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第16話


 朝起きたら、枕元に卵があった。


 ディオはベッドの上に胡坐をかいて悩んでいた。

 プレゼントって絶対これだよな・・・。

 スキャンしてみると、


 ドラゴンの卵・・・入手難易度 – ドラゴンの巣でのみ入手できる。


 はいまたドラゴン・・・・・。何なの、この世界で最も権威のある生物なんじゃないの?

 ドラゴンの巣でしか入手できないものを・・・父さんと母さんに何て説明しよう・・・。


 ディオは溜め息をつきながら、寝巻から着替え、以前一角兎の毛皮で作ったポーチを下げ、卵をそっと中に入れた。


 絶対何か言われるだろうなと思いつつ、リビングへ向かった。

「おはよう・・・」

「おはようディオ!」ルルカは朝食の用意をしていて、挨拶の合間だけ振り向いた。

「おはよう。」食卓に座るヴォルが振り向くと同時に、ディオのかけるポーチに目をやった。

 ヴォルの瞳がドラゴンの瞳に一瞬変化した。ビクッとディオの方が揺れる。

「ディオ、面白いの持ってるな。どうしたそれ。」


 一瞬でバレた・・・。


ヴォルの声でルルカも振り向いた。

「なあに、どうしたの?」

 どうしよう・・・。なんて言い訳すれば・・・。いや、言い訳したところで意味がないだろう。


 観念したように、ポーチをゆっくり食卓に置いて、卵を取り出した。

「ほう。」ヴォルの瞳がまたもやドラゴンのそれになる。

「卵~?また森のどこかから拾って来たの?温めてたら孵化すると思ってるのね~」

 ディオったら可愛い!とまた能天気なルルカが笑っている。

「どこで手に入れた?」

「・・・信じてもらえないかもしれないけど、起きたら枕元にあった。」

「え~?どういうこと?拾って来たんじゃないの?」


「ルル、これはドラゴンの卵だ。」

「ドラゴンの卵?!」

 さすが父というべきか、ドラゴンのハーフだから何か感じるのだろうか。ディオの額に冷や汗が滲んで来た。


「枕元にあったというのは俄かに信じがたいが、ディオがここで嘘をつく必要もないだろう。」

 まぁまだ言えない何かはあるかもしれないがな、と付け加えてヴォルはいつもの瞳でディオを見つめた。


 ・・・父さんに隠し事は出来そうにないな。


「ドラゴンの卵は温めるだけでは孵らないぞ。魔力を込めるんだ。」

「魔力を?」

「そうだ。やってみなさい。」

「ええ?!今・・?」

「先延ばしにする必要もないだろう?」

「やってみなさいよ、ディオ!」ルルカは爛々とした瞳でディオに言った。


 だから何でそんな乗り気なんだよ・・・。楽観的な母は興味津々で瞳を輝かせている。

 錬金術師だから未知のものに興味が惹かれるのだろうか・・・。


「いま孵化させたとして襲ってきたりしないの?」

 ルルカはさておき、ヴォルに尋ねた。

「ドラゴンというのは孵化させた者の魔力に従う。よっていま孵化させてもお前に害はないだろう。」

「へぇ・・・。」

 そういえばアーケールも俺の魔力を感じるだとか何とか言ってたような・・・。


 アーケールの時はブルードラゴンの卵って表示されてたけど、これは何も表示がなかったし・・・ただのドラゴンなのかな?

 卵にそっと両手を添えて魔力をゆっくり注ぎ込むイメージで込めた。

 ある程度注いだ頃、


――――― ポウっと卵が光を放ち、独りでに浮かび上がった。


 ディオはドキドキしながら卵を見つめた。


――――― パキ、と卵にヒビが入ると、続けてパキパキっとヒビが広がり、

キューーーイ!と甲高い鳴き声と共に小さな黄金のドラゴンが飛び出した。


「ほう、黄金のドラゴンとは・・・」ニヤッとヴォルがドラゴンの瞳で見つめた。

「可愛い~!!ちっちゃい~!!」ルルカは瞳を輝かせている。

「うわぁ・・・」ディオはただただ感嘆の声を上げた。


 小さくても紛うことなきドラゴンだ。黄金の翼をパタパタして、ゆっくりと開けた瞳は、ディオと同じ、空色。

 その空色の瞳が、ディオの瞳を捕えた。


《お前が主だな》

「?!」頭の中に直接声が響いた。

「ディオ、名前でも付けてやれ、“主”らしく。」ははっとヴォルが笑った。

「え、と、父さんにも聞こえるの?」

「俺もお前もドラゴンの血が混じっているから声が聞こえるのだろう。」

「なになに~!!!内緒話~?!」


 ああそうか、母さんには聞こえないのか・・・。

「この小さいのはディオを主と認識しているらしい」ヴォルがルルカに優しく説明した。

「へぇ~!ディオが主!」ふふふっとルルカが笑った。


《お前もドラゴンか。主と似た魔力を感じる。》小さな黄金竜はヴォルの周りをくるくると飛んだ。

「お前の主の父だからな。似た魔力を感じてもおかしくはないだろう。」

《ほう。主の父か。俺の声が聞こえるという事はお主もドラゴンの血筋という事だな。》

「ハーフドラゴンだ。ちなみにお前の主はクォータードラゴン、ほとんど人間だぞ。」

「ねぇねぇ!!二人でこそこそ何話してるの~?混ぜて欲しいぃ~!!」


 なんかワイワイしてるな・・・。いいんだけど・・・。

《主よ、名は決めてくれたか?》

「えっとそうだな・・・・・」

 ん~・・・名付け何て前世小学生だったの頃のハムスター以来だな・・・・・。うーん・・・。


「アウルム・・・はどうかな。」

《うむ、承知した!》黄金の小さなドラゴン、アウルムは二つ返事で快諾した。


「良いんじゃないか」「可愛らしいわね~!アーちゃん!」

「いや母さん、ちゃん付けはどうだろう・・・」

「だってまだ生まれたてじゃない~。アーちゃん何食べるのかしら!」朝ごはん一緒に食べる?と純粋な気持ちで誘っているルルカ。


・・・生まれたてと言ってもドラゴンだし。ん?ドラゴンって何食べるんだ?


「卵から孵ってしばらくは孵した者の魔力で成長する。」

「え?そうなの?アーケールは孵ってすぐに世界樹に向かったけど・・・」

「アーケール様は世界樹が元々の巣なのだから心配いらないだろう。」


 そうか、アーケールの巣は元々世界樹だもんな・・・。

 考えるディオの方に、アウルムが留まった。

《主、これからよろしくな!》


 肩に留まるドラゴンって・・・。

 なんか・・・色々と常識から外れちゃってるけどいいのかなぁ・・・。


 ディオの心配をよそに、アウルムを歓迎して家はワイワイと賑わっていた。




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