その79・怪我をしている新聞配達員
目の前には足から血を流している男の子が立っている。
時間は朝の四時半。
私は毎日、この時間にウォーキングするのが趣味である。
仕事のストレスや疲れをここで発散させており、誰もいないこの時間が一番心地が良いのだ。
だが、そこで初めて会った新聞配達員の男の子。
見た目ではまだ高校生と言っても良いほど、ルックスはよく顔もモデルで表紙を飾ってそうな顔たちだ。
あまり見ない顔だなと思ったが、その子の足からは出血をしている。
私は「大丈夫?」と声をかけたが、返事はない。
持っていたハンカチで足を巻こうとするが、それも断られた。
だが、男の子は元気がなさそうに私のことを見ている。
一体何があったのかと思い
「どうしたの? 私で良ければ話聞くけど」
「・・・」
何も言わない。
私は長年、人と対峙する仕事をしているため、男の子がどれだけの悩みを抱えているのかすぐにわかるのだ。
だが、このまま放っておくわけにはいかないため、考えていると近くの電信柱から誰かがこちらを見つめているのが分かった。
暗いためよく分からないが、シルエットとしては、小さな女の子であるのが確かだ。
こんな時間に女の子がうろつている時間帯ではない。
恐らく男の子の関係者であることは確かだ。
「向こうに女の子が立っているわよ」
すると男の子の表情が変わり、後ろを振り返ってから
「ナオミ、何やってるんだよ!!」
すると女の子が近づいて来て
「お兄ちゃん、一人にしないでよ」
「公園のベンチで待っていろと言っただろ」
「でも寂しい」
そう言って泣き始めた。
女の子は恐らく小学生だろう。
公園のベンチ・・・
少し気になった私は
「あなたたち家は?」
「ないの。お父さんとお母さん、事故で死んじゃった」
女の子が話し始めた。
「身寄りはないの?」
「いません。誰も」
男の子がそう言って涙を流している。
「もしかして、養護施設には?」
「お願いします。施設には言わないでください」
やはりなと確信は付いた。
恐らく、施設で何かがあったのだろう。
細かい事情までは分からないが、そこから抜け出して優しさを持つ新聞社配達所が受け入れてくれたのだろう。
だが、このままだと警察に保護されて、施設に逆戻りになってしまう。
それを考えてから
「あなたたち、施設に戻りたくないの?」
二人はゆっくりと頷く。
私も決心がつき
「分かったわ。施設に連絡をする」
「え? 売るんですか?」
「なわけないでしょ。あなたたちは私が育てるの。養子縁組になりましょう」
「え?」
そう言って二人の表情が豊かになった。
「こう見えても私、刑事だから」
人々を守る仕事だからこそ、この行動が出来るのだ。
そこから私は、彼らを守る日が長年続いたのだった。
~終~




