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TS魔術師幼女さんの旅日記  作者: 鶏の鷲掴み
序章
3/11

3話 試験

「ギャッ!」


痛い…

木の根っこに引っかかって盛大に転んだ。


「いてて、」


確か神聖魔術なら怪我とか病気とか治せたはず。

信仰の本質か、

さらに曖昧で火、水、風、土、雷の五大属性魔術とは勝手が違う。


信仰対象が変われば行使される神聖魔術は変わる。

一種の固有魔術だ。


世界魔術師協会の六大派閥の中に聖徒信仰教会という派閥があり、その教会は七つの神を信仰している、

自分が知っているのは美と癒しの女神、ミラウのみだ。

確か彼女を信仰することで癒しの魔術が使えるはず。


「どうか自分に神聖魔術をお与えください、」


ポージングはこんな感じかな、

こんなに俗物的な願いでいいのかとも思うが、強制的に魔術で、神聖魔術を得られたという運命にするから無問題もーまんたい


運命の魔術は自分の望む結果にしたい時にとても便利だなあと思う。


「えっと、迷った…」


どこだここ…

あ、地図逆さまじゃん。

学園まで迷わなくなる運命。身を任せればまあ着いていることだろう。


それにしてもおじさんに綺麗な和服を貰えてよかった。

あのボロボロの服のまま行ったら目線がキツかったと思う。


おじさんよくこんな服持ってたな…

そういう趣味、というわけではなさそうだし、娘さんのおさがりかなと思う。

赤と紫の花が刺繍され、上質な絹と糸を使用していて、いかにも高級品と分かる。


この先汚れることはないだろうし、ずっと使おう。


エルは固有魔術オリジナルを重ねがけで発動する。

服が汚れない。

道中安全。

そんな運命。


魔術の発動も相当スムーズになってきていて、五つくらいなら常時並列発動できそうだ。

土の魔術と雷の魔術も練習しておこう。







◆◇ーーー






本当に魔獣に会うこともなく学院にこれた。

ただあまり使いすぎると生態系を覆してしまう気がする。

例えば自分が通ったところもしくはこれから通るである所に本来ならいるはずの魔獣が因果を捻じ曲げて違う場所に移動させているわけだ。


ご都合的な展開と最初は間違えていたが、そういうことでもない。

強制的に自分が望む運命に変えてるため周囲への影響は相当強い。


まあ使う時はおいおい考えるとして、トリガーを作っておこう。

第二の固有魔術オリジナル【改竄】で発動条件を定める。

追加で全ての改竄された物を解除するマスターキー的なものも作っておく。

うっかり発動したら大変なことになるかもしれないしね。


トリガーは片目をつぶって自分が望む運命を定めた時。

マスターキーは両目を瞑りながら『解除』と呟いた時時。


何事もなく都市に着いた。


「中世の近代化が進んだ街並みみたい。」


街にはレールが敷かれ小さな列車が通っている。

道路も整備されていて、とても広い。


「美味しそうな匂いがする…」


大きな食堂はとても賑わっていた。


巾着のなかを見つめる。

そういえば、自分お金持ってない…

魔獣狩ってくればよかった、


寮に住むつもりだけどやっぱお金とかいるよね。

食堂とかもお金使いそうだし、


「ん?待てよ、」


首席合格すればさまざまな特典がついてくるって書いてあった。

もしそうならお金も免除してもらえるかもしれない。


学園の門ってこんな大きいのか…

ここ七年、最底辺も最底辺の生活だったからこんな豪華なところで生活できるなんて夢のようだ。

なまじ幼少期から意識がはっきりしてたし、完全記憶持ちだから小さい頃から鬱病になるかと思った。

え?なに?今も小さいだって?


うるさい、三日飲まず食わずもザラにあったんだよ、埼玉県民じゃないのに草も食べてたし、、


七歳で122cmは高い方だと思う。

この世界の平均身長が前世よりも高い、という情報に目をつぶれば。


校門に入ると、美しい庭園が広がった。


「もしかして試験を受けにきたの?」


その景色に唖然としていると、突然少女に声をかけられる。

自分よりも20cmくらい高い。

そして、その長い耳は本で見たことがある。

エルフだ。

透き通ったエメラルド色の瞳と淡い深緑の髪、宝石のような子だなと思う。

自分はその問いに首を縦に振り頷く。


「そっかあ、私も何だよねー、さっきお母様と逸れちゃって、迷ってたところなんだー。」


この少女、能天気すぎないだろうか…

服装からして高貴な令嬢ということは窺える。

というか看板に試験会場はあちらって書いてあるよ?


「はあ、着いてきてください。」


下手にタメ口を使えば打首になってしまうかもしれない。ここは身長に敬語で話そう。

少女はニコニコしながら自分の後をついてくる。


「ねえねえ、名前はなんていうの?」


試験会場に向かう途中で、少女にそう聞かれた。

まあ話さない理由もないし、ちゃんと答えておこう。


「エル=Sサクリファイス・ノーヴァです。」

「じゃあエルちゃんだね!私はフィア=アルノラティ。」


可愛い子だなあ…殺伐とした世界を生き抜いてきたけど今はメルヘンランドにいる気分だ。


アルノラティってどこかで聞いたような気がするけど、何だったか…

記憶能力いいとは言っても本当に全てを覚えられるわけじゃないし、

覚えようと思ったら覚えられるけどそれ以外は…うん、


どっかで見た気が…ん?見た?

本で見たのは確定した。

確か………


「あ!お母様!」

「もう、何処へ行っていたのですか?」


自分はその顔を知っている。

写真で見たことがある。

今自分が持っているおじさんからもらった魔術の本に載っている人物。


「ノエル=アルノラティ…」


そう呟くと、彼女は聞こえていたのか自分を凝視しながら言う。


「そちらのお方は、フィアのご友人ですか?」

「そうなの!さっき友達になったんだよ。」


この子はもしかしたら話したら友達という認識なのだろうか、


「私を知っているようですね。お名前は?」


にこやかに微笑みながらそう言った。


「この子はエルちゃんだよ!」

「エル=Sサクリファイス・ノーヴァです。」


エルが名前を言った瞬間、ノエルは微笑みを崩し驚愕を露わにした。


「もしやグレイ様の…」

「弟子です。」

「そう、ですか…娘様がお亡くなりになったと聞きましたが、確かあなたと同じ名前でしたね。」


やはり、

そういうことだったのかと、理解する。

おじさんがなぜ自分に優しくしたのかも、分かった気がする。


ノエル=アルノラティ、魔術師世界ランキング46位。

エルフの国、ユグドラシルの守護者。


「ずっといるのもあれですから、私はこれにて失礼します。フィアをお願いしますね。エル様。」

「はい、」


優雅に彼女は立ち去っていった。

それから二人で試験会場に向かう。


「あそこが試験会場の入り口です。」

「おおー!エルちゃんよくわかったね!」


自分たちと同じぐらいの子たちに着いていっただけ何だけどね、

純粋と言うか何と言うか、お姫様っぽい。

フィアはキラキラとした目でエルを見ていた。


「フィア、また後で。」

「そっかあ、ここでお別れだね、またね!」


試験会場は別の教室だ。

自分の場合は1ーAだった。

教室に向かう前に受付場所に進む。


「推薦状、または試験招待状をお持ちですか?」

「はい。」


受付の人に手紙を提出する。


「推薦者は、グレイ=ノーヴァ様…!?こちらへどうぞ!」


扉を潜り、廊下を通り1ーAに案内される。

貴族の学校、廊下は煌びやかで清掃が行き届いていて汚れが一切ない。


「こちらです。」


一番早かったのかまだ誰もいない。

最初は筆記試験。


おじさんに貰った本の中には過去問の用紙が折りたたまれて入っていた。

自分がここに行くと予想してたかのようにしっかりと必要な情報を入れていてくれたのだ。


過去問は全て記憶している。


続々と試験を受ける子供が入ってきた。

会話はない。

緊張している様子が窺える。


「ふぅー、だいじょぶ、だいじょぶ。」


暗示のようにぶつぶつと繰り返している男の子。大丈夫かな、


さて、この空間は不正がないように魔術防止の結界が張り巡らされている。

常時並列発動をしていると、いつのまにか魔力が見えるようになった。


「揃ったか、じゃあ試験を始める。」


ガラガラっと前の扉から試験官と思われる人が出てきて、魔術で作られた薄い板を配り始めた。

てっきりおじさんが挟んでいた紙のプリントが配られると思っていたけどそうではないようだ。


「では、初め!」


薄い板に魔力で作られた文字が浮かび上がってくる。

えーと、なになに、、


『魔力とは何か?』

ーー魔術を扱う前の純粋的な力の源。


『属性魔術にて、またまたも有名とされる五つの属性を述べよ』

ーー火、水、風、土、雷。


『魔術を行使する上で最も代表的な動作を何と言う?』

ーー詠唱。


『最初に魔力を発見し、原初の魔術師として名を馳せた人物の名前は?』

ーー初代魔王セレク=ノーヴァ。


・・・・・









『魔術を魔法と言ってはいけない理由を考えなさい。』

ーー魔法とは奇跡であるから。





問題数は100問、全てが魔術に関係する問題だった。

ただこれを七歳で回答するのは結構厳しいと思う。

言語をしっかりできていかないといけないし、筆記用具ではなく魔力を使って文字を浮かび上がらせないといけないから魔術の基礎の基礎。

魔力操作も盤石でないといけない。


小説では特有の魔力の総量を測ったり、威力を自慢していたりするけれど、全くもって試験としては合理的ではないと言わざるをえない。

その点、この試験は言語能力、知性、魔力操作、忍耐力、さまざまな面を一度に測れて、理にかなっている試験といえる。


「ふぅ、」


集中してこの世界に来て七年あまり、慣れないことをやったから疲れた。

前世では結構得意だったはずだけど、勉学から離れてしまったからなぁ、そんなことを思いながら軽く伸びをする。


周りはまだ終わってないようで、自分のみだ。終わったのは…


「ふむ、もう終わったのか?」

「はい。」


試験管が無表情でこちらに近づいてきた。

この人全く表情変わらないな。仕事人みたい…

はいと頷くと、試験官は解き終わったものを回収した。



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