表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/91

その75・雨の中の犬

俺は、一人のサラリーマン。


今日もいつもの喫茶店で、コーヒーとシフォンケーキを頼んだ。


「はい。どうぞ」


喫茶店の若い女性マスターは、コーヒーを出して来た。


「シフォンケーキ、ちょっと待ってね。今焼くから」


「ゆっくりでいいよ。どうせ、外雨だし」


「急に降ってきたからねぇ」


そう言って、マスターはキッチンの方に戻っていった。


午後から急に大雨が降っており、傘を忘れた俺は帰りそびれていた。


天気予報では、午後は曇りだと言っていたため、完全に信じてしまった俺は心を曇らせていた。


しばらく外を見ていると、シフォンケーキを焼きながらマスターが


「犬の件、どうなったの?」


「奥さんがどうしてもトイプードルが良いって聞かないんだ。かなり値段が高いからね。中々飼えないんだけど」


「そうよね」


俺と奥さんの間には子供がいない。


だからこそ、犬を飼うことで二人の心がリラックスすればいいと思った俺は、妻に提案をしたのだ。


あまり犬のことで値段を気にしてはいけない。


そのことは知っているのだが、妻のリクエストがあるため、提案者の俺としては中々反論が出来ないのだ。


すると、マスターが


「あれ?」


「どうした」


「外見て。犬がいるわよ」


俺は外をよく見ると、雨の中にゴールデンレトリーバーの子犬がずぶ濡れになりながらも座ってこちらを見ている。


散歩中にはぐれたとは到底思えない。


これはまずいと思った俺は


「店の中に入れてもいいか?」


「え?・・・良いわよ」


「ありがとう」


そう言って外に出た俺は、ずぶ濡れ覚悟で犬の元に向かった。


よく見ると、近くには一匹分入れるような段ボールがあり、置手紙が残されている。


このようなことをする人が、この世の中まだいるのかと思い、許せない気持ちになりながらも、犬を抱き上げて、すぐに店に入れた。


犬の体は震えており、抱いただけでも分かる。


この子はかなり痩せている。


入ってすぐマスターに


「タオル持ってきてくれ」


「分かった」


犬を抱きながらも、俺はじっと自分を見つめる眼差しを受け止めていた。


マスターがタオルを持ってくると、俺は犬の体を拭き上げた。


「良かったわ。気づいて」


「体が震えていた。もう少し遅かったら、危なかったかもな」


「そうね・・・あっ、その子飼っちゃえば?」


「え?」


「だって犬探しているんでしょ? 良いじゃない」


俺はじっと犬を見つめた。


確かに犬種は違うが、この子を見ていると、なんだか「連れて行って」と言わんばかりに、とてもキラキラしている目をしている。


俺はすぐに妻に連絡をし、承諾を得た。


目を離していると、突然マスターが


「あっ、大変」


よく見ると、犬が俺のシフォンケーキを食べていた。


甘さ控えめなケーキであるため、食べても問題はないと思っている。


だが、俺は犬の頭を撫でてから、微笑みながらもこう言った。


「美味しかったか?」


~終~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ