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その77・元恋人同士の大臣

俺は一人、議員会館の屋上でタバコを吸っている。


青空の下で一息吹かせるのが、四十代に突入した自分としては、この上ない幸せだ。


現在、俺は政権で外務大臣をしており、実質的ナンバー3の役目を果たしている。


外務大臣という仕事も、かなり荷が重たい職務であり、この国の外交トップに立つためには、たまにヒール役も買わなければいけないこともある。


だが、全てはこの国の平和と安全を護るため。


全てを犠牲にしてでも、職務を全うしなければならないのだ。


だが、俺にとってストレス発散はタバコだ。


これを手放してしまえば、俺に心の居場所はどこにもないのだ。


しばらくタバコをふかしながらも、精神安定のため景色を見ていると


「あら、直樹じゃない」


俺のことを名前で呼ぶ人間はただ一人だ。


振り向かずにタバコをふかしながらも


「何しに来た」


「どうせ、ここで吸ってるんだろうなと思って」


そう言って、隣に姿を現した。


名前は〈由紀〉。


女性としては、歴代三人目の防衛大臣を担っており、政権ではナンバー4の立場だ。


国防を担うトップとして、自衛隊などの訓練や日米合同の軍事練習などに毎回参加をしており、大臣として若き隊員たちを見守っている。


由紀は俺のほうを見ながらも


「タバコ。体に悪いわよ」


「良いだろ。もう俺たちはそんな関係じゃないんだから」


「まぁね」


そう言って由紀は景色を見始めた。


俺と由紀は一年前まで交際関係にあり、ほぼ結婚寸前までいくことが出来た。


だが、お互い多忙の日々を過ごしており、その影響ですれ違いが発生してしまい、結局は別れる羽目になった。


その後、お互い交際はせず、現在を有意義に過ごしている。


「それよりどうだ。彼氏とかできたのか?」


「さぁね」


「それくらい答えろよ」


「その答えに関しては、差し控えさせていただきます」


そう言って微笑んだ。


その微笑みを毎日見られていたときは、この上ない幸せだったのだが・・・


「俺は野党の議員でも、記者でもないんだぞ」


「分かってる。安心して、今は彼氏いないから」


「そうか」


「でも、議員でいる以上、あなたとよりを戻すつもりはない」


「そうか」


何気にショックだった。


本音を言うと、由紀と交際を再び始めようかと模索していたタイミングであった。


その矢先にそれを言われてしまえば、なんだか言葉がなかった。


「でも、議員をやってる以上はね」


「え?」


「私、来年議員辞めようかと思ってるの」


「え?どうして!?」


「辞めてから説明するわ。それまで彼女は作らないでね」


そう言ってその場を離れていった。


俺にはその言葉が理解できる。


なんだか勇気が込み上げながらも、タバコの箱を握りつぶしたのだった。




~終~

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