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[全12話]憎しみに憑かれた黒薔薇令嬢は全て壊す為、復讐の魔歌を謳う。  作者: 安ころもっち


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第四話 「ずいぶん強い願望だ。この場所で、これほどの魔力の渦を見るのは本当に久しぶりだ、ケロ」


 私の足元で、突然小さな鳴き声がした。


 視線を向けると、井戸の縁に一匹の小さな蛙が座っていた。


「ケロ」


 もう一度鳴いてみせた緑の蛙。


 蛙の鳴き声ではない。蛙の真似をしているような、そんな感じの声だった。


 その瞳は金の輝きを放ち私をジッと見つめていた。


「驚いたね、お嬢さん?」


 驚いたよ私。


「ずいぶん強い願望だ。この場所で、これほどの魔力の渦を見るのは本当に久しぶりだ、ケロ」


 私は一瞬警戒してみたが、それ以上に目の前の非現実的な光景に、非現実な光景に胸の高鳴りを覚えた。


 だが私は、不自然なそれが気になって……。


「ねえ?そのケロって言うのは付けないと駄目?」


 思わず言ってしまった。

 不自然に付け足されたようなそれに違和感を感じてしまったから。


「そう言われても困るな。私にもアイデンティティというものもあるんだ、ケロ」


 私を笑わせる気なのだろうか?


「あなたは……、何者?」


「仕方ないので自己紹介をしよう。私はファルネ。この森の、まあ、言ってみれば『声』だよ……、声。ケロケロ」


 蛙はそう言うと、井戸の縁から跳び降りた後、私の足元をぴょんぴょんと跳ね回り始めた。


「お嬢さんの魔法は面白い。とても残酷で、とても美しい怨念のような気持ちがこめられている。気に入ったよ、ケロ」


 私は返事をしなかった。

 私が悪いのか?ファルネと名乗った蛙は、ふたたび井戸の縁に飛び乗った後、ジッと私の目を見るばかりで動かなくなった。


 そんなファルネがふたたび話を始めたのは、その数分後のことだった。


「君は、ここを抜け出したいんだろう?」


「ケロ、はどうしたの?」


「帰ってもいいケロ?」


 背を向けるファルネ。


「ごめんって、つっこみ待ちかと思うじゃん?」


 思わず砕けた言葉で話しかけてしまう。

 蛙だし、良いかなと。


「君の復讐心はこの石の壁を打ち破ることができそうだ。私はその手助けをしてあげよう。これでも私は、妖精王なのだから!ケロケロ」


 妖精王?


 たしかゲームの設定資料集には、修道院の近くの森に古くから居着いている妖精がいるという設定があったはず。本編では出てはこなかったけど。


 彼らは悪戯好きで、純粋な心ではなく、むしろ強い邪念に惹かれるのだと。


 だけど、言うに事欠いて妖精王?


 それでも、たとえ只の妖精だったとしても、手助けをしてくれるとうのなら乗っかっておくのも良いだろうと思った。どうせ魔法の制御ができていないのだ。ダメならダメでまた方法を考えれば良いのだ。


「ファルネ様、(わたくし)に何を求めますか?」


 念の為の確認であった。

 対価はその命、なんてことがあっても困るから。


「求めないさ。ただ、君の物語の結末を見てみたいだけ……、ケロ」


 ファルネは井戸の縁で跳び跳ねている。


「お嬢さんのその憎しみの声、それをもっと聞かせてくれないか?君の魔法は君の歌と結びついている。それはこの世で、最も恐ろしく、最も素敵な魔歌(まか)になるだろう!」


 またケロってつけなかったな。

 そう思いながらもファルネの言葉をじっくりと脳内で考察する。


 歌……?そう言えば、私は前世で合唱部だったな。あまり真剣にはやっていなかったけど……、歌えば具現化(マテリアライズ)の力はうまく発動できるのだろうか?。


 この世界でも公爵令嬢として、公の場で歌を披露することもあったけれと、それを魔法に結びつけることは考えもしなかった。


「わかったわ、ファルネ」


 私は心を静め氷のように冷たい笑みを浮かべた。


(わたくし)の復讐の物語に、あなたは素敵な出会いを与えてくれた。さあ、(わたくし)の歌を聞いて!(わたくし)を、私を裏切った全ての者を許さない、私の復讐の第一歩を!」


 私は息を整え目を閉じる。


 空に向け思いをつぶやく。


「私は、絶対に……、あの二人を、帝国を、許さない……」


 声に魔力を籠める。


「永遠に……、続く、この暗闇は~、私の心を支配する、永遠の、恨みの炎~。


 絶望で迷った、今の私は~!


 どこまでもこの暗闇を~、生み出し続けて全てを恨む~!」


 歌い始めてみたものの、中々に恥ずかしい。

 それでも、(わたくし)を止めた私は、歌い続ける。


「どうせなら、この世界の全てを~、黒く、黒く~、ただ真っ黒に~!


 全て塗りつぶして、道を閉ざせば~、私の心も少しだけ~、晴れるのに~!」


 目の前の蛙はうんうんとうなづいているようだ。

 恥ずかしさは消えず、黒い魔力の霧はまだ立ち昇ってはいない。

 

「永遠に、続く~、この暗闇は~、復讐を決めた私の~、


 だた一つの、真なる願い~!全て潰して~、消えてしまえば~、


 跡形もなくその~、全てを消して~」


 少しづつ身体の外へと魔力があふれ出る。


 今なら完全な形で私の願望を具現化できる気がする。


 私の中の語彙力は壊滅的だが、今は恥ずかしさを一旦忘れよう。


「望みを~、叶えてよ~!名誉も、愛も、全ていらない!


 復讐を、私は願う、最後まで戦うわー!


 最後まで、私は謳うわー!黒薔薇を、咲かせて、この世の全てを呪う!」


 立ち昇る黒い霧が黒薔薇を、ゆっくりとその形を作り上げはじめる。


「望みを、叶えてよ~!同情も、安らぎも、全ていらない!


 復讐を、私は願う、黒薔薇よ、咲きなさい!


 私に、私に力をー、与たえなさーい!」


 もう歌ではなかった。

 ただ純粋に思いを、吐き出す言葉を、強く魔力を籠めた恨みを吐き出していた。


「咲いてよ、お願いよ……」


 変化がない黒薔薇を見て、失敗を予見した私は弱弱しくつぶやいた。

 途端、体内の魔力がごっそり抜き取られる脱力感を感じた。


 目的を遂げた達成感、これから始まる復讐劇、不安や緊張、全ての感情があふれ出した私は、自然と涙が溢れ倒れ込みたい衝動を必死で堪えていた。


 黒薔薇は咲いている。


 目の前で大輪の花を咲かせている。


 泣き崩れるのは嫌だった。

 私は復讐を遂げるまで泣かないと決めていた。


 ポロポロと止められない涙を袖で拭い、せめて立っていようと。

 そう思って大きく息を吸った。


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