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第22話


 荷馬車を軽量化したおかげか、いつも片道2時間のところが半分の1時間で着いたことで時間的余裕ができた。

 荷馬車を引く馬たちも何だかいつもより体力が余っているように見える。マックスをはじめ、荷馬車に乗っていた村人たちからも、モンテールに着いた途端に事前に一言言っとけ!と怒られた。


「はは、ごめんごめん・・・」とディオ本人も軽量化の術付与でここまで速度が変わると思っていなかったので苦笑して謝罪した。

「まったくディオったら」ルルカは呆れたように溜め息をついた。

「野菜たちも傷ついてないし、怪我人もいないし、結果オーライということで・・・」はは・・と頭を掻いた。

 村人たちもやんや言っていたが、ディオの言う通り、結果的に早く着けた上にサスペンションを改良したおかげで揺れも軽減され乗り心地も良くなったので、本気でディオを怒る人はいなかった。


「じゃあマックス、行ってくるわね。」

「お貴族様のパーティーとは羨ましいねぇ。しかも主役だろ?」わははっと豪快にマックスは笑ったが、

「でも帰りはどうするんだ?俺たちはいつも通りの時間に帰っちまうが・・・」


「ああ、大丈夫!遅くなったらダーリンが迎えに来てくれるって!」

「ヴォルが?目立つだろうに・・・」と心配していたマックスだが、ディオの頭にくっつくアウルムを見て、なんだかまぁ何とかなるかと思った。


 さあ行くわよ!とスキップしながらモンテールの城下町中央の噴水広場へと向かうルルカを、はいはいとトランクを持って追いかけた。


 噴水広場のアドワード・ブティックの前に着くと、いつもよりも早い時間だったからか、closeの看板が立っていた。だがルルカはそんなことお構いなしに店のドアを開けようとした。

 ガチャガチャっと音がして、「あら?開いてないわ」と当たり前の事をいつもの調子で言う母。


「母さん、closeって書いてあるよ・・・いつもより早く着いたからまだ開店時間じゃないんだよ」

「えー!そんなー!」

 そんなーとそんな事言っても仕方がないだろうと溜め息をついていると、


 カチャリ、と鍵の開く音がして振り返ると、アドワード・ブティックの女店主、ダドリアが立っていた。

「やっぱりルルカ様!」

 どうやらルルカが来ることを予見していたようだ。

「どうも~」ルルカの殺人スマイルが後光が差したように輝いた。


「今日もとても麗しいですわね~。本日開かれるパーティーのご準備にいらっしゃったのでしょう?」

 貴族御用達のブティックだからか、情報は既に知っているようだった。

「ドレスには着替えられるのだけど、ヘアメイクをお願いできないかと思って・・・どうかしら?」

 ルルカが申し訳なさそうにでも期待しながらダドリアに伺いを立てた。


「もちろん、お手伝いいたしますわ!ルルカ様の美しさを一番に引き出すのはこの私の仕事ですわ!」

 うふふふ、と今日も濃いメイクが上品に際立つダドリアは待ってましたと言わんばかりの張り切りようだった。


「おはよう、ディオ」ダドリアの後ろから、ルイが出てきた。ルイも今日ディオたちが来るのを分かっていたようだった。

「ルイ!おはよう!その後体調は大丈夫か?」

「はは、ディオは心配性なんだね。もうすっかり大丈夫だよ。」ふわっとルイは微笑んだ。


 さぁさぁ、とブティックの中に通され、まずは御着替えをお手伝いします、とダドリアが申し出てくれたが、ディオが「大丈夫です、すぐ済みますから」と断るときょとんとした。


 トランクからドレスとタキシードを出し、ルルカと自分に“置換”のスキルを放つとあっという間に着替えが終わり、「まぁ!」と驚くダドリアと、「あはは!」と笑うルイに分かれた。

「さすがディオ。ディオには驚かされっぱなしで笑い疲れちゃうよ。」

「ルイの笑いのポイントがわからない・・・」そんな面白いか?


「じゃあ母さんのヘアメイクをお願いしま・・・」

「ディオ、君もだからね?」とルイはニッコニコ微笑んでディオの肩をポンと掴んだ。

「え?」


 あれよあれよという間にスタッフたちに囲まれ、ルイとダドリアの指示の元、ディオとルルカ、それぞれのヘアメイクが済んだ。

「んんん~!!!お美しいですわ!!!装飾品を華美にせずとも元の美しさだけで十二分にお美しいですわ!!」

「あらやだ、嬉しい~」

 ダドリアはヘアメイクをして仕上がったルルカを見て至極満足そうだった。身内の目から見ても一段と輝いて見える。既婚者じゃなければ求婚する貴族が殺到しそうだ。


「ディオも良い感じ!」にかっとルイも満足そうに笑った。

「うー、いつもセット何てしないからなんかむず痒い・・・」前世でもワックスなど使わず過ごしていた分、頭の違和感が少し居心地悪い。

「はは、我慢我慢。」と笑うルイが、ディオのタキシードの裾を見てあれ?と声を出した。

「結局カフスボタン付けないの?まぁそれ以上に目立ちそうなものがついてるけど・・・」


 それ以上目立ちそうなものというのはお店のソファで休んでいるアウルムの事だろう。

 「カフスボタン」という言葉がルルカの耳に届いたのか、ルルカがはっとした表情でしゅばっとディオに駆け寄ってきた。


「きゃーん!ディオかっこいい~!!ダーリンにも見せてあげたいわ~!!あ、じゃなかった!カフスボタン!」

 ルルカはいそいそといつの間に設えたのかもわからないハンドバック(しかも恐らくアイテムボックス)の中から、キラリと光る二つの黄金のカフスボタンを取り出してディオの袖に付けた。


「あ、ありがとう・・・」忘れてなかったのか・・・。ゴールドのカフスボタン。

「ふふふ、ちゃんと似合ってよかったわ」

 ルルカの事だからきっとただのカフスボタンではないのだろうと思うが、あえて聞かずにただ素直に感謝を述べた。


「うん、そのカフスボタンすっごく似合ってる」ルイからも太鼓判を貰うほど似合っているようだった。


《ほう、物理防御と魔法防御の付与とはなかなかやるな》

 いつのまにか横にアウルムがパタパタと飛びながらカフスボタンを見つめていた。

「うわっ!びっくりした!声かけろよな!」

《主は気配も感じ取れぬのか・・・やれやれ・・・》アウルムはまたもや呆れたように言った。

「むかつく・・・」ぼそっと言った言葉にルイが「え?」と反応したが、「あ、いや気にしないで!」と手を振った。


 ヘアメイクをして、ルルカはさらに薄く化粧もしてもらったようだ。桜色の淡いルージュが良く似合っている。

 トランクはブティックに置かせておいてもらえるらしく、ダドリアとルイは笑顔でいってらっしゃいませとお辞儀をして送り出してくれた。


 噴水広場のど真ん中、城へ続く門構えの両脇に立つ門兵の一人に招待状を見せると、

「お待ちしておりました、どうぞお入りください。」と門を開けてもらえた。


「時間にはちょっと早いけど・・・出陣と行きましょう!」

 目をキラッキラと輝かせながらルルカは興奮気味に言った。

 出陣て。何と戦う気なんだ・・・。


 美しいドレスとタキシード、ヘアメイク。

 ディオは気付いていないが、美しい容貌をした親子、と小さな黄金竜が門をくぐり城へ向かった。



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