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パットミトラッシュ  作者: 青野ハマナツ
シュガーダディ
14/33

14th オショクジタイム

「お待たせ」


 オシャレな格好をしたギャルが小さく言葉を発した。


「待ってないよ」


 精一杯オシャレをした男子高校生がこう答える。ここまではテンプレートのような会話だが、この先に待つ食事は互いにとって重要な意味を持つのだ。


 相言にとってはパパ活の審議を確かめるため。銀河にとってはおじさんよりも彼氏と過ごす方が楽しいことを確かめるため。二人の確かめ合い(おしょくじかい)が幕を開ける。


◇ ◇ ◇


「二人です」


 店内に入ると同時に店員にそう伝えると、二人用の小さな席へと案内された。ソファ側に銀河、椅子側に相言がそれぞれ座る。


「ねぇ、ソーゴ〜。オススメ知らん?」


 銀河がニコニコしながら質問する。しかし、この質問はこの店への認知度の確認作業。小さい頃から親に何度も連れてきて貰っている銀河は、この店の定番から裏メニューまで知りに知り尽くしているのだ。


 では、逆に相言はどうなのか。端的に言って彼はにわかである。彼の知りうる情報は動画配信サービスで見た芸能人の批評だけ。それ以外の情報は全く知らない。しかし、知らないと答えるのはダサいので嫌だ。なら、通ぶった回答をしてみるのがベスト。彼は記憶を蘇らせ、「意外と人気」という評価の料理を提案する。


「えっと……この青豆のなんちゃらみたいなのがいいんじゃない?」


 銀河は少し驚く。「オススメなに?」と聞かれて青豆(グリンピース)の料理を選ぶとは。見損なったとか、失望したとかそういう訳では無い。むしろ逆。嬉しくなったのだ。人気かつヘルシーな野菜系の料理を勧めてくれる。太りたくない女子の気持ちを少しでも気遣おうとしてくれている。それが嬉しいのだ。


 しかし、そんなことまで相言が考えているはずがなかった。なによりこの一言は逃げの一手。「意外と人気」な料理をポンと出しただけ。それ以外に理由などどこにもない。


「えー?野菜系〜?なんかもうちょっとないの?肉とか」


「そうだな、肉ではないけど、このエビのやつとかどう?」


 相言が選んだのは小さなエビに衣をつけて揚げた料理。いわゆるポップコーンシュリンプというやつである。


 相言はこのチョイスに手応えがあった。なにより、相言がこの店に足を運んだ時に食べたこれがとてつもなく美味かった。彼の中にある唯一の来店経験の中で最大の思い出。これは好反応間違いなし!


 しかし、銀河にはあまり刺さらなかった!なにより、「肉とか」と誘導したのにエビを出してきた時点で期待外れだ。肉と言っているのだから肉を紹介しろよ!骨付きのチキンとか、プロシュートとか、なんならハンバーグとか色々選択肢があるだろ!それに、先程の「意外と人気」ではなく「定番商品」を事前の前置きも無く出してしまったのが低評価に繋がってしまった。


 これ以上深堀りしても仕方がないので、銀河は次の一手を出す。


「じゃあさ、主食(メイン)的なのはどれ〜?ウチめっちゃ腹減ってんのよ」


「そうだな……パスタなんてどう?大盛りにもできるらしいけど」


 相言はしまった、と思う。「大盛りにできる」――これはいらない発言だった。体重を気にしがちな女性に炭水化物の塊の大盛りを勧める――重罪すぎる。ミスもいい所だ。ちょっと嫌われてしまったかもしれない……


 と、相言は思っているが、実際は逆である。銀河はほんの少し喜んでいた。なぜなら「腹が減っている」という言葉を汲み取ってくれたと思ったからだ。「腹が減っている」、つまり「今日はあまり体重気にせず食べちゃいたい気分」ということが上手く伝わった。そう思ったのだ。


「じゃあ大盛り頼んじゃおっかなー」


「い、いいの?」


「いいのいいの。今日はガッツリ食べちゃうもんねー」


◇ ◇ ◇


 テーブルの上に、シュワシュワの炭酸ドリンクが二つ置かれた。一つは緑色、一つはオレンジ色だ。


「あざまるー」


 銀河は雑に感謝を伝える。相言は注いできたドリンクを一つゴクリと飲んだ。


「乾杯前に飲むなって!久しぶりにカレカノで夕飯食べんだし上げてこーぜ?」


 二人は互いのグラスをキーンと突き合わせた。冷えたドリンクが喉を通る。それがなんとも言えない爽快感を演出している。


◇ ◇ ◇


 しばらくすると、段々と美味しそうな料理たちが運ばれてくる。銀河のメインは大盛りのカルボナーラ。対して相言は普通サイズのドリアだ。


 このチョイスは銀河にとって好評価だった。なにより、この後のことをしっかりと考えている。匂いもそこまでキツくないし、色もつくわけじゃない。かなりいい選択なのである。ここでイカ墨パスタでも頼もうものなら許してはいなかっただろう。


「ドリア美味しそうだなぁ……ねね、ウチもちょっと分けるから食べさせてくんね?」


「ま、まあいいけど?」


「ほーん?じゃあ、アーン」


 銀河は差し出されたスプーンからドリアをぱくりと食べる。そして、今度はフォークでパスタを絡め、相言の目の前に差し出す。


「ほら、アーン」


 相言は正直恥ずかしかった。あまり人前でイチャイチャするのが得意では無いからだ。


「なに恥ずかしがってんだって。ほーら、アーン」


 相言は意を決してパクッと食べる。美味しい。でも、やっぱり恥ずかしい!


「美味いねぇ〜」


 銀河はもう一度不敵な笑みを浮かべるのだった。

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