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その90・カウンセラー長官・出会い編~

東京という大都市にある一つのホテルにて、俺は一息つきながら自動ドアをくぐる。


俺は内閣官房長官をしている政治家の男だ。


いつもは閣議の調整や、まとめ役を担わなければならないどころか、その結果を午前と午後の定例会見で発表しなければならない。


俺には憧れがあった。


それは内閣官房長官になることだった。


内閣総理大臣までの近道としては、官房長官として内閣の全体を知らなければならない。


ほとんどの場合は官房長官に就任したい政治家は高確率と言ってもいいほど、総理に就任しているのだ。


俺も官房長官になり、いつかは総理の席に座る。


この野心のまま、政治家人生を送っていた。


だが、官房長官に就任した途端の忙しさ。


過去には財務大臣・外務大臣などを歴任してきたが、比べ物にならないほどの忙しさだ。


体も心も疲弊しながらも、フロントに近づき


「官房長官の田宮だ。いつもの部屋を頼む」


「分かりました」


女性のフロントマンが、笑みを浮かべながらもパソコンを叩いている。


その間にも、ホテルの内装を眺め始めた。


何度もこのホテルは利用しているのだが、内装は飽きないほどの造りをしている。


大きなシャンデリアが三個、クリスマスが近いのか、煌びやかなイルミネーションのライトが明るく光っている。


俺は笑みを浮かべながらも待っていると


「長官」


その声の方向を向くと、女性ホテルマンが笑顔で近づいてきた。


「お待ちしてましたよ」


「何か月ぶりだっけ」


「確か、二か月ぶりかと」


「そうか。随分ご無沙汰したね」


しかし、ホテルマンは時折、悲しげな表情を浮かべた。


いつもは笑みを絶やさずに、客を接していると聞いたため、心配な気持ちになりながらも


「どうした」


「はい?」


「いや、ちょっと悲し気な顔をしたからさ」


「あぁ、実は最近彼氏と別れまして」


「そうなのか?」


「はい。五年も付き合っていたので、ちょっと」


「そうか・・・仕方ない、話を聞くか」


「え?」


「いや。こう見えてもカウンセラーの資格を取っているからね」


「そうなんですか?」


「元々精神科の医師もしていたから、話は聞いて少しばかりアドバイス出来るぞ」


「お願いします」


「じゃあ、フロントの椅子で待っててくれ」


「分かりました」


このオプションのような仕事を始めて三年も経つ。


議員時代は毎週のように悩んだ人たちのために、仕事を行ってきた。


だが、官房長官になってから、あまり出来なかったが、今回はこの悩んだ女性のために一肌脱ぐか。


笑みを浮かべながらも、チェックインを済ませて、ホテルマンが座っている椅子に向かった。


俺のこの姿を見て、周りはこう言う。


「カウンセラー長官」と。


~終~

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