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ノア・リライツ 外伝 天才と少女の物語  作者: 少女計画
少女との生活
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第三節 九話 「探検の成果」




「アメリアお姉さーん!ただいまー!」


「あ、おかえりー、メメリィア」




学校探検隊がニガの部屋、現在はアメリアが鎧をメンテナンスしている部屋に帰ってきたのが、午後の四時。



昼食も学食に興味を持ったメメリィアと共に二人済ませ、メモ帳に乗っていたことに加え、学校をぐるっと一周し、さらにはあることをし終えた帰り。



満面の笑みで駆け寄る姿には何か得られたことがあったのだと、すぐにわかる。



手にも何枚か書類の入ったファイルを持っており、いったい何があったのか気になるところ。




「アメリアお姉さん!聞いて!聞いて!」


「んー、どうしたの?」




らんらんと輝く眼差しでアメリアの前にやってきたメメリィアは、朝出発してからあったことを楽しげに語り出した。




「メメリィアね、学校探検ですごいものたくさん見つけたんだよ!

 

 最初にね、おうちのテレビよりももっと大きいテレビを見つけたの!」




ワクワクと腕を広げ大きさを表現するが、そもそも教室にテレビがあるのかに疑問を持ってしまい、後方クマさんのニガに目配せで説明をこう。




「ん?ああ、講義室にある液晶のことだ」


「そう、エキショウ。それでね、学校にはメメリィアよりも大きい子たちがいっぱいいたんだけど、でもメメリィアと同じくらいの年の子もいっぱいいたの。


それで、メメリィア頑張って話しかけてみたら、その子はまだ9歳なのにもう学校に二年も通ってるんだって。


すごいねって言ったら、ありがとうって言ってくれて……あ、だから、ニガおじさんにも教えて貰ったんだけど、やり返す用の石使わなかったよ」


「ああ、そっか、アメリアお姉さん心配性だったなぁ」




じとっとクマの方から視線の圧が増したのは流石に気のせいではなかった。



先ほどから丸みを帯びた手に握られているビニル袋の中に石が入っていることは、説明不要。




「その後も学校の外に行ってサッカーとか、テニスとかテレビで観たことあるスポーツをやってる子たちがいてね、クラブ活動っていうんだって。


メメリィアもサッカーやってみてもいいですかって聞いたら、いいよって言ってくれた。


最初は全然ボール入んなかったけど、最後一回だけ入ったら褒められちゃった」




ボールを蹴るマネをして、その場で一回転する動きにまるで目に見えないボールがあるように楽しかった気持ちが伝わってくる。



褒められたと言ったときの眼の輝きだけで、今日来てよかったと思うほどに。




「サッカーしたらお腹が空いて、学食って言う学校のご飯食べるところでカレーライス食べてきたよ。


アメリアお姉さんが作るのよりもちょっと辛かったけど、すごい美味しかった


お腹がいっぱいになってから、まだ探検できてないところを見てたらね、なんか頭ツルツルの偉い人に会ってね」


「頭ツルツルの偉い人?」




ニガ!どういうこと!




「ん?ああ、えーと、校長だ」


「そう、コウチョーさんに会ってちょっとお話したの。


お名前はって聞かれて、ちゃんとメメリィア、メメリィアって言えたよ!


何歳ですかって聞かれたから、頑張って10歳ですってちゃんと言えたよ!


そしたら頭優しく撫でてくれたからメメリィアも、コウチョーさんの頭なでなでしてあげた」




ニガ!どういうこと!




「ん?……え?まあ、グラドラインの校長と偶然出くわしてな。


なんでも校内に不審者がいるって学生たちの声があったから見回りをしてたとかで。


そんで、ちょいと雑談とことの経緯をな。ていうか、喋れよ」


「でねでね、コウチョーさんがメメリィアさんは学校はどうですかって聞かれて、メメリィアそこで気付いたの。


学校はメメリィアが思っているような場所じゃなかったって。


知らない人でいっぱいだったけど、皆優しくしてくれたって。


誰もメメリィアのこと、ぶたないし、蹴らない。


痛いことしないし、メメリィアがうまくできなかったときに、怒鳴んなかった。


皆、メメリィアのことをちゃんと見てくれるんだって。


のけものにしないって。一人ぼっちにしないって。


だから、はい、学校は楽しいところだと思います、学校に通いたいですってちゃんと言えたよ。


偉い人の前だったから緊張したけど、ちゃんと言えてよかった~」




茫然とメメリィアの笑顔に言い得ぬ感動と驚きがあって、言葉を忘れてしまう。



とても不思議なことのように眺めているのは、こんなにも成長が肌で感じられるからだろうか。




「どうしたの?アメリアお姉さん?メメリィアなんかついてる?」


「……ううん。そっか、うん。そうだね、よかった。


ほんとうに、よかった」


「うんうん。コウチョーさんは眼鏡してるからすごい偉い人なんだよ、は~、緊張した~」


「メメリィア、それも大事だけどもう一個大事なことがあるだろ」




ほっと安堵の息を零したメメリィアは持っていたファイルのことを忘れていたように、似ガの言葉に続けてそうだとその後あった大事なことについて話始める。



それこそまさに、メメリィアが初めて自分で手に入れたものを。




「あ、そうだった。コウチョーさんと話しててね、学校に通うには入学試験っていうテストをしないといけないって教えてくれたの。


でも、メメリィアお勉強ならできますって言ったら、じゃあ、前のやつだけどやってみますかって、言われてメメリィアやってみたんだ」




話が思いもよらない方向に転じて行き、気になっていたクリアファイルから複数ある書類のうちの一枚がアメリアの手に渡る。




「これ見てみて」


「……え?」




紙面にグラドライン入学試験と書かれたそれは、ちょうど去年の年月日と国語、算数、理科、社会、それに加え人生器についての見解を論じる簡単な記述テストの結果が書かれていた。



グラドライン人生器学院は、幅広い年齢を受け入れているため入学試験についても自分のできる範囲までと、小学生レベルの問題から始まり、高等教育さらには専門的な知識を問う難題が順に出題される。



回答数正答率に応じて学生のレベルを判断し、それに見合ったクラスに入る形態をとっているのだが……。




「どう?メメリィア、すごい頑張ったんだけど……」




メメリィアの過去問の結果は簡潔に言ってしまえば、高得点をたたき出していた。



国語については年齢にあったレベルだったが、それ以外の社会、理科は中学生、算数に至っては既に高等教育以上。



最も驚くべきは……。




「これ、メメリィアが書いたの?」


「うん、そうだよ。アメリアお姉さん、どう、かな?メメリィア、すごい?」




人生器に関する見解の記述問題、おそらく問題の意図としては人生器の興味関心、現在の次点で知っていることなどを書かせるものだ。



もちろん、一定の知識を持ったものなどは理論や応用法の考察を書く場所に、メメリィアは人生器の基礎理論とその歴史ひいてはミルオルニスと生体の混合における現在の見識を正確に記述していた。




「いや……うん。まあ、すごいっていうか……びっくりした」




前々から人生器についてある程度興味があることは知っていたが、既にそういうレベルの話ではない。



勉強を見てはいたものの、渡していた教材はどれも小学生低学年からあっても高学年のものだったのに。




「えへへ、でもニガおじさんもコウチョーさんも凄い驚いてたよ。


変だよね、だってメメリィアおうちにあった本と、お兄さんから教えてもらったこと書いただけなのに」




呆れ半分ニガの嘆息とともに納得したのは、あいつ子供相手に何話してんだと若干の不満を抱きつつも、おそらく悪気があってのものではないから、何とも言えない。



理科、社会とかは渡していた教材の範囲でどうにかできるものもあったのだろうが、算数、いや数学とかは確実にペペペモリアが教えていたのだろう。



そうでないと、説明が付かないほどにメメリィアの数学についての知識、人生器の見解は突出しているのが結果から言えることだった。




「とりあえず、メメリィアがすごい頑張ったことはよくわかったよ。

 

 ん~、すごいすごい」


「えへへ、やったー!」



緑色の髪を撫でられ破顔するメメリィアは忘れないうちにと、ファイルに入っていた残りの紙をアメリアに渡した。



びっしりと細かい文字が上部から下部まで書かれたそれには、入学願書と書かれており、まさにこれこそメメリィアが自分の力だけで手に入れた初めてのモノだった。



「あの、アメリアお姉さん。


これコウチョーさんにもらった学校に入ってもいいよっていう紙なんだけど……」


「うん」


「メメリィア、この前学校行きたくないって言っちゃったけど。


でも、やっぱり学校行きたい。おうちから離れることもわかってる。


学校に行ったらアメリアお姉さんも、お兄さんもいないのもわかってる」


「うん」


「それでも、メメリィア学校に行きたい」



服の端をぎゅっと掴んで、必死に言いきったメメリィアに優しい抱擁が覆いかぶさる。



あまりにも自然に体が動いたのは、アメリア自身も驚いた。




「うん、わかった。

 

アメリアお姉さんもモリアお兄さんも、メメリィアのこと応援する。


学校、楽しみだね」


「それって、メメリィア学校行っていいってこと……?」


「そうだよ、行けるよ」




喜びの声が響くのは早く、抱き合った二人は何度も確認するように互いが感じた喜びをわかちあう。




始まるのはメメリィアの学校での日々。



本当の孤独にならないために、一人になって前に進む。



例え隣にいなくてもすぐそばで見守ってくれていると知っているから。




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