6話 代表挨拶
自分はチビだが以外にも胸の膨らみがある。
といってBくらいだが…
七歳にしてはある方だと思う。
というか七歳だよ?
普通ブラジャーつけるの?
そういうことは全くわからないためなんともいえない。
胸を揉んでみる。
なんか饅頭くらいのものがふにふにしてる。
ブラつけるのめんどくさいよ。できればパンツも履きたく無い。
いや、露出狂ってわけじゃ無いんだけどさ、
はぁ…自分誰もいないのに誰に言ってんだろ。
あれから更に買い物した。
厳密にいえばカナリアのお金で…
洋服やバッグ、アクセサリー、計一千万円くらいの出費だと思う。
ほんとにだいじょぶ?
そう聞くとカナリアは、私のポケットマネーのほんの一部ですわと言った。
自分あんまり借りを作りたく無いアルよ。
だって怖いもん。
魔術乱用してお金稼ぐか?
幸いものすごくお金稼ぎに適した固有魔術あるけど。
傭兵ギルドもしくは冒険者ギルドで荒稼ぎしようか迷ってる。
迷っている理由はこの見た目だ。
ギルド加入は七歳以上、、この外見はどう見ても幼女である。
「はあ…」
エルはもう何度目かもわからないため息を吐いた。
六級魔術師になればある程度自由に動ける。
もう先に取得しとこう。
「疲れた。」
もう寝よう。
この世に生まれて七年、久方ぶりにエルは深い眠りに落ちた。
◆◇ーーー
すこぶる快眠だ。
六時間も寝れた。
これが続けばきっと堕落してしまう。
でもいいの、
運命操作で堕落しない運命にするから!
つくづく便利な固有魔術である。
ただ一つ欠点があるとするなら、対象の因果運命が強い場合、全く効かない場合がある。
それこそおじさんがそうだ。
1000万以上いる正規の魔術師達を屠り、ライバルを蹴散らし、最前線は進み続ける者にのみ与えられる偉大なる傑物。
二桁。
その中でも最高ランキング12位を達成、不屈の魔術師と呼ばれ、技術面も精神面も圧倒的に強い存在。
世界魔術師ランキング現37位,鬼王グレイ=ノーヴァ
おじさんに魔術をかけた時、ありえない量の魔力を持って行かれた。
多分あれはおじさん自身が自分の魔術に掛かることを望んだから掛かっただけで、本来なら全く効かないはずだ。
結局のところ全てにおいて万能というわけでは無い。
ただもう一つの固有魔術【改竄】と掛け合わせれば相当悪いことができるぞ!
三つ目は…使い勝手がすこぶる悪い。
秘密兵器だ。
「あれ、もうこんな時間か、」
時計を確認すると七の針を指している。
そろそろ学院の鐘が鳴る時間だ。
支度していかないと。
茶色のモダンで高級感溢れる鞄に水筒と魔術の本を数冊入れる。
とても面倒だけれど60万円もする下着だ。カナリアに感謝して、ありがたく着けよう。
いつもの和服を着る。
鞄を背負い下駄を履いて、寮の鍵を閉める。
昔から買い物は好きだったから、ご機嫌に鼻歌を歌いながらエルは登校する。
「ふんふーん、らららあー。」
声が凄く良いから最近では歌が好きになって結構歌ったりしている。
歌手になるのも良いかもしれない。
歌手という職業はないけれど…
そういえばこの世界にピアノとかあるのかな?
「オリヴァ先生、ピアノってこの学院にありますか?」
というわけで聞いてみた。
オリヴァ先生はオールしたのかと思うぐらい血の気の引いた顔をしている。
疲れてるんだなあ…
「ピアノか、初等部、中等部、高等部、全ての音楽室にあるぞ。案内は必要か?」
「いや、聞いてみただけです。」
「そうか、まあ音楽室は常に空いているからいつでも使うといい。」
「はい。」
気怠そうな顔をしているが意外にもちゃんと生徒に対して向き合っていると思う。
相変わらずエルは失礼なことを考えていた。
「それにしてもノーヴァは群を引いて大人びているな。見た目との差が激しくて少々混乱する。」
「あははは…」
そんな時、慌ただしく走りながら入ってくるオリヴァ先生とよくいる印象がある教員を見かける。
「ぐはっ!?」
ズシャッ!
今すごい良い音したぞ…
手に持っていた書類を撒き散らす形で転けた、
うわ、顔から入った…痛そう。
書類は…オリヴァ先生が魔力操作で浮かしていたみたい。大丈夫だった。
え?ニーナ先生を心配しろって?
いやあの人身体がやけに頑丈だから大丈夫だよ。多分…
「はぁ…ニーナ、次の会議で使う資料を落としそうになるなんてどういう了見だ?」
「え、えーと…そ、そんなことより私の心配をしてくださいよ!」
「あんぽんたんの心配なんていらん。」
「ひ、ひどい!」
ここにきて三日目。
昨日は休みで、
今日は学年集会が開かれる。
もちろんのこと学年代表挨拶も含まれる…はぁ、、何喋れば良いんだろうか。
少しながら憂鬱なエルちゃん。
黒曜石の如く長い髪を揺らしながら半眼ジト目で思案する。
そう、台本も何も話すものがない。代表演説を全く考えていないのだ!
「まあなんとかなるか。」
学院の内部にある聖堂に移動する。
自分は代表挨拶があるから皆とは別行動だ。
「君が今回の首席ちゃんかな?」
「えと、」
移動の途中に、自分と同じくらいのピンクの髪と瞳を持った幼女に呼び止められる。
その幼女の魔力の総量に目眩がした。
似ている。似ているのだ。
自分は強者に二人出会った。
一人目は自分の師匠でありおじさんと親しみを込めて呼んでいる鬼王グレイ=ノーヴァ。
そして二人目はフィアの母親でありユグドラシル守護者
ノエル=アルノラティ。
どちらも自分が全く測れない強者であるが、目の前にいる幼女みたいな人は、遥かに二人を凌ぐ実力を窺える。
強者の波動と言うべきか、強者特有の何かを持っている。
そう感じた。
「君は凄くいい感をしているね。幼少期に培われたのかな?危険を察知するために。ね、」
目の前の幼女が一息吐き吐いた瞬間、自分の身体全身が強張り、鳥肌が立つ。
「我はペスト=パンデモルア。世界ランキング6位。皆からは『神医』と呼ばれている。」
目の前の存在は理解が及ばない所にあると本能が言っている。
これがこの世界に九人しか存在しない一桁。
人智を超越した何かだと言うことだけは理解した。
「な、なんでこんなところに?」
「そうだね、我はそもそも六大派閥の一つである魔術学園総括の学園総会長だった。まあ後継者にその座は譲って今はのんびり研究室に閉じこもってるんだけどね。今回の首席ちゃんはグレイの弟子って聞いたから飛んできちゃった⭐︎」
本当に心臓に悪い。
目の前に立たれただけで重圧で死ぬかと思った。
いや、本当に…
「我もねぇ、本当はクーラーの効いた部屋でのんびりしたかったんだけどねー、来てよかったよ。こんなに可愛い子だったなんて想像以上だ。」
あ、何故だろう、なんかミラウ様を感じた。
「そんな緊張しないでよ。我は他の一桁に比べても一番話しやすいそうだよ?」
「そうなんですね。」
「他の一桁に会えば分かるよ。一癖も二癖もある気の難しいやつばかりさ。」
しみじみとペストはそう言う。
「あー、そういえばパールバール、現学園総会長。我の後継者が会いたがってたよ。あいつはユグドラシルの方の学園長をやってて、あっちの方でも今頃代表挨拶があるから来れなかったんだけどね。」
「なぜ自分に?」
いや、自慢じゃないけど自分孤児で貧民でスラム街出身だぜ?
「んー、我と同じ理由さ。グレイが弟子を作るなんて初めてだよ。そりゃあ聞かされた時は耳を疑ったね。」
「おじ、師匠に弟子は一人もいないんですか?」
「いないいない。というかあいつをおじさん呼びか!君は面白いなあ。」
ゲラゲラと幼女が笑う。
その光景は微笑ましいものだけれど、冷や汗が止まらない。
「お、話してたらもうすぐ代表挨拶だね。頑張れよ!」
そう言って自分の背中を押した。
見た目に似合わずかっこいい人だなと思う。
「アレス学院初等部500代目首席。エル=S・ノーヴァ、前へ。」
「はい!」
不思議と緊張はない。
最高のパフォーマンスができると思う。
「皆様、今回新たな首席を務めさせて頂きます。エル=S・ノーヴァと申します。
此度、新たな一歩を踏み出し、この素晴らしい学びの旅が始まります。
まず初めに、心から皆様方を歓迎いたします。」
拍手が起こる。
自分はそれを手で鎮め、続きを話す。
「この誉あるアレス学院初等部は知識と成長の場であり、皆様が自身の可能性を広げる場所です。
皆様が選んだ道は、魔術の前進…
未知の世界への扉を開くものであり、新たな挑戦と出会いが待っていることでしょう。」
「私たちは多様なバックグラウンドから集まり、異なる夢や目標を持っていますが、共通しているのは、学び続ける情熱と努力です。
学院での日々が、成長の機会となり、自分自身を見つめ直し、進化させるチャンスと断言します。」
「私たちはこれから、新たな知識を得るだけでなく、友情や協力の大切さも学んでいくことでしょう。
仲間たちとの絆を深め、共に困難を乗り越え、喜びを分かち合いましょう。」
「学院の学びは、単なる魔術書の知識だけではありません。人間的な成長や社会への貢献も大切な要素です。
将来、私たちはさまざまな分野で活躍し、世界に対し、爪痕を残し多様な影響を与えることが求められるでしょう。」
「皆様はそれぞれが輝かしい未来を築くための種を持っています。
自信を持ち、夢を追いかけてください。」
「どんな困難にも立ち向かい、努力を惜しまないことで、成果は必ず足音を立てて目の前にやってくることになるでしょう。」
「最後に、新しい仲間とともに、素晴らしい学びの時を楽しむことです。
成功への道は決して容易ではありませんが、皆様の意欲と努力で、きっと素晴らしい未来が待っていることでしょう。」
「私、エルは500代目首席としてその名を調印します。
我が女神、ミラウに誓って。」
その発言の瞬間に、聖痕は淡く光り輝く。
皆がその光景に目を奪われた。
そして一人目の拍手に続くように、拍手喝采が連鎖し巻き起こる。
「まじか、あの女神様が信徒でもない子に聖痕を贈るなんて、初めて見たぞ…」
ペストはしみじみと呟いた。
ただ、いい演説だった。そう付け加えた…