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ノア・リライツ 外伝 天才と少女の物語  作者: 少女計画
少女との生活
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第二節 六話 「小旅行の幕開け」




メメリィアがやってきてから二か月が過ぎた。



体は健康。



発育も問題ない。



身長はやや低く、体重も平均よりは軽いが、まだ成長期真っただ中であるため過度な心配は必要ないだろう。



骨密度も牛乳とか煮干しなどカルシウム豊富な食品を率先して食べさせていたら、だいぶミッチミチになってきた。



頭髪もやや伸びてきて今ではアメリアと同じセミロング。



もともと白髪だったこともあって頭頂部は若干グラデーション気味なのはオシャレとも言えよう。



現在、そんなメメリィア、ひいてはアメリア・アインスとペペペモリアはオプライデント国に向かうため車に乗っていた。



というのもアメリアの研究メンバーがいい加減帰ってきて欲しいと、電話越しに泣きついてきたからだ。



メメリィアの一件で結局、二カ月間ほとんど島暮らしをしていたアメリアは、自分がいなくてもなんとかなるとは思っていた。



だがなんとかならなかったから、こうしてつけが周ってきた。



溜まった書類、必要なデータ、人制奇研究の主任と言う立場である彼女にとって、なんとかなると思っていたのはあまりにも楽観視し過ぎていたところ。



研究メンバーにそれではウェスタリカに目を通すべき物を持ってきてくれるならと伝えると、どうやらそれでもいいほど切羽詰まっているそうで。



こうして三日の間、島を離れることになったのだ。




もちろん、話がこれだけで終わるわけがなかった。



念のため二人にそのことを伝えると、ペペペモリアはいつもどおり電子音声の《うん!》だけだったが、メメリィアは自分も一緒に行きたいと言いだした。



その瞬間、キラリンとアメリアの眼が輝いたのは言うまでもない。



そうなれば話は早かった。



連絡があったのが昨日のことで、準備を始め三人でどこを巡るかのプランまで考え始めて出発日の今日に至る。



やや目的を忘れがちな人物が一名いるが、そんなこんなで車の運転席にアメリア、助手席にペペペモリア、後部座席にメメリィアの三人は出発する。




「よし、みんな乗ったね?」


《うん!》


「はーい!」




目的地、オプライデント国第一都市ウェスタリカに向けて出発進行。







「うわー!


 すっ、ごーい!


 はやいはや~い!」




第一都市ウェスタリカへの行路は前回、人制奇定例会議に参加するために向かったときと同じ行路。



車で島の臨海部、船で臨海部から山の入り口、徒歩で山の入り口から裏道、車で裏道からウェスタリカの隣の町、隣町からウェスタリカ。



合計すると二時間ほどの行路。



もう何度目かのアメリアとモリアは、ぼけーとしていたが、ただ一人メメリィアは違った。



出発する前も車を見て大騒ぎ、レザーシートに大騒ぎ、エンジンかけて大騒ぎ、発進して大騒ぎ。



若いってすばらしいね。



そんなことを思いながら、徐々に目的地に近づいていく。



だから車中も船の中も大騒ぎだったメメリィアはウェスタリカに付くころには、はしゃぎ疲れてバテバテになっていた。



というわけでもなく、始めてみる都市に「ほえー」とか「おお~」とか、どこか貫禄のあるキラキラさせた眼差しで大騒ぎだ。




「あれはなあに?」


「あれは病院だね」


「あれはなあに?」


「あれはハンバーガー屋さんだね」


「あれはなあに?」




ウェスタリカに到着するとメメリィアは見るものすべてが新しいモノで、こうしてアメリアにあれはなに、これはなにと質問をしてきていた。



未知のものを知ろうとする気持ちはアメリアもとてもよくわかるので、こうして小一時間質問の一問一答をしているが、そろそろ中断させないと今日が終わってしまう。



切り札、昼食にしようと誘導するを選択。




「あれはブンデロガジョマンジの専門店だね。


それよりもメメリィア、そろそろお昼にしようか。


何食べたい?」




アメリアの言葉にはっと思い出したかのように、お腹をさするメメリィアはとても可愛らしい。



目をランランと輝かせ、待ってました!そんなことを言いそうなぐらいにはしゃぎだす。




「肉!


肉がいい!」


「わかったわかった。


肉ね。


お肉はどんな料理がいい?」


「えっ?


……肉は肉だよね?」


「……」


「……?」


「あ、なるほど。


メメリィア、最近食べたお肉で何が一番美味しかった?」




昼食何食べようかの話のはずだったが少しアブノーマルな感じになってきている。



おそらく、メメリィアの中で肉料理は全て肉なのかもしれない。



簡単に言うとこんな感じ。



(ステーキ、ハンバーグ、唐揚げ、肉野菜炒め……etc)=肉!



きっとここで鶏肉かとか豚肉かとか言っても一番意味がない。



それならば、メメリィアが美味しかったと思った肉料理から推察する。




「えーとね、なんか、カリカリしてて、丸い茶色い肉が一番美味しかったかな」


「茶色い肉?」


「噛むと熱くて、茶色い皮の下に白いお肉があるやつ」


「……唐揚げかな?」


「そう!


それ!


唐揚げ!」




案外早くわかった。



肉は肉でしょ?



と言う割には料理名の分別はできているのか。



おそらく、ステーキとか唐揚げとかは全部同じ肉を使っているという解釈なのだろうか。



にしても唐揚げのこと茶色い肉って。



そんなふうに思いながら食べてたんだ。



あんな美味しそうに食べてたのに。



まあ、何はともあれ一先ず食べる物は決まった。



唐揚げと言うとどこがいいだろうと現在いるのは高層ビルが乱立する第一都市なので、いい場所が思いつかない。



この前ペペペモリアと中華を食べに行った第三都市繁華街ならフラフラ歩いてればどこかいいところがあると思うのだけどと、どうしようか考えるアメリア。



ちなみにここまで無言を貫いて、改名金魚の糞になれそうなペペペモリアは、ぼけーとヌボーと一応ついては来ている。



だが何分自分からは話し出さない陰キャネクラ引きこもり不摂生不衛生不干渉マンなので、特に案を出すこともなかった。



しいて言えば先ほどからメメリィアが元気よくしているのを見ては優しい眼差しのようなものを向けていることぐらいか。




「唐揚げかー。


モリアー、なんかいいところ知ってるー……はずないよね。


調べるか」




悩んでどこかいいところないか聞こうとしたけど、引きこもりなので都市に詳しくないのを忘れていた。



別に知っているのなら、是非採用させてほしいが持ち合わせる答えをおそらく持っていないと思うので、端末で検索を掛けようと思ったそのとき。




「ユルオクティカの海鮮中華の隣から通りを挟んで三軒目。


そこに「唐揚爆破」っていう店がある。


そこは?」




ペペペモリアの口から唐揚げで美味しいと有名な店名が出てきたので唖然となる。




「ああ、名前聞いて思い出した。


あ~、あるある。


そっか。


あそこがあったか。


じゃあ、そこにしよっか」


「からあげ食べられる?」


「うん、これから食べに行こう」


「やったー!


からあっげ、からあっげ~♪」




唐揚げが食べれるとわかったメメリィアは大いに喜び、ホップステップジャンプでそのままバサッと羽が生えて飛べそうなほどだ。



場所が決まったので目的地に向けて脚をユルオクティカ方面に向ける。



途中横移動式の長距離エスカレーターがあるので徒歩で行ってもざっと20分程度だろう。



いい運動だ。




「それにしてもよく知ってたな」




情報源があのペペペモリアなことにアメリアは驚きを隠せないでいた。



こいつもしかして精巧に作られたモリア似のアンドロイドでは?



と本気で思うアメリアに対して、その答えは聞く人が聞けば異常な答えが返ってきた。




「この前来た時に見たから」




この前と言ってももう数か月前で、しかも人がごった返す程には通りは大渋滞だったがそれでもペペペモリアは覚えていたのだ。



一度見ただけの記憶から場所を。




「ふ~ん。


やるじゃん」


《どやあぁ》


「しんさくぅ~……」




そんな会話をしながら、アメリアとメメリィアとペペペモリアは横に並んでユルオクティカに向かった。



有名な人制奇開発者二人に子供ができたかと噂されるのはこの数日後のことである。




******





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