その91・閣僚撮影
赤い絨毯が敷かれた階段。
そこに総理を真ん中に配置し、閣僚仲間と共に降り始める。
俺は総理の隣に立ち、記念撮影に挑む。
今回の新内閣では、俺は副総理兼財務大臣として入閣を果たした。
政治家人生、三十五年にてやっとの思いでこのポストにたどり着いた。
国の最高責任者でもある内閣総理大臣に就任したのは、俺と当選同期であり、尚且つ盟友同志だ。
前内閣では、彼が副総理兼財務大臣、俺が外務大臣と重要なポストを担当し、内閣に幅広く貢献した。
それもあってか、総理はすぐに俺をこのポストに配置をしてくれた。
俺もこの男の後を継いで、次期総理になるのだと早い段階から心がけていたが、今はこの内閣をナンバー2として支えなければならない。
今も若い男性カメラマンを前に、堂々とした恰好で撮影に挑んでいる。
すると、カメラマンが
「すいません。ちょっとフィルムが壊れたので、新しいのと交換します」
そう言ってその場を離れていった。
フィルムぐらいきちんとしておけよと、俺は呆れながらにため息をついてしまった。
すると、総理が小声で俺に話しかけて来た。
「今回の予算案、どう通すつもりだ」
「そうだな。一応防衛予算を倍増するつもりだ」
「説明は出来るのか?」
「誰にだよ」
「野党の連中だよ」
「大丈夫さ。説明なんて軽くで良いんだ。この国の安全保障を考えたら、これくらい当然だろと示せばいい」
「ならいいんだ」
「それよりさ」
「なんだ」
「さっき、控室で俺の金、抜いただろ」
「は?」
「財布にあった千円だよ。無くなってた」
確かに控室は総理と俺が共に談笑していたのは記憶しているが、金なんて盗んでいない。
そもそも犯罪だ。
折角の思いで副総理として入閣を果たしたのに、そんなリスクを冒してまで金に執着はない。
俺は少し怒りながらも
「俺を疑っているのか?」
「あぁ、疑っているさ」
「どういうつもりだ」
「は?」
俺は大声を出しながらも、総理の胸ぐらを掴んで
「俺に総理の席を座らせないつもりか」
「お前、もうそんなこと考えていたのか」
「うるせぇ、質問に答えろよ」
そこから乱闘が始まった。
他の閣僚たちも止めに入ったが、俺は一度ヒートアップしたら止まらない。
いくら盟友でも、今の言葉は聞き捨てならない。
俺は何度も総理に蹴りを入れた。
総理は俺の頬を殴った。
すると男性カメラマンが俺らにカメラを向けてから
「はいチーズ」
そう言ってシャッターを切られた。
「よし、これ新聞社に送っておきますね」
一瞬何のことか分からず、その後この写真が全世界を駆け巡るとは想像もしてなかったのだ。
~終~




