その80・花子さんと花男くん
私は花子。
トイレに住む幽霊だ。
周りからは化け物扱いされるが、それがとても侵害だ。
私はなりたくて、こんな姿になり、ここに居座っているわけではない。
正直、人間の頃は楽しかった。
しかし、前任の花子さんに無理やり連れていかれてからは、このようなテレビに出る花子さんのまんまの恰好でいることに、違和感がありまくりなのだ。
それに夜間、脅かす時間が無い。
昼間もさほど脅かす時間はないのだが、夜は更にないのだ。
こんな暇な仕事だったら、最初から連れてこないでよと前任の花子に不満感が増しながらも、トイレの中を歩き回っていた。
だが、こんな愚痴ばかりの私には唯一友達がいる。
今日も会いたいなと感じ、夜のトイレを抜け出して、男子トイレの前に立った。
「花男く~ん」
しばらく返事がない。
私も意外と短気であるため
「花男!!出てこい!!」
そう言って扉を力いっぱいにノックをすると、男子トイレの扉が開き、花男くんが出て来た。
「なんだよ・・・」
少し気まずそうな表情を浮かべながらも、私をじっと見ている。
確かに連続して会うのがこれで百日間は確実に経っている。
それは飽きるのは当然だ。
だが、私も暇なのだ。
暇が嫌いな私にとっては、遊び相手がいないとただの地獄なのだ。
私は笑顔で
「遊ぼうよ」
「え? 折角休んでいたのに」
「どうせ暇でしょ」
「そうだけど・・・」
「何、嫌なの?」
「嫌じゃないよ~」
急に花男くんが笑顔になった。
「よし決まり、何して遊ぶ?」
「え?決まってなかったの?」
「今日は花男くんの担当日よ」
「僕だっけ?」
「早くしてよ」
「じゃあ、かくれんぼ」
「二人だけだとつまらないし、なんか見つかるまでに朝日が昇ってそう」
「だったら、こっくりさん」
「同業者呼んでどうするのよ。面倒な幽霊連れてきたらマジで殴るからね」
「ごめん・・・」
そう言って花男くんは落ち込み始めた。
幽霊なくせになんでそんな気が弱いのか。
私はため息をしてから
「じゃあ、トランプする?」
「そうだね」
百日間、ずっとトランプだ。
私が連れていかれる前にたまたまトランプを持っていたから出来ることだが、もしこれがなかったら、本当にかくれんぼやこっくりさんをやる羽目になっていたかもしれない。
「じゃあ、ババ抜きする?」
「今日は神経衰弱しようよ」
「そうね。じゃあ、撒いて」
「分かった」
二人はトイレのドア前の廊下で座り、しばらく朝日が昇るまで、五時間ほど神経衰弱をやることになった。
まぁ、私は花男くんと一緒にいる時が、一番幸せなんだが・・・
~終~




