その73・男女の喧嘩
私は一人、マンション十階のベランダから見下ろしている。
今日は妹が五年振りに私の家に訪れる大切な日。
妹と私は五歳離れているのだが、幼少期の頃から仲は良好であり、お互い仕事に就いてからも、日々家を行き来し合うほどの仲を保っている。
表ではかなり冷静で沈黙な女性なのだが、私にだけはかなり攻める性格を持っており、好きな食べ物は肉だけだ。
だからこそ、今日は肉料理を振舞うために支度をし、妹が来るまでテレビを見ようとリモコンを手に取ると、外から大きな叫び声が聞こえた。
それが今に繋がるのだが、これはどうやら男女が喧嘩をしてみるみたいだ。
それもかなり大声であり、十階にまで響くということはかなりの声量である。
「そっちがぶつかってきたんだろうが」
「何よ、私のせいだって言いたいの?」
「当たり前だろ」
よくあるパターンだ。
このパターンになると、大体収集がつかなくなり、警察が間に入り、やっとの状態だ。
だが、あまり騒ぎを広げないために、私は警察を呼ばなかった。
折角大事な妹が来るというのに、警察からの事情聴取やなんやで時間を取られたくない。
それにしても、あまり持ってはいけない感覚なのだが、喧嘩に興味が湧いてきたため、しばらく見ていると
「私忙しいの。さっさと行ってくれる」
「無理だ。そっちが謝るまでだ」
「ただぶつかっただけでしょ。そんなに怒らなくても良いじゃん」
それは同感だ。
仮に肩がぶつかったとして、骨折をしたのであれば、それは咎められても仕方のないことだ。
しかし、私の目線だけではその男性は普通に歩けている。
「私ね、これから姉の家に行くの」
「知らねぇよ、そんなこと」
今の言葉が引っかかった。
まさかだと思い、リビングにあるスマホを取り出してから、下に向けてカメラアプリのズーム機能を最大まで上げると、それは完全に妹であった。
これはまずいと思い、すぐに電話をかけた。
一切電話には応答せず、口論を続けている。
するとタイミング悪く、警察車両が二人に近づいてきたのだ。
完全にこれは通報されたのだ。
それはマンションの真下で喧嘩になれば、致し方のないことか。
だが、これは完全に私も巻き添えを食らう。
必死に何度も電話を掛けるが、既に時は遅し。
警察官が二人を仲裁しており、妹がつい警察官に手を上げてしまった。
そのまま妹は取り押さえられ、警察車両に連れていかれたのだ。
私はため息をしながらも、リビングに戻り、警察署に向かう支度を始めるのであった。
~終~




