第23話
門兵に招待状を見せ、門をくぐると色とりどりの花が咲き誇る、左右対称に綺麗に整備された庭園が城の入口まで広がっていた。
「わぁ、綺麗ね~」
「そうだね」
森では見られないような珍しい花々が美しく咲き誇っているのは、庭師によって丁寧に手入れされているからなのだろう。
「あっ」
庭園を少し歩くと、城の入口が見えてきた。
城の入口には、城の使用人たちが左右に並んで立っている。
城の入口に近付くと、使用人たちが一斉に頭を下げた。
端に一人、燕尾服を着た男性が頭を上げ、
「恐れ入ります。招待状を拝見させていただきます。」と柔らかな笑みを浮かべた。
ルルカが招待状を見せると、燕尾服を着た男性の目がみるみる見開き、バッとルルカとディオを交互に見つめた。
「貴女方がディアンヌお嬢様の命の恩人なのですね・・・!」
招待状を確認した男性の瞳には涙が浮かび、頭を下げていた使用人たちもざわざわとその言葉に驚いたように頭を上げルルカとディオを見つめた。
「貴女方が・・・!」「ありがとうございます!」
綺麗に整列していた使用人たちがわらわらとルルカとディオを取り囲みそれぞれが目を潤ませながら感謝の言葉を次々に浴びせてきた。
「えっと・・・」
ルルカもディオも突然の歓迎にどうしたらいいのか焦っていると
「入口で何を騒いでいるのですか」凛とした女性の声がスッと通り、使用人たちはハッと気を取り戻しまた整列し直した。
「奥様!」燕尾服の男性が、声の主に向かって頭を下げた。
声の主は、優しい面持ちの、ルルカとはまた違った分類の美しさを持つ綺麗な女性だった。大きなお腹を大事そうに支えるのを見るに、どうやら身重のようだ。
「奥様、こちらがディアンヌお嬢様の恩人の、ルルカ・ブレイク様とディオール・ブレイク御子息でいらっしゃいます。」
「まぁ・・・!」
燕尾服の男性がルルカとディオを紹介すると、奥様と呼ばれた女性は口を押さえ、ツウッと涙を零した。
女性はお腹を支えながらゆっくりとルルカとディオに近付くと、二人の手を取って、
「娘の命を救っていただき、本当にありがとうございます。御礼を申し上げるのが遅くなってしまい、大変失礼いたしました。わたくしは、ナキュアス・ヒスタチアでございます。」
「ヒスタチア夫人でいらっしゃいましたか。この度はご招待いただきありがとうございます。お嬢様の件も、わたくし共の薬がお役に立てたのなら身に余る光栄でございます。」
おお・・・母さん、ちゃんと挨拶できるんだな・・・
ディオが失礼な考えを浮かべる程、普段浮かれお花畑の性格からは想像できない程、ルルカはまるで貴族のような振る舞いを見せた。
「こちらはわたくしの息子のディオールでございます。エリクサーの材料もこの子が見つけたものでございます。」
急に紹介されて、焦った。貴族の作法もわからないのに。
「ディ、ディオール・ブレイグと申します。本日はお招きいただきありがとうございます。お嬢様もご回復されたようで何よりでございます。」
こんなんでいいのか~?
冷や汗が吹き出そうだが笑顔は絶やさないように努めた。
「そんなに畏まらないでくださいな。本日は貴女方への感謝の為の席なのですから。どうぞ普段通りに。」
ナキュアスはふふっと微笑むと、
「うちの執事と使用人たちが足止めしてしまいましたね。どうぞ中へお入りください。」
城の中のホールへと案内してくれた。
「奥様、私共がご案内いたしますので」とナキュアスの後ろにぴたりとついている侍女であろう中年女性が身重の彼女を心配して声をかけたが、娘の恩人の案内くらいはしたいと柔らかに断った。
ホールの入口には同じく使用人が両脇に立ち、扉の開閉を任せられているようだった。
ナキュアスが見えると、使用人は片腕を胸の前に掲げ、頭を下げた。
「本日の主役のお二人、ルルカ・ブレイグ様とその御子息、ディオール・ブレイグ様です。扉を。」
ホール入口の使用人たちもルルカとディオをはっとした顔で見て、すぐに顔つきを戻し、二人で両開きのドアを開けるとホールに響くような大きな声でルルカとディオの入場を知らせた。
中には既に何十人かの貴族たちが集まり、それぞれが談笑したりしていたが、入場の声を聞いて全員が振り向いた。
既にこのパーティーの主役だと名が知れ渡っているようだった。
ルルカとディオの容貌を見て、感嘆の声を漏らす者も何人かいた。
「パーティーが始まるまで、どうぞごゆっくりなさっていて。」
ナキュアスは柔らかな笑顔でそう告げると、侍女と共にパーティー会場の奥の部屋へと消えていった。
「ふぅ・・・緊張したわね~」
「母さんでも緊張するんだね。俺は冷や汗を掻きそうだったよ・・・」
ナキュアスが席を外すとルルカはいつもの様子でけらけらと笑った。
チラチラと母さんを見る貴族の視線が気になるが、俺がそばに居ることであくまでこぶ付きだという事が分かり近付いては来ないようだ。父さんが居なくてよかった。たぶんあの愛妻家はこの視線を許さないだろう・・・。
すぐ使用人がウェルカムドリンクを持ってやって来てくれ、母さんと二人でゆっくり飲みながら話していると、
カ―――ン!と音がなり、ホールの上の階の扉が開き、背の高い凛々しい顔つきで髭を少し蓄えた、立派なマントを羽織った男性と、その後ろからナキュアスと小さな女の子が手を繋いで入場してきた。




