなたが望むなら…私も一緒に投獄されてあげる。 その方が、あなたは安心するのでしょう?」


強気に声を張りながらも。

鉄扉の向こうで、殿下の指が震えていた。

決意の震えだ。


「どう?セブン近衛兵これでもまだ私が物語をレールに戻そうとしているNPCに見える?」


殿下は、確かに一線を越えた。

…だが、俺にとっては、むしろ都合がいい。


「殿下、やはり殿下はまごうことなき王妃殿下にあらせられます。

大変重要な情報、誠にありがとうございます。

では、さっそくその事実を公にし私をここから出してください。」


そして返答を聞かず続ける。


「それが一番"普通"の事です。何故そこまで知っていて

ここに来てただの近衛兵と話をしてるんですか。」


その言葉は、王妃という立場にとって“最も痛いところ”を突いていた。


そして、殿下はゆっくりと目を閉じた。

まるで覚悟を固めるように。


やがて。


「あなたの言う通りよ。

普通なら、私は真実を公にし、あなたを解放し、

王宮の腐敗を正すべき立場にある。」


その声は、これまでで一番“人間らしい”揺らぎを含んでいた。

殿下は鉄扉に手を添え、指先が白くなるほど力を込める。


「でも…“普通”が通じる状況ではないの。」


殿下は、あなたの目をまっすぐに見つめなおす。


「ヴァルステイン卿は、王の側近長でありながら…王宮の半分以上の権限を握っている。

侍女、侍医、近衛の一部、文官、書記…彼の手の者が、王宮の至るところにいる。」


静かに告げる。


「私が真実を公にした瞬間、私は“反逆者”として処分される。 たとえ王妃であっても…です。その危険を冒してまでもここへ来たということです。」


殿下の声は、驚くほど落ち着いていた。

まっすぐに通るその声が、冗談ではないと告げていた。


そして鉄扉へ一歩近づく。


「…あなたは“ただの近衛兵”ではないわ。」


その言葉は肩書きではなく、“セブンという人物”を指していた。


「あなたは誰の派閥にも属さず、誰にも媚びず、誰にも利用されない。だからこそ、だからこそ…あなたにしか頼れないの。」


ほんの少しだけ声を落とす。そして決意をもって話し出す。


「私があなたをここから出すためには、あなた自身が“動く意思”を示さなければならない。そうでなければ、私が動いた瞬間にあなたごと消される。」


「私は…あなたを守りたい。でも、あなたを守るためには…あなたが生きる意思を示す必要があるの。」


「だから私はここに来た。あなたに“選ばせるため”に。」


殿下…


やはりあなたは…


俺はこう答えられずにはいられなかった。


「殿下!お気を確かに!!言動がまたNPCのようになっておられます!!」


その瞬間、殿下の目が、ほんのわずかに見開かれた。

あとがき

王妃殿下は愛されいじられキャラ

性格は可愛いので読んでくれてるあなたのようです!感謝!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ