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[全12話]憎しみに憑かれた黒薔薇令嬢は全て壊す為、復讐の魔歌を謳う。  作者: 安ころもっち


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8/12

第八話 「ロッティ。君は、政務について何も分かっていない!口出しはしないでくれ!」


 だがこれはまだ復讐ではない。

 ただ単に、無知な彼女に己の現実を見せているだけであった。


 その甲斐あって二人の仲は大きく溝ができていた。

 苛立つ殿下は日々のいざこざに苦慮し、口うるさいお目付け役に咎められる日々を送っているようだ。


 また、貴婦人たちの情報網から別の噂話も舞い込んできた。


 最近は第二皇子センドリスに継承権を与えてはどうかと推すものが増えているという話だ。


 センドリスは、第二皇子と聞こえは良いが、妾の子であり、継承権を持たない庶子であった。それ故に彼に対する風当りは強かった。


 だがそんなことは物ともせず、センドリスはただ純粋に大好きな兄の為にと努力を惜しまず、懸命に支えようとしていたのだ、


 そんな噂を入手した私は思い出す。

 ゲームの中ではその高い能力であるが故に煙たがられ、自身の皇位を脅かすかもしれないと、疎ましく思っていたマクシミリアンにより、粛清されるなんてルートもあったなと……。


 乙女ゲームなのに攻略対象がなぜにそんな殺伐とした末路をたどるシナリオが用意されているかと、当時は運営の頭を疑ったほどだ。


 マクシミリアンの5つ下の腹違いの弟センドリス、彼もまた可愛らしい金髪の美少年だったが、このまま進めば一年後にはそんな未来も……、鬱な展開を思い出し気が滅入る。

 だがそんな彼もまた皇帝陛下の血を引く者だ。私の邪魔をするのであれば容赦はしない。そう強く決意し、次のお『駒』を誑し込むため、私は今日も魔歌(まか)を謳う。



 マクシミリアンは日々の権力争いに疲弊してゆく。


 ルノワール公爵という帝国一の公家を一つ失ってしまった事で、残りの二家による激しい権力争いが起きていた。この二家もまた復讐の対象であった。

 私を貶める為にあらぬ噂を広め、寄子(よりこ)に命じロッティへの嫌がらせをさせた。そして、それは私が命じたことになり、あの断罪劇を後押ししたのだ。


 まあほとんどはロッティの自作自演だったが……。


 私が具現化(マテリアライズ)を使い篭絡した貴婦人たちの中には、その二家から命じられロッティに嫌がらせをした者や、殿下に嘘の噂を流した者もいた。


 そして、私の具現化(マテリアライズ)の力を見て、私がエリザベートだと、自身が貶めた公爵令嬢だと気付いた者も多かった。当然だ。呪いの黒薔薇の話は彼女らにとって格好のネタであったから、多くの者に知れ渡っていたのだから。


 私に気付いた者たちは、己の罪を贖罪するため、私に永遠の忠誠を誓う者、恐怖に錯乱し自傷した者、自死して詫びようとする者……、それらを私は許した。

 そのすべてが肉親などに命じられ、私に対し負い目を感じながら実行していたことも分かっていたから。


 貴婦人たちの情報網は優秀だった。

 私の知りたいことが難なく集められてゆく。時には私を直接貶めた実行犯もおり、その汚物を蹴り飛ばしてしまいたい衝動に駆られたこともあったが、必死で詫びを繰り返すソレを見て、私は冷たい笑顔を添え、見下し、許すのだ。


 使える『駒』であるのなら、私に忠誠を誓うのなら、全ては飲み込み許すのだ。




 私が篭絡した貴婦人たちの陰謀により、病に伏した皇帝陛下に代わり政務をこなしていたマクシミリアンの判断はその全てが裏目に出た。彼はロッティの見守る中、無能で無力な男になり果てていった。


 そんな二人の罵り合いを聞く者もいた。


「ロッティ。君は、政務について何も分かっていない!口出しはしないでくれ!」


 日に何度も口を挟むロッティに苛立つマクシミリアン。


「殿下こそ、わたくしの言うことを聞いてくだされば、こんなことにはならないのです!」


 思い描くストーリーの通りに薦めようと、夢見の力だと言ってあれこれとアドバイスを口にするロッティ。


 ゲームのシナリオでは、夢見の助言により二人は困難を乗り越え、愛を深めるはずだった。


 しかし、私が仕掛けた罠により、シナリオ通りに運ばない現実に、二人の心が離れていくのは止められなかった。


 ある夜、城内で激しい口論が起こった。


 ロッティはマクシミリアンの執務室でテーブルを叩きつけ叫んだ。


「これは違う!わたくしが望んだ物語ではない!全ては、殿下がわたくしに従わないからだわ!」


 ロッティは、全てが自分の望む通りに進むのが当然だと思っていた。

 自身が思い描いていた理想と違う展開になった原因は、邪魔な婚約者であった悪役令嬢ではなく、自身が持つ全てを愛で解決する力、その源である「真実の愛」を疑うマクシミリアンのせいだと、そう非難したのだ。


 マクシミリアンは、初めてロッティの燃え盛る様な緋色の瞳に、愛ではなく欲を見たのかもしれない。


「君は……本当に純粋な心を、私を愛する心を持っているのか?」


 二人の間には、決して埋まらない深い溝ができていた。


 私の復讐は、まさに佳境の時を迎えようとしていた。




――― 真実の目覚め


 エリザベートが催したマクシミリアンとロッティの破滅を画策する会合。


 ジェロームは隣に座り、エリザベートから提案されていた計画を忠実に実行していた。


 彼はエリザベートのために豊富な財力の提供していた。


 彼女が篭絡した貴婦人たちの情報網を使って、どのように理想の復讐を叶えるのか?標的となる二人を貶める最高の演出は何か?そんなことを彼是と画策する彼は、彼女にとって最高の共犯者(パートナー)だった。


 しかしジェロームは、隣に座る "ミス・エレーヌ" の美しい横顔を見ながら、今は亡き侯爵令嬢 "エリザベート" の事を思い出していた。


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