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  作者: EVE
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前編

 私の中にはいつだって美しい景色と思い出が残っている。思い出せば、いつだって心を動かした瞬間が蘇る。私はそうして、いつまでも、ずっとずっと、思い出す事ができる。あなたのおかげで。


※ ※ ※


 1月の終わり頃。夕方の4時から5時にかけて、時々見えるこの景色が私は好きだ。

 目の前には白い満月が大きく見える。そして後ろを振り向くと、力強く鮮やかなオレンジ色の光ーー夕陽が建物と私を照らす。

 この美しい光景に気づき、時々ここに来る女の子がいる。


「素敵な景色!今日は見れてラッキーだったなぁ。」


 うんうん、そうでしょう。綺麗だよね。そう思っていたら、珍しいお客がやって来た。白色のきれいな猫。右目は黄緑色、左目は水色、オッドアイの猫だ。猫は女の子を見ると、足元に擦り寄ってきた。


「君、どこから来たの?よしよしよし、可愛い子だねぇ。」


 女の子は猫の頭をたくさん撫でた。白い猫は人懐こく、「ミャオーン」としきりに鳴いて女の子の足元をぐるぐる回りながら頭や体を擦り付けている。


「もう暗くなるから行かなくちゃ。またね、猫ちゃん!」


 女の子は居なくなった。猫は暫く女の子の走り去った方角を見ていたが、やがて座り、美しい景色を眺めた後、そのまま寝そべった。すると今度は男の子がやって来た。


「こんな所にいたのか!毎回脱走して!」


 息を切らして走って来た男の子は猫を抱き上げると、白い大きな満月に気がついた。


「・・・綺麗だな。」


 男の子はボソッと呟くと、猫を連れて帰って行った。夕陽の陽射しが男の子の後ろ姿に射して、赤色に染まる。その光景もまた美しかった。


※ ※ ※


 早朝。ここは仕事に行く人や犬の散歩をする人がよく通る。疲れた顔のおじさん、よく眠れたのかニコニコ笑顔のおばさん、真面目な顔をした女の人、携帯ばかり見ている男の人。たくさんの人が通る。


 少し時間が進むと、小学生の男の子や女の子が笑顔で通り過ぎる。みんな、今日も気をつけて学校に行って来てね。

 更に少し時間が進むと、中学生の男の子や女の子が通る。自転車に乗って行く子ばっかり。ここから中学校は遠いのかな。


 それからお昼にかけてまでは、買い物に行くお母さんやお年寄りが多くなる。小さい子がお母さんと来ると面白い。走ったり、歌ったり、飛び跳ねたりする。時には大泣きして立ち止まってしまう。そういう子は、優しそうなおばあさんに声を掛けられて、笑顔になる子もいれば、お母さんに抱きついて隠れたりする子もいる。

 3時頃には小学生がたくさん帰ってくる。仲良しの友達と楽しそうに話している子がいれば、遊びながら走って帰る子がほとんどだ。でも時々泣いている子もいる。ケンカでもしたのかな。明日は笑顔だといいんだけど。


 そして待ちに待った4時過ぎ頃。犬の散歩や買い物に行く人が通り過ぎて行く中、今日も白い大きな満月が見えていた。そしてその反対側には夕陽。幻想的な風景だ。

 そこに昨日の猫が来て、景色を眺めながら寝転んだ。きっと私と同じで、この風景が好きなのだろう。そこへ、いつもの女の子が走って来た。


「やったぁ!また居た!」


 女の子は嬉しそうに猫を撫でる。猫も嬉しそうだ。そうして暫くすると、男の子がやって来た。


「それ、うちの猫なんですけど。」

「わっ!ごめんなさい!」


 女の子が謝って手を引くと、猫は女の子の手に擦り寄るために頭を押し付けた。


「ミャオが人に懐くなんて、あんまり見た事ないな。餌付けでもしたんですか?」

「してないです!猫ちゃんが足元に寄って来てくれたんです。」


 2人は暫く猫の様子を眺めていた。それから女の子が口を開いた。


「猫ちゃん、ミャオちゃんって言うんですね。女の子ですか?」

「オスです。」

「じゃあミャオくんかぁ・・・。」


 夕陽が沈みかけ、空が暗くなってきた。女の子は「帰らなくちゃ」と言うと、ミャオと男の子を振り返った。


「明日もまた来ますか?」

「ミャオ次第だと思うけど・・・」


 女の子はにっこり笑うと、走って行ってしまった。ミャオと男の子は女の子の走り去った方をずっと見つめていた。夕陽はもうほんの少ししか射していないのに、男の子の頬と耳は赤みがさしていた。なんでかしら?

夕方に後編を投稿する予定です。ぜひご覧ください!

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