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ノア・リライツ 外伝 天才と少女の物語  作者: 少女計画
少女との生活
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第四節 一話 「始まりの一日」




「アメリアお姉さん、はやく!はやく!」


「あー、ごめんごめん……。あともう少しだけ、海苔の角度がなんかイマイチだから……」



本日はメメリィアの初めての学校登校日。


結局あれから一月ほどが経ってしまったのは必要書類の中に役所に行かないとわからないものが多くあり、仕事の間にペペペモリアと交代で揃えていたらこんな時期になってしまった。


夏真っ盛りの本日オプライデント上空は雲一つない快晴。


数週間前に引っ越してきたラスメニカのアパートで汚れ一つない制服に身を包んだメメリィはあわてていた。


緑色の髪を後ろで一つに結い、慣れない制服には着せられている感じが拭えない。



「よし!できた!あとは……写真撮って……」


「お姉さん!写真はいいよ!早くしないとメメリィア、一日目からちこくしてくるふりょうって思われちゃう」


「なっ、それはたしかにマズい。そうだね写真なんか取ってる場合じゃない」



アラームで起床したものの、学校初日なめられたらいけないとお弁当作りに全力を込めるアメリアのせいで遅刻しそうになっていた。



「メメリィア、忘れ物ない?」


「うん!」


「電子端末持った?」


「持った!」


「運動靴と、あと先生に渡すプリントと……あと」


「大丈夫!昨日のうちに確認したよ」


「じゃあ、行こうか!」


「うん!」



そんな掛け合いをしていた二人は急いで玄関の扉を開け、駐車場に向かう。


車で学校まで20分弱。


焦っていたがそこまで危機とする時間でもない。


道路に出るとすぐさま速度は早くなり車の群れの一つになった。


心配事はやはりどうしたって拭えなくて、車中では昨日も一昨日も話したような話をしていると、すぐさま目のまえにグラドライン人生器学院の校門が見えてきた。


一時限目の授業を摂っている学生たちだろう。


少し速足で向かう背はフレッシュな若さがにじみ出ている。



「メメリィアなにかあったら……」


「先生とか周りの人に助けてって言うんでしょ。大丈夫だよ、メメリィアわかってるよ」


「うん、そうだよね。ごめんねアメリアお姉さん心配し過ぎだね」



車から降りたら後は一人。


ここからはメメリィアが一人で教室に行き、一人で決めていかないといけない。


既に心配するまでもないことはここ最近の目覚ましい成長で実感しているものの、いつまでたっても離れられないのは母性のせいなのだろう。


「じゃあ行ってくるね」



「……うん、もし何か困ったことがあったら……」


「大丈夫。メメリィアちゃんと頑張るから心配しないで」



くるりとメメリィアの背が少しずつ小さくなっていく。


これ以上声をかけるのは信頼していないことの現れだと思いアメリアは何も言わず、見えなくなるまで見送ることにした。


初めて会ったときはあんなにも小さく弱弱しかったのに、あっという間にあんなにも大きくなってしまったことにほんの少しだけ涙を零しながら。





先日受けた入学試験以来にくぐった学校にメメリィアはあまり緊張していなかった。


廊下を歩けば自分と同じ制服を着た学生たちが目に入る。


そんな中で学校というもの自体に恐怖感や心配、不安という感情はほとんどないものの別の不安に駆られていた。



「友達できるかな……」



指定された教室に向かう途中あたりをキョロキョロと見ては一人呟く背は先ほどと異なり、自信はなさそうに見える。



「先生もわかんないし……クラスの人は少ないってことはあんまり友達できないってことだよね……」



事前情報でクラスには自分を含めたったの七人しかいないことを知っていたので、どうしても友達作りは難航するものだと思っていた。


というのもテレビで動物の生態を見ていたときに、既にグループが作られている場所に関係のない個体が近づこうとすると、のけ者にするものだと観たことがあったから。


その上一緒に観ていたペペペモリアに人も同じなのかと聞くと、この世界で最もその特性が強いのが人間だと真顔で言われていたため余計に不安は大きい。



「アメリアお姉さんには大丈夫って言っちゃったけどやっぱり教室まで一緒に来てもらえば良かったかな……」



不安は時間と比例して大きくなり、気が付くと指定された教室についてしまった。


厳密には教室の扉から数歩分手前。


自動ドアであることを考慮して廊下の真ん中で立ち止まってしまったのだ。



「よし、あと三秒したら入ろう……」



と、三秒しても入るわけなく数分が経過する。


じりじりと額には数滴の雫が浮かび上がり、今にもこの場から逃げ出してしまいそうな背に聞き覚えのある声がかかってきたのはすぐのこと。



「お?んなとこに突っ立ってどうしたんだ?」


「……ニガおじさん」



白色の全身鎧、青く光り輝くライン、二メートルを越える大男。


顔もしっかり装甲しているので表情は読めないその声量は別に怒っているわけではない。



「おっと、メメリィア。もうニガおじさんってのはやめてくれよ」


「なんで?」


「なんでもなにも俺は先生であって、メメリィアは生徒だからだ。それに俺はお前さんのクラスの先生でもあるからな」



一瞬何を言われたのかよくわからなかったのはまさか、自分のクラス担任の教師が知人であったこと。


秘密と言われどんな恐ろしい人物が来るかと思っていたのに。



「ニガおじさん、メメリィアの先生なの?」


「ああ、そうだ。ってか事前資料に書かれてたはずだけどな」


「アメリアお姉さんが秘密って……」


「あいつマジでなんでもかんでも秘密にするな。大事なこと言わないことをカッコいいとでも思ってんのか?」



朝から重い溜息も吐きつつも気分を切り替えるかのように止めていた歩を進める。


ちょうど始業の鐘が鳴りメメリィアの静止の言葉を待たずして教室に入ろうとした。


もう間もなく一限目が始まるのに教師が遅刻しては恰好がつかない。



「ほら、とりあえず行くぞ」



開いた扉の先に駆け込むように入る背につられて続く。


ニガの背は大きく一緒に入ったものの、中はよく見えない。


なんとなく聞こえてきたのは男女それぞれの声。


大きな液晶を背後に入ってきた扉から視線を上げれば次第に中の様相、そこにいる六人のクラスメイトの顔が見えてきた。



「皆、席に着け。予鈴鳴っただろ」



教卓に視線が集まると、ニガの後ろに隠れる少女にも気付いたようだ。


不思議に思う声が聞こえてくる。



「今日は授業に入る前にこのクラスに入る新しい仲間を紹介する」



すっと大きな手がメメリィアの背に優しく当てられ、視線の中心、教卓の前に出る。



「自己紹介できるか?」


「う、うん……はい、ニガおじ……先生」



緊張の面持ちでさらに一歩前に出て前を向く。


この日のために何度も練習してきたのだ。


なめられないように、自己紹介でどれだけ自分がアピールできるかが勝負だと。



「はじめまして!メメリィアはメメリィアって言います!十才です!

 

人生器のお勉強をするのと、友達を作りに来ました!

 

 大好きなものは唐揚げとアメリアお姉さんとお兄さんです!

 

 友達になってくれると嬉しいです!よろしくお願いします!」



毎日練習した成果もあり噛まずに言い切った言葉は好印象だったようで、パラパラと拍手が聞こえてきた。


ニガも安堵のため息が出る。


変なことを吹き込まれてとんでもないことを言い出すんじゃないか危惧してのことだ。



「これからはメメリィアを含めた七人で授業を受けることになる。珍しい時期での入学だが皆仲良くしてやってくれ。ということで早速授業に入るんだが、席は……」



教室を見れば空席ばかりなので各々偏りがありつつも全体的に散らばって座っている。

やはり最初の授業でかってがわからないだろうと座席を指定しようか悩むも難しいところだ。



「ニガ先生、私の隣の席に座ってもらうのはどうでしょうか?」



パッと明るい声で手を挙げたのは黒髪の長髪、青色のメッシュの入った少女。彼女の性格や人柄がそれだけでわかるようだ。元気で快活な動作に教室全体が明るくなった気さえしてくる。



「そうだな。じゃあアオ、少し様子を見てやってくれ」


「は~い!」


「メメリィアも何かわかんないことがあったら俺やあそこのアオに遠慮なく聞いてくれ」


「わかりましたです」



アオと呼ばれた同級生の隣に腰を下ろすと、その隣にも彼女と瓜二つの生徒が座っていることに気付く。


ただどこかむっとした表情とメッシュの赤色だけは似ていない。



「久しぶりだね、メメリィアちゃん」



席に着いて早速始まった授業をよそに開幕一言目の挨拶に戸惑ってしまう。


既に他の生徒は自分の電子端末で教科書を開いているようだ。



「……えっと」


「こら、アオ。いきなり久しぶりから始まる挨拶がありますか。普通に考えれば一年前に立ち寄った店の店員の顔など忘れているに決まっているでしょう」


「うるさいな~。じゃあ、はじめましてって言えばいいの?会ったことあるのに?

そんな嘘つくことできないよ」



声小さく話す二人に取り残されてメメリィアはどういうことなのかわからないでいた。


自分はどうやら目の前の同級生に会ったことがあるようだけど、どうにも記憶の中に同一人物がいるようには思えない。


大きな瞳にストレートな黒髪は艶やかでメメリィアからしたら大人の女性のようにも見える少女は、実際にはそこまで年は離れてはいない。



「なにはともかく今は授業中なのですから、詳しい話は後でいいでしょう?」


「わかったよ~、は~あ。あっ、メメリィアちゃん、ごめんね」


「大丈夫……です」



やはり初対面な気がしつつも初めて受けた人制奇の授業はとても興味深く、メモの取り方や読み方のわからない部分を丁寧に教えてもらえた。



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