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85/91

その85・悲しみの雨

明日、俺たちは別れる。


その決意をした雨の夜だった。


自宅のリビングから、流れ落ちる雨の雫を眺めながら、俺はため息をした。


テーブル席に座っている彼女は、そっと俺の方を眺めていた。


これは仕方のない別れだ。


決して喧嘩別れではない。


五年前に交際を始めた俺は、目の前にいる女神と結婚すると意気込んでいた。


しかし、先月のことだった。


一番に応援してくれていた彼女側の父親が、急死してしまったのだ。


早く結婚しないかと笑って言っている顔が、今でも浮かんでくる。


しかし、一番に反対していた俺側の母親の策略により、俺たちは別れる羽目になっているのだ。


いつもは俺の母親の間を取り持ってくれたのが、彼女の父親であったため、もうその人がいないとなると、母親もやりたい放題だ。


それを思い出すだけでも腹が立つ。


何故、幸せの絶頂だった俺たちの邪魔をし、別れる羽目まで追い詰められなければならなかったのか。


俺は、悔しさのあまりのため息であった。


「私、幸せだったわ」


そう彼女は呟いた。


俺は振り向いて


「俺もだ。この形で別れるのは悔しいが、それも運命なのだろう」


「雨、強いわね」


「タクシーで帰るか?」


「ううん。傘、持ってきてるから」


「そうか」


「それじゃ、帰るわ」


そう言って、彼女は立ち上がった。


俺は内心、豆腐のようにぐちゃぐちゃな感情になりながらも見送ることにした。


「気を付けてな」


「ねぇ、一つだけ聞いていい?」


彼女が玄関で、俺に背を向けて言った。


「なんだ」


「もし、私が駆け落ちをしようって言ったら、してくれる?」


彼女の背中は震えている。


恐らく涙を堪えようとしているのだろう。


俺はすぐに口を開き


「もちろんだ。でも、それをして君のお父さんが許してくれるかな」


「・・・そうね。今の言葉は忘れて」


そう言って、彼女は部屋を出た。


しばらく無の時間が流れた。


このままで良いのだろうか。


逆に止めない俺を、彼女のお父さんは許さないのではないのか。


本当は彼女のことが好きだ。


仕方ないとはいえ、この結果で良いのだろうか。


俺はすぐに靴を履き、外に出た。


雨の中、道の真ん中で彼女はうずくまって泣いている。


俺はそっと近づいて


「帰ろう」


彼女が俺の方を見上げてから


「え?」


「母さんには、俺から話をしていく。もし、最悪の場合。親子の縁を切ってでも、君と一緒になる」


「いいの?」


「俺は、君のことが好きだ」


そう言ってしゃがみこんでいる彼女を起き上げ、そっと抱きしめた。


「もう離さない」


俺の一言に、彼女は何も言わず、ただ強く抱きしめてくれたのだった。


~終~

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