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オーロラのワンピース

作者: 織花かおり

「我が子みたいな大切な作品」というお言葉を瑞月風花様の活動報告で拝見して、この作品を「小説家になろう」に再掲しようと決めました。

この作品は、私の魂です。

どうぞお付き合いくださいませ。

 あさつゆをそよ風がそっとゆらした、ある朝のこと。

はやおきの風のようせいは、あさつゆがお日さまにきらきらとかがやいて、風にゆれているのをきれいだとおもいました。

そして、きまぐれにそよ風を糸にかえて、あさつゆいろのワンピースをしたてました。


 うまれたことがうれしくてしかたがない とうめいなワンピースは、山でキツネの女の子とであいました。

「わたしは、とうめいなワンピース。風のようにかるく、あさつゆのようにきらめくの。どうぞわたしをきてくださいな。そのピンクのリボンがもっとすてきにみえるようになるわ」

キツネの女の子は、いいました。

「ごめんなさい。わたし、おきにいりのリボンとおそろいのピンクのワンピースがほしいの」


 キツネの女の子とさよならした とうめいなワンピースは、つぎに森でにんげんの女の子にあいました。

「わたしは、とうめいなワンピース。風のようにかるく、あさつゆのようにきらめくの。どうぞわたしをきてみてくださいな。きっとかわいくなるわ」

女の子は、いいました。

「ごめんなさい。とうめいだと したぎがみえてしまうから きられないわ。ごめんなさい」


 にんげんの女の子とおわかれした とうめいなワンピースは、つぎにまちで赤ちゃんをつれたお母さんと出会いました。

「わたしは、とうめいなワンピース。風のようにかるく、あさつゆのようにきらめくの。どうぞわたしをきてくださいな。きっと赤ちゃんのおくるみにぴったりよ」

お母さんは、いいました。

「ごめんなさい。この子にはもうおじいちゃんとおばあちゃんがおくってくれたおくるみがあるの」


 手をふるかわりに赤ちゃんをフリルでそっとなでた とうめいなワンピースは、つぎにさばくで大男に出会いました。

「わたしは、とうめいなワンピース。風のようにかるく、あさつゆのようにきらめくの。どうぞわたしをあなたのごかぞくにプレゼントしてくださいな。きっと笑顔もきらきらするわ」

大男はおこって、いいました。

「ぼくは今、おくさんとけんかちゅうなんだ。君をプレゼントなんかして仲直りしたら、ぼくがずっと食事当番になってしまう。そんなのごめんさ」


 大男におこられてしゅんとした とうめいなワンピースは、こんどは海に行きました。

海でさいしょにであったのは、カニの女の子でした。

「わたしは、とうめいなワンピース。風のようにかるく、あさつゆのようにきらめくの。海のようにきらきらしたワンピースをどうぞきてみてくださいな」

カニの女の子はいいました。

「ごめんなさい。とてもあなたはすてきなワンピースなのだけれど、わたしは、大きなはさみをもっています。きっとまちがってちょっきんしてしまうわ」



 カニの女の子となくなくさよならした とうめいなワンピースは、つぎに むれをつくっておよいでいる おさかなにであいました。

「わたしは、とうめいなワンピース。風のようにかるく、あさつゆのようにきらめくの。どうぞわたしをきてみてくださいな。あなたがたの銀のうろこがさらにきれいにみえるわ」

おさかなのむれは、海のなかのとうめいなワンピースをくらげとまちがえていいました。

「くらげさん、どいてどいて。わたしたち、これから とおいところにいくとちゅうで、おはなしをしているひまはないのよ」


 がっかりした とうめいなワンピースは、つぎに島で一休みしている人魚の女の子とであいました。

「わたしは、とうめいなワンピース。風のようにかるく、あさつゆのようにきらめくの。とびはねたとき、きっとこのフリルがすてきです。どうぞきてみてくださいな」

人魚の女の子は、よろこんでワンピースをきて、とびはねました。

「ごめんなさい。フリルが気になって、おもいきりおよげないわ。わたしにはあわないみたい」


 人魚の女の子にさみしさをしられないようにした とうめいなワンピースは、すなはまでとうとうないてしまいました。

もう海にたいようがしずんでいきます。

「だれもわたしをきてくれないわ」

たいようがいいました。

「もうすこしここにいなさい。

きっとおまえさんをきてくれるものが見つかるから」

とうめいなワンピースは、なみだをひとつぶのこしたまま こくんとうなずきました。


 夜になり、お空にはお星さまがまたたきはじめました。

「わぁ、とってもきれい」

とうめいなワンピースは、ぐんぐんお空へのぼっていきました。



「わたしは、とうめいなワンピース。風のようにかるく、あさつゆのようにきらめくの。どうぞわたしをきてみてくださいな」

「まあ、すてき」

ひときわきらりとひかるお星さまの女の子が、ワンピースをきてくれました。


 お星さまのひかりにてらされて、とうめいなワンピースもきらきらときらめきます。

そして、まわりのお星さまたちもきれいだとおもい、すーとあつまってきました。

たくさんのお星さまのひかりをうつして、きらきら、きらきら、ひかりのさざなみです。


 お星さまの女の子はいいました。

「こんなすてきなわたしになったのは、うまれてはじめてよ。ありがとう」


 とうめいなワンピースはうれしくてうれしくて、ぽろぽろとなみだをながしました。

そのなみだは ひかりのつぶになって、ワンピースにふりまかれます。

きらきらきらきらきらきらきらきら……。


その夜、南のあたたかいくにでも、オーロラがみえたそうですよ。


                              おわり


挿絵(By みてみん)


お読みくださり、ありがとうございます。

自分の運命の相手を探すかのような旅をしたワンピースのお話はいかがだったでしょうか?

このとうめいなワンピースは、そよ風の糸でつくられたため、サイズを自由自在に変えられます。しかしデザインは変わりません。

少しでもお楽しみいただけたのなら、幸いです。

誤字脱字報告をしてくださった方、本当にありがとうございました!

作品中のイメージイラストはAIでかぐつち・マナぱ様が作成してくださいました。

本当にありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
まず冒頭がとても美しくてあっという間に引き込まれました!風のようせいがそよ風を糸にかえて、あさつゆいろのワンピースを作るだなんて!  ワンピースは何度も何度もいろいろな人に話しかけますよね。一生懸命自…
以前も読ませて頂いたことがあり、感想こそ残しておりませんでしたが、途中で悲しくなって泣いてしまうワンピースちゃんが、最後にお星さまと一緒になってキラキラ輝いているのが、とても印象に残っておりました。 …
お邪魔させて頂きました! 実は童話というものをこちらのサイトさんでは初めて読ませて頂いたのですが、何故か冒頭からとても引き込まれました。 ワンピースが旅をする……全く想像の世界を越えて来ていて、素直に…
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