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ノア・リライツ 外伝 天才と少女の物語  作者: 少女計画
少女との生活
14/35

第二節 七話 「唐揚げ爆破実況中」




「うままままままままままままま、うまぁぁぁぁぁぁあい‼」







どうも皆さん。



こんにちは。



アメリア・アインスです。



本日私たちがやってきたのはオプライデント国第三都市ユルオクティカ。



またの名を「商売都市」ユルオクティカ。



どうしてこの名前が多くの者に知れ渡っているのかと言うと、この国が海の上を浮かぶ国であり、昔から交易の要所として盛んだったことが大きな理由です。



海を越えてやってきた行商人たちがこの地で商いを行い、周りの国の名産、恵、言語、文化、形あるものから形ないもの問わず、この場所に集まったことがその所以と言われています。



さて、そんな「商売都市」ユルオクティカですが、実はもう一つ別の名前でも有名です。



その名も「美食都市」ユルオクティカ。



多くの食事処が軒を連ね大地を照らす太陽に負けじと、店の者たちは鬼気迫る形相で今日も舌鼓を打ちまくること間違いなしの絶品グルメを作っています。



さあ、今回その中でご紹介するのはユルオクティカ繁華街にある唐揚げ専門店「唐揚爆破」。



うん。



すごい名前です。



唐揚げが爆破ですからね。



鶏肉に衣つけて油に入れたらドカンです。



明らかに危険物です。



うん。



既に心臓がドキドキしてきました。



楽しみです。







さあ、店前にやってきました。



まず目に飛び込んでくるのは店名を示す紺色の暖簾。



店先に吊るされたそれには布一枚一枚にそれぞれ「唐」「揚」「爆」「破」と白と赤で描かれています。



「唐」「揚」が白で、「爆」「破」が赤です。



紅白で縁起がいい感じです。




「……」




それ以上は特筆すべきところはありません。



早速、店内に入るとしましょう。



おお。



カウンター席にずらりと並ぶお客さん。



全員ガタイのいい20代、30代ほどのタンクトップの男性です。



後ろからでも上腕二頭筋がすごいのがわかります。



実を言うと、店に入るまで30分も待ちました。



私たちの前方、後方全員タンクトップの男性だったので、とても浮いていましたね。



そんなことを言っていると、ちょうど端のカウンター席が三つ空きました。



席に座ると早速注文を聞かれます。




「へい。


何にする?」




注文を取るのは店主でしょうか。



左目に立て筋の切り傷が額から頬にかけて走っていて、とても強面です。



昔はヤンチャをしていたのでしょうか。



頭はスキンヘッドで、目には漆黒のサングラス。



バンダナのように巻くタオルは既に吸水力絶無なことは気にしないでおきましょう。



ここでの注文はというとメニューがテーブルに用意されているわけではありません。



なんでもこの「唐揚爆破」と言う店は唐揚げ定食一本でやっているそうです。



それなのに、なぜわざわざ「へい。何にする?」なのかは皆目見当も理解もできませんが、郷に入っては郷に従え。



そう言いたいのでしょう。




「唐揚げ爆破定食一つ」




店主は注文を取るとすぐさま厨房で唐揚げを揚げに入ります。



聞いてはいませんがおそらくカメラNGだと思うので、カウンター席からこっそり中を覗いてみましょう。



まず店主がどこからともなく出したのは巨大なタッパー。



相当昔から使っているのか、透明だったであろうタッパーはかなり黄ばんでいます。



中にあったのは一口大に大きく切られた鶏肉。



おそらく鶏肉に下味をつけていたのでしょう。



調味液が秘伝であることは調べ済みです。



ただ、一つ気になったのは厨房の壁に大きな文字で書かれている、醤油、酒、にんにく、しょうが……、とそれぞれその横に記述された数値は……。



まあ、気にしないでおきましょう。



秘伝(?)の調味液に漬かった鶏肉は、醤油ベースのタレが肉にしっかり染み込んでいて、この時点でとても美味しそうに見えます。



次に用意したのは卵と白い粉。



あの強面で白い粉と言ったら間違いなく吸ったら気持ちがよくなる方だと勘違いしてしまいますね。



ですが、実際にはおそらく小麦粉か片栗粉でしょう。



ほら、店主が持ってきた白い粉の袋にもしっかり名前が……。



(×ハイニナルヤーツ 〇小麦粉片栗粉の混ぜモン)




「……」




んっ。



いや、見間違いでしょう。



続けてボウルを用意し、並行して油の入った鍋の温度を見ます。



おっと、用意していたボウルに卵を華麗に割入れ始めました。



ここまで来ると卵一つ割入れるだけでも、何かあると思いましたが杞憂でし……。




「ふんっ!


 ふんっ!


 ふんっ!」




卵を普通に割入れているだけなのに、掛け声が凄い。



正直申しますとなんか嫌です。



ふう。



さて、これで準備万端と言ったところで、店主は先ほどのタッパーから鶏肉を掴んでは卵液、白い粉へと付けていきます。



そして最後には全ての鶏肉が高温に加熱された油に投入されていきます。



昔はああいう風に有象無象をちぎっては投げ、ちぎっては投げていたのでしょうか。



油に入れた瞬間、破裂音や破砕音などの爆破音がすると思いましたが流石に心配のし過ぎでした。



聞こえてくるのはバチバチともジュワーともきこえる鶏肉が揚げられる音のみです。



うん。



なんとも心地の良い音でしょうか。



食欲を掻き立てられます。



待つこと数分。



油の中から戻ってきた鶏肉は元の調味液の色から、茶色……いや金色になって帰ってきました。



金色です。



ゴールデンです。



大事なことなので三回言いました。



一周回って美味しそうで涎が止まりません。



ここで突然ですが隣のカウンターで待つ少女にインタビューをしてみましょう。




「唐揚げ、待ち遠しい?」


「わあぁぁぁぁぁぁあ~」




どうやらあまりの美しさに見惚れてどこかに旅立ってしまったようです。



厨房に戻ります。



店主の男性は揚げた唐揚げをお皿に……と思いましたが、ここで揚がった鶏肉を今度は別の油に再び入れています。



まさかの二度揚げです。



低温からの高温です。



強面なのでガサツな印象を抱きましたが、ちゃんと二度揚げするなんてどうやら唐揚げに対する熱は本物のようです。



先ほどまでは怪しさしか感じませんでしたが、今はなんだか一流のシェフ顔負けの料理人に見えてきました。



二度揚げの終わった唐揚げは先ほどよりもより濃い金色になって帰ってきました。



もう目を開けているのも辛いほどです。



油の中に実は女神が住んでいると言われても、「ああ、なるほどね」と言ってしまうほどには金色です。



店主が正直者ということは間違いありませんね。



ふと気付いたのですが、店主の漆黒のサングラスは目を保護するためだったようです。



さあ、盛り付けです。



透明な糸のような千切りキャベツと鮮やかな真紅のミニトマト、その隣に眩い唐揚げがなんと五個。



そこに山盛りのご飯と味噌汁が一緒にテーブルに出されて。




「へい、お待ち。


唐揚げ爆破定食」




テーブルに出てきたのは眩い唐揚げ爆破定食。



眩しすぎてよく見えませんが、美味しい匂いが鼻腔をくすぐり過ぎて鼻血が出そうです。



この匂いだけで一緒に出てきた昔話でしか見たことのない白米は食べ終われそうですね。



では、早速。




「いただきます」




まずは唐揚げ。



キラキラというか、ピカー!と言う感じなので、箸で持つのに時間がかかりました。



持って気付いたのですがかなり重量があります。



大きさも加熱して小さくなっているはずなのに子供の拳くらいはあります。



では、一口。




「うっ」




……。




「……はっ!」




すみません。



一瞬意識が飛んでいました。



唐揚げは無事です。



私は無事ではないです。



率直に申しますと、あまりの美味しさで気絶できます。



気絶できる旨さです。



意識が覚醒する前に口の中の唐揚げは無意識で飲み込んでいたようなので、現在口の中にはないのですが、それでも口の中に残る唐揚げの残滓だけで米二合はいけます。



いきまくれます。



うん。



これはギルティですね。



人をダメにします。



ここで再び突然ですが隣の少女にインタビューしてみましょう。




「どう?


唐揚げ美味しい?」


「うままままままままままままま、うまぁぁぁぁぁぁあい‼」




若干、痙攣気味ですが顔はとても幸せそうなので良かったです。



天界に召されないようにしっかり意識だけは保っていてほしいですね。



それでは、さらにその隣のヒョロガリの男性にもインタビューしてみましょう。




「この唐揚げ、超うまくない?」



《考え中だお》《考え中だお》《考え中だお》《どやあぁ》

《考え中だお》《考え中だお》《考え中だお》《考え中だお》

《あー》《うん!》《うん!》《あー》《うん!》




うん。



あまりの美味しさに脳がイッちゃってますね。



これはもう二度と帰ってこないでしょう。



眼前の唐揚げ爆破定食に戻ります。



おっと?



こちら眼前の唐揚げ爆破定食ですが、事件発生です。



おさわにのおっていたかわあげが、もぐもぐ、すでぇに、ごくん。


(※ お皿に乗っていた唐揚げが、もぐもぐ、既に、ごくん)



残り一つになっています。


(※ 残り一つになっています)



いったああい、どおおこに、いっ。


(※ いったいどこに、いっ)



……たんでしょう。


(※ たんでしょう)



おや。



もうごはんもない。



不思議ですね。



気付いたらご飯も唐揚げもキャベツもミニトマトも味噌汁も全て空です。



本当に不思議ですね。



シーシー。


(※ お腹いっぱい満足)



隣の少女もその隣のヒョロガリもどうやら食べ終わったようです。



二人とも口から涎を垂らして、まあ、汚い。



ん?



よだれ?



ああ、これは口から出た水です。



気にしないでください。



それでは会計ですね。




「へい。


唐揚げ爆破定食三人で2400エンね」




おっと安すぎです。



正直0がもう1個ついていても常連になるつもりでしたが、なんとも素晴らしい。




「はい、ちょうど。


まいどー。


また、来てくれよなぁ」




会計を済ませるとアメを貰いました。



イチゴ味です。



かわいいですね。



店主の対応も素晴らしい。



星、何個でしょう?



そう問われれば、忖度感情なしで北斗七星でしょう。



後々、レビューもつけておきましょう。



味:満点、見た目:ゴールデン、店主の対応:かわいい。




こんな感じですかね。



さて、ちょっと早いですがそろそろお別れのお時間になってきました。



これにて本日の「美食都市」ユルオクティカ繁華街紹介を終わりにしたいと思います。



まだ一度も食べに行ったことのない方。



既に何度も足を運んでいる方。



是非一度、もう一度食べに行くことを強くお勧めします。



本日ご紹介したのは唐揚げ専門店「唐揚爆破」でした。




「「「ごちそうさまでした!」」」




*******





単位換算:1エン=1円

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